追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第10話 本編:根核の胎動 ― 世界核が泣く場所

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黒い穴へ飛び込んだ瞬間――  
視界が反転し、音が消えた。

まるで世界が“裏返った”ような感覚。

(ここが……根核の内部……)

着地した場所は、森とは完全に異なる空間だった。

天井も地面もなく、  
上下も左右も存在しない。

ただ、  
“生命の線”だけがこの空間を形づくっていた。

青、緑、黄――  
無数の光線が川のように流れ、  
その中心で巨大な球体が脈動している。

**翠律石――根核。**

生命そのものの心臓。

ユリが震える声で呟いた。

「……こんなに苦しんでるの、初めて見た……」

根核の周囲には、  
黒いヒビが無数に走っていた。

生命の線が“途切れ、欠けている”。

ノアが歯を食いしばる。

「黒律……ここまで侵食を……!」

リーテは呆然と立ち尽くした。

「こんな……こんな世界が、木の根の下に……?」

だが――  
そこに“誰か”がいた。

根核の真下に浮かぶ、黒い影。

**黒律の継承者。**

影はゆっくり振り返り、  
静かに微笑んだ。

「来たね、レオン・ハルト。  
 世界核の“青律”……ようやく会えた」

黒に侵食された根核の前で、  
まるで神殿の神官のように佇んでいた。

俺は剣を構える。

「根核から離れろ。  
 それ以上触れば――世界核が壊れる!」

影は首をかしげる。

「壊れないよ。  
 ただ“原初の形”に戻るだけ」

リーテが叫ぶ。

「それが壊れるって言ってるのよ!!」

影はリーテを見ず、ただ俺にだけ語り続ける。

「レオン。  
 青律は世界核を“繋ぐ力”を持つ。  
 だからこそ、君は危険なんだ」

俺は眉をひそめる。

「危険? 俺が?」

「そう。  
 君は“すべての律を統合できる”。  
 それは――世界核戦争(ワールドループ)を終わらせる唯一の鍵だ」

ユリが涙を浮かべる。

「そんなの嘘!!  
 あなたは世界を消したいだけ!!」

影は静かな声で言う。

「君たち精霊には理解できない。  
 世界は、一度“ゼロ”になれば楽になれるのに」

その瞬間、影の腕が動く。

黒い糸が、空間ごと切り裂いた。

「来い、レオン。  
 君の青律はここで“黒へ還る”。」



影が手を振ると、  
黒律の糸が三方向から一斉に襲いかかる。

(速い……!)

俺は青律を展開する。

「青律――観測!」

視界が青へ染まり、  
世界の線が網目状に広がる。

しかし――  
黒律だけが、何も映らない。

(見えない……!  
 影の攻撃“だけ”線が存在しない!?)

影が微笑む。

「黒律には“命の線”がないんだよ。  
 だから、青律では完全に捕捉できない」

黒い糸が俺の腕をかすめ、  
青い線が一瞬だけ断裂した。

激痛が走る。

リーテが悲鳴を上げる。

「レオン!!」

ユリが必死に魔力を送る。

「待って! 生命線を修復する!!」

俺は叫ぶ。

「来るな!!  
 黒律は触れたら線ごと消える!!」

影が一歩前へ出る。

「青律を持つ君なら分かるはずだ。  
 “存在を削る力”は“命を繋ぐ力”の上位互換。  
 黒は青を飲み込む」

黒い糸が再び迫る。

俺は剣を構え――  
青い閃光で弾く。

衝撃が走る。

影の瞳が細くなる。

「やはり……“反転”ができるのか。  
 青律と翠律の混合……危険な力だね」

俺は息を荒くしながら言う。

「危険ってのは……お前のことだろ……!」

影は緩く首を振る。

「違うよ。  
 危険なのは――“君”だ」

黒い空間が震えた。

影が両腕を広げると、  
根核の全方向から黒い渦が巻き起こった。

ノアが絶叫する。

「レオン!!  
 本気だ!!  
 これは“黒律の深層領域(ディープコード)”!!!」

逃げ場がない。

全方位を黒に包まれる。

(まずい……青律が追いつかない!!)

影が囁く。

「青律の存在線は、美しい。  
 だからこそ、僕が貰う」

黒い渦が俺を包み込む――

その瞬間。

ユリが叫んだ。

「レオン!!!  
 “青律を広げて”!!  
 黒を切らないで、“世界ごと書き換えて”!!」

ノアが続ける。

「黒律には線がない!  
 だから“存在の外側”へ干渉しろ!!  
 青律の本質は“修正”だ!!」

(……存在の外側……?  
 線がないなら……空白そのものを……)

目の前の黒い渦が迫る。

青律がかき消される。

息が止まる。

心臓が軋む。

(――見えた)

黒律の“外側”に、  
一瞬だけ薄いひび割れのような光が走った。

(あれが……黒の“歪み”……!?)

影が驚愕する。

「……見たのか……!?  
 黒律の外側を……!!」

俺は青い剣を握り、叫んだ。

「青律・調律モード――  
 “外縁修正(エッジ・リライト)”!!!」

青い閃光が黒の渦を外側から“上書き”し、  
空間が爆ぜた。

黒い渦が弾け飛ぶ。

影は初めて、後退した。

「……これは……危険だね。  
 本当に“統合者(ユナイター)”として覚醒するかもしれない……」

影の瞳が揺れた。

そして低く呟く。

「面倒になった。  
 仕方ない――“第二形態”を使う」

黒い影が揺らぎ、  
形が変わっていく。

黒律の深層が目を覚ます。

ユリの顔が青ざめる。

「レオン……逃げて……!!  
 次は、本当に……“存在ごと”消される!!」

俺は剣を構えた。

覚悟は決まっている。

ここからは――  
本当の戦いだ。
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