追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

文字の大きさ
36 / 57
《第三章:戦争編・世界核編》

第36話  (生命樹の根元へ──翠核守護者との接触)

しおりを挟む
生命樹へ続く道は、もはや“森”とは呼べなかった。

白い観測に未来を奪われた木々は、  
枝の一本一本がまるで石のように固まり、  
遺跡のように沈黙している。

影の身体はまだ半透明のまま。  
歩くたびに、足元が崩れそうに揺れる。

「……影、大丈夫か?」

レオンが息を切らしながら尋ねると、  
影はうっすら笑った。

「君の方が危ないんだよ……  
 生命線、もう……細い糸みたいだ。」

その声は震えていた。  
自分の存在が削られている恐怖を、必死に隠している。

ユリは泣きながら走っていた。

「お願い、お願い……  
 早く……生命樹のところへ……  
 あれだけの力を持ってるなら……  
 きっと未来を戻せる……!」

ノアも必死に後を追う。

「生命樹は“未来の芽吹き”そのもの……  
 白律の固定に唯一逆らえる存在……  
 間に合ってくれ、頼むから……!」

白い影の観測圏を逃れた森の奥は、  
わずかに“色”を取り戻していた。

その中央で――

ド……ッ……  
ドン……ッ……!

巨大な心臓のような鼓動が響いていた。

生命樹だ。

だがその形は、  
本来の“神木”とは異なっていた。

幹が膨れ、ひび割れ、  
その表面から翠色の液体がこぼれ落ちている。

ユリが息を呑む。

「……苦しんでる……  
 生命樹が……泣いてる……!」

ノアが頷く。

「翠核が、白律の未来固定と衝突してる……  
 本来、自然は未来のゆらぎで成長するのに……  
 “唯一の未来”に縛られたせいで……  
 生命力が暴走しているんだ……!」

そのとき――

木の根が突然、地面を裂いた。

「!!」

レオンが影を抱き寄せる。

大樹の根が、まるで意志を持つように持ち上がり、  
彼らを巻き込もうとする。

ノアが叫ぶ。

「生命樹が“未来の歪み”に耐えきれず……  
 動いてる!!」

影が蒼黒律で霧を散らすが、  
負傷した彼の力は弱い。

その瞬間、  
生命樹の中心部――裂けた幹の隙間から、  
柔らかな翠色の光が溢れ出し、  
耳の奥に響く声が届いた。

──青き律の使い手よ。  
──なぜ、ここへ来た。

言葉ではない。  
生命線に直接響く“声”。

レオンは前に進み、静かに言った。

「世界核が奪われかけている。  
 白律の観測で、この森の未来が……  
 死へ固定されている。」

翠の光は少し揺れ、  
呼吸するように脈動した。

──白き観測者……  
──未来を一本に縛る者。  
──自然を殺す異端。

ノアが息を呑んだ。

「本当に……  
 翠核守護者がまだ生きてる……!」

翠の光は続けた。

──青の律……  
──その身……ひどく削れている。

レオンは胸に手を当てる。

生命線は、今にも断ち切れそうだ。

「……それでも……止まれない。  
 未来を奪う奴らに……世界ごと押しつぶされるわけにはいかない。」

影がふらつきながら前に出た。

「レオンは……  
 僕の存在も繋いでくれた。  
 だから……彼の未来も……奪わせない。」

翠の光が影のほうへ伸びた。

──黒の律……  
──未だ不安定な“余白”。  
──しかし、消えるべきではない。

影の身体が少しだけ濃くなった。

ユリが目を丸くする。

「……影……!  
 戻ってる……!」

ノアが呟く。

「翠核の力が……  
 白律に削られた“存在”を少しだけ戻してる……!」

翠核守護者の声が再び響く。

──白核の影は、生命樹の“未来芽”を食らわんとしている。  
──このままでは……  
 森国は死の未来に落ちる。

レオンは迷いなく言った。

「俺たちに……生命樹を救わせてほしい。  
 未来を……取り戻す。」

翠の光は静かに揺れた。

──ならば……進め。  
──青き核の保持者よ。  
──そなたの“反転”ならば……  
 白の観測を裂くことも叶う。

レオンの胸が震えた。

(……反転で……白律を、裂く……?)

翠の光が彼らの前の地面を照らした。

生命樹の幹の奥へ続く“洞”が開く。

そこは生命樹の“核”へと続く道だ。

──白き未来を拒むため……  
──そなたに……翠の道を開こう。

影が微笑む。

「……行こう、レオン……  
 未来を……一本にされる前に。」

レオンは頷き、  
生命樹の洞窟へ足を踏み入れた。

こうして――  
青律・蒼黒律・翠核が初めて“共鳴”する瞬間が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...