追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第9話 本編:翠律石の根核 ― 生命の深層へ

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影が姿を消してからしばらく――  
森は沈黙を取り戻していた。

だが、ユリは震えていた。

「レオン……影はね、もう“黒律”そのものなんだよ……  
 あれと戦うのは……“世界核”と戦うのに近い……」

ノアも珍しく表情を曇らせる。

「黒律の核(コア)が動くと、  
 “森の深層”が完全に閉じてしまう。  
 レオン……今のうちに根核へ辿り着かなければ、  
 二度と入れなくなる」

リーテは俺の肩を掴んだ。

「……本当に行くのね……?  
 あれほどの化け物がいる場所に……」

俺は頷く。

「俺が行かなければ、  
 翠律石の暴走は止まらない。  
 そして王国も、森も、世界核も……  
 全部黒律に奪われる」

リーテは目を伏せ、そして微笑んだ。

「……あなたって、本当に……無茶よね」

だがその手は震えていなかった。



森の奥へ進むほど、世界は異常な気配を帯びていった。

空気は重く、  
草木の色は濃く、  
地面からは微かに鼓動が伝わってくる。

(ここが……生命律の深層……)

巨大な根が絡み合い、  
それぞれが蛍光色の脈動を放つ。

天井は枝葉で覆われ、  
そこから光が“滴るように”降り注ぐ。

まるで森の内臓に潜り込んだようだ。

ユリが指差す。

「あそこ……見える?  
 あれが“生命の大動脈(メインルート)”だよ」

巨大な一本の根が森の中央に走っている。

その根は、まるで山のような大きさで、  
青と緑の光がゆっくりと流れていた。

ノアが説明する。

「生命律は川のように森全域を巡り、  
 すべてここへ収束する。  
 そして“根核”へ流れ込み、世界核とつながる」

リーテが息を呑む。

「……まるで森そのものが“心臓”みたい……」

ユリは静かに頷く。

「そうだよ。  
 だからね……ここが壊れたら森は死ぬし、  
 世界核も深い傷を負う」

俺は青律を少しだけ開き、根の鼓動を見た。

(生命の線が……歪んでいる)

根の一部に、黒い“亀裂”が走っていた。

ユリがその亀裂を見て泣きそうな顔をする。

「黒律が……“侵食(イート)”してる……  
 このままだと根核まで到達しちゃう……!」

ノアが言葉を重くする。

「時間がない。  
 黒律の継承者が本格的に動く前に、  
 根核へ到達しなければ」

俺は剣を握り直した。

「案内してくれ。  
 根核まで、あとどれぐらいだ?」

ユリは深呼吸し──  
その奥を指さす。

「“生誕の祠(しょ)”を抜ければ、  
 もうすぐだよ」



祠へ向かう途中――  
地面の揺れが急激に強まった。

ドン……!  
ドドン……!!

生命の根が暴れ、枝が暴走し、  
あちこちで緑光の爆発が起きている。

リーテが叫ぶ。

「な、なにこれ!?  
 翠律石の暴走!?!」

ノアが歯を食いしばる。

「違う……黒律の衝撃だ。  
 “核の中心”で何かが起きている……!」

ユリが俺の手を掴む。

「急がなきゃ!!  
 根核が“泣いてる”!!」

森全体が震え、  
生命の声が悲鳴のように響いた。

俺は剣を握り、叫ぶ。

「走るぞ!!  
 根核へ!!」



祠の内部は、  
無数の光の花が咲き乱れる幻想的な空間だった。

しかし、その中央――

黒い穴が開いていた。

それはまるで、  
“存在が剥がれ落ちたような”真っ黒な空白。

ユリがその場で膝をつく。

「ここ……黒律に……喰われた……」

ノアが声を震わせる。

「根核は……すぐそこだ。  
 でも……この穴は“影の道”だ……  
 継承者は……もう根核に――!」

ズズ……ッ

黒い穴から、音が漏れた。

リーテが震え声で問う。

「なに……?  
 今の音……」

ノアが答えた。

「……“黒律の継承者”が、  
 根核と接触した音だ」

つまり、

青律の力を奪い、  
世界核の均衡を壊す直前だ。

ユリが涙を流しながら叫ぶ。

「レオン!!  
 急いで!!  
 根核が……“消えちゃう”!!」

俺は歯を食いしばる。

そして――  
黒い穴へ飛び込んだ。

翠律石の根核へ。  
黒律の継承者が待つ場所へ。

第二章の最深部へ突入した。
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