8 / 47
《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》
第8話 本編:青 vs 黒 ― 初衝突
しおりを挟む
黒律の継承者が放つ黒い糸が、空間そのものを裂きながら迫ってくる。
その速度は、森喰いより遥かに速い。
音ではなく“存在の揺らぎ”で近づく。
俺は咄嗟に剣を横へ払い、青律を展開する。
「青律――展開(ディプロイ)!」
青い線が円陣となって広がり、黒い糸をひとまず押し返す。
だが――
ノアが叫んだ。
「レオン! 黒律の“糸”は切れない!
存在そのものを喰う性質だ! 直接触れるな!!」
影は微笑む。
「触れたものを“ゼロ”へ戻す――
黒律の初歩だよ」
影が指を鳴らすと、
空中から別の黒い糸が生まれ、
攻撃の方向を読ませないまま俺の背後へ回り込む。
(読めない……生命線が存在しない!?)
黒律は“命”ではなく“虚無”の線を持つ。
核視で見ても、ただの空洞だ。
リーテが叫ぶ。
「レオン! 後ろ!!」
影の糸が背中へ迫る――
ユリが光を放ち、俺の背後で結界を張った。
「翠律・護草(プロテクト)!!」
緑の壁が黒い糸を受け止め、火花のように霧散させる。
影はつまらなそうに呟く。
「翠律……面倒だな。
生命律は“黒”と相性が良くない」
ノアがユリの前に出るように身構える。
「当たり前だ。
黒律は世界核にとって“異物”なんだよ」
影は俺の方へ視線を固定したまま手をかざす。
「本番はここからだ。
青律を持つ君を“取り込む”」
黒い魔力が形を変え、
影の背後に巨大な腕の幻影が生まれる。
空間ごと握り潰すような圧。
俺は一歩前へ踏み込んだ。
「俺を取り込む? ……笑わせるな」
影が微笑む。
「なら、証明してみせて。
君が“青律の正統後継者”だということを」
黒い腕が振り下ろされる。
大地が抉れ、生命線が断ち切られていく。
俺は剣に青を宿す。
「青律――純度100%」
力が走る。
胸が焼けるほど熱く、視界が鮮明に広がる。
影が興味深そうに呟く。
「青律の増幅……?
まだその段階でそれができるのか。
やっぱり君は“特別”だ」
俺は叫ぶ。
「生命律・再調和――
青翠連環!!!」
青と緑の線を融合させ、
連鎖する光輪を作り出した。
光輪は黒い腕にぶつかり、
互いを摩擦しながら空間を震わせる。
影の目が細くなる。
「……消えない、か。
青律と翠律の合わせ技……興味深い」
影の身体がぶれるように揺れ、
次の瞬間には目の前に立っていた。
「だが、遅いよ」
影が手を伸ばす。
黒い指先が俺の胸に触れそうになる――
ユリが泣きそうな声を上げる。
「レオン!!!」
触れたら終わる。
生命線が全部断ち切られ、俺という存在は消える。
(……来る――!)
その瞬間、俺は本能で動いた。
剣を逆手に握り、胸元から斬り上げる。
青い弧が黒を裂く。
影は後退りし、初めて動揺の色を見せた。
「……君、
本当に人間……?」
青い線が残像となって漂う。
俺は息を吐く。
「俺はただ……
守るべきものを守るだけだ」
影は短く笑った。
「“守る”か……
青律の継承者らしい言葉だ」
影は森の奥へ目を向ける。
「今日はここまで。
黒律の核が“飢えてしまう”。
君を取り込むのは、もっと深い森の中でだ」
黒い靄が影を包み、少しずつ姿を薄れさせる。
「レオン・ハルト。
次に会うとき、
君の青律は“もっと深く”なる」
そう言い残し、影は完全に消えた。
森は静寂を取り戻す。
しかし、その静けさは安堵ではなく――凶兆だった。
ユリが震える声で言った。
「レオン……
影は“黒律の継承者”なんて優しい存在じゃないよ……」
ノアが続ける。
「黒律そのものが作った“器”だ。
青律を取り込むための存在……」
リーテが俺の腕を掴む。
「……レオン、まだ進むの?
あんなものがいるのに……!」
俺は剣を握り直す。
「進むさ。
翠律石を救わないと、森も王国も……
全部、黒に飲まれる」
森の奥から微かな脈動が響く。
次の目的地――
**翠律石の根核**。
すべての戦いの中心が、そこにある。
その速度は、森喰いより遥かに速い。
音ではなく“存在の揺らぎ”で近づく。
俺は咄嗟に剣を横へ払い、青律を展開する。
「青律――展開(ディプロイ)!」
青い線が円陣となって広がり、黒い糸をひとまず押し返す。
だが――
ノアが叫んだ。
「レオン! 黒律の“糸”は切れない!
存在そのものを喰う性質だ! 直接触れるな!!」
影は微笑む。
「触れたものを“ゼロ”へ戻す――
黒律の初歩だよ」
影が指を鳴らすと、
空中から別の黒い糸が生まれ、
攻撃の方向を読ませないまま俺の背後へ回り込む。
(読めない……生命線が存在しない!?)
黒律は“命”ではなく“虚無”の線を持つ。
核視で見ても、ただの空洞だ。
リーテが叫ぶ。
「レオン! 後ろ!!」
影の糸が背中へ迫る――
ユリが光を放ち、俺の背後で結界を張った。
「翠律・護草(プロテクト)!!」
緑の壁が黒い糸を受け止め、火花のように霧散させる。
影はつまらなそうに呟く。
「翠律……面倒だな。
生命律は“黒”と相性が良くない」
ノアがユリの前に出るように身構える。
「当たり前だ。
黒律は世界核にとって“異物”なんだよ」
影は俺の方へ視線を固定したまま手をかざす。
「本番はここからだ。
青律を持つ君を“取り込む”」
黒い魔力が形を変え、
影の背後に巨大な腕の幻影が生まれる。
空間ごと握り潰すような圧。
俺は一歩前へ踏み込んだ。
「俺を取り込む? ……笑わせるな」
影が微笑む。
「なら、証明してみせて。
君が“青律の正統後継者”だということを」
黒い腕が振り下ろされる。
大地が抉れ、生命線が断ち切られていく。
俺は剣に青を宿す。
「青律――純度100%」
力が走る。
胸が焼けるほど熱く、視界が鮮明に広がる。
影が興味深そうに呟く。
「青律の増幅……?
まだその段階でそれができるのか。
やっぱり君は“特別”だ」
俺は叫ぶ。
「生命律・再調和――
青翠連環!!!」
青と緑の線を融合させ、
連鎖する光輪を作り出した。
光輪は黒い腕にぶつかり、
互いを摩擦しながら空間を震わせる。
影の目が細くなる。
「……消えない、か。
青律と翠律の合わせ技……興味深い」
影の身体がぶれるように揺れ、
次の瞬間には目の前に立っていた。
「だが、遅いよ」
影が手を伸ばす。
黒い指先が俺の胸に触れそうになる――
ユリが泣きそうな声を上げる。
「レオン!!!」
触れたら終わる。
生命線が全部断ち切られ、俺という存在は消える。
(……来る――!)
その瞬間、俺は本能で動いた。
剣を逆手に握り、胸元から斬り上げる。
青い弧が黒を裂く。
影は後退りし、初めて動揺の色を見せた。
「……君、
本当に人間……?」
青い線が残像となって漂う。
俺は息を吐く。
「俺はただ……
守るべきものを守るだけだ」
影は短く笑った。
「“守る”か……
青律の継承者らしい言葉だ」
影は森の奥へ目を向ける。
「今日はここまで。
黒律の核が“飢えてしまう”。
君を取り込むのは、もっと深い森の中でだ」
黒い靄が影を包み、少しずつ姿を薄れさせる。
「レオン・ハルト。
次に会うとき、
君の青律は“もっと深く”なる」
そう言い残し、影は完全に消えた。
森は静寂を取り戻す。
しかし、その静けさは安堵ではなく――凶兆だった。
ユリが震える声で言った。
「レオン……
影は“黒律の継承者”なんて優しい存在じゃないよ……」
ノアが続ける。
「黒律そのものが作った“器”だ。
青律を取り込むための存在……」
リーテが俺の腕を掴む。
「……レオン、まだ進むの?
あんなものがいるのに……!」
俺は剣を握り直す。
「進むさ。
翠律石を救わないと、森も王国も……
全部、黒に飲まれる」
森の奥から微かな脈動が響く。
次の目的地――
**翠律石の根核**。
すべての戦いの中心が、そこにある。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い
☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。
「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」
そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。
スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。
これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる