5 / 45
序章 《始まった物語》
第五話 「レイの才能」
しおりを挟む
店に戻り、ショーケースに張り付いていたレイを引っ剥がし、フライドと名乗る男の後を追う。
中心街からどんどん離れ、古い建物が立ち並ぶ外れまで来ていた。どうやら鍛冶屋の多いエリアらしい。
火花があちこちから飛んでたり、金槌の音を聞けば、この大陸で鍛冶が盛んだと知らない人でも、そうだと気づくだろう。
「レイ、訳が分からないだろうけど着いてきてくれ。楽しく選んでる所悪かったな」
「ううん、アンナが来て欲しいって言うなら僕はついて行くよ」
「そうか」
「着いたぜ、嬢ちゃん達」
フライドさんが立ち止まる。そこは鍛冶屋街の大きな建物群の中でも一際大きな、大迫力の建物だった。鍛冶で汚れるのか、家は真っ黒で煤のようなものが付着している。
重い扉を開けて、私達は中へと入る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そろそろ説明してくださいフライドさん!」
3人の簡単な自己紹介も終わり、私達はフライドさんの工房の奥の客間で出されたお茶を飲んでいた。
しかしなかなか本題を始めず、世間話ばかりする彼に私は苛立ちを覚えてしまい、つい叫んでしまった。
「嬢ちゃんはせっかちだなぁ、そんなんじゃすぐに老けるぜぇ?ワハハハ」
ウザイ…
やっぱり苦手なタイプだ。
「武器を作りたいって、僕なんかにどうして?ただの新人冒険者ですよ?」
私の頼みでレイが異世界から来たということは内緒にして貰っている。
レイは軽く記憶を失っており、どうしてそしてどうやって転移してきたかは本人にも分からない。事故の可能性もあるが、もし何者かが彼を利用するために転移させたのだとしたら、彼の事はあまり知られない方が身のためだからだ。
なので、これから冒険者ギルドで冒険者登録をしに行く新人という設定を作り、他人にはそう説明するようにした。
「なぁに、隠すことはない。君が魔術において相当の腕前だということは一目見ただけで俺にはお見通しだぜ?ワハハハ」
術式習得でのあれのことか。いきなり上位術式を手に入れたレイが、魔力に長けているのは間違いがない。しかしそれを見抜くとは...このおっさんやっぱり只者じゃない。
…中身がコレじゃなかったら尊敬できるんだけどなぁ。
「えーと、僕は…」
「レイは本当に新人です。ただ、何故か学もないのに術式習得が使用でき、謎のスキル『ANALYSIS』っていうのを所有しているんです」
「『ANALYSIS』...やはりそれを持っていたか」
不真面目だった彼の顔が、初めて真剣なものになる。
「知ってるんですね」
「あぁ、俺が感じたレイジ君の才能の正体だろう。そのスキルをもつ者は魔術学校で学ぶようなマナの法則性や性質を全て熟知していて、本能的に術式を組み立てることができる。人に聞いた話で、俺も詳しくは知らないがな」
「僕にそんな力が…」
「それならなんでレイに武器を作りたいなんて言い出したんですか?魔法のちからを持つ者に剣や斧は必要ないはずでは?」
魔法を扱うものに、剣は必要ない。子供でも知っている常識だ。しかしフライドさんはクックックと含み笑いをうかべる。
「そこなんだよ!俺が惹かれた所は!」
「え?」
「レイジ君、君は魔術の才能がありながらも君の体…いや、君の魂は魔術師になる事を望んではいない。彼は産まれながらの剣士でもある」
この世界には「ちから」というものがある。才能とも言い換えられるそれは、本来1人1個の筈だ。
「……!!!!? つまり、フライドさん、貴方はレイが…」
ここに来てフライドさんが黙る。言うべきか悩んでいるようだ。しかし言おうと決めたのか、ゆっくりと口を開く。
「...そう、レイジ君は伝説の【おとぎ話の彼】と同じように、
魔法剣士の資格者というとても希少かつ、それでいて、
畏怖すべき才能をもっているのさ」
中心街からどんどん離れ、古い建物が立ち並ぶ外れまで来ていた。どうやら鍛冶屋の多いエリアらしい。
火花があちこちから飛んでたり、金槌の音を聞けば、この大陸で鍛冶が盛んだと知らない人でも、そうだと気づくだろう。
「レイ、訳が分からないだろうけど着いてきてくれ。楽しく選んでる所悪かったな」
「ううん、アンナが来て欲しいって言うなら僕はついて行くよ」
「そうか」
「着いたぜ、嬢ちゃん達」
フライドさんが立ち止まる。そこは鍛冶屋街の大きな建物群の中でも一際大きな、大迫力の建物だった。鍛冶で汚れるのか、家は真っ黒で煤のようなものが付着している。
重い扉を開けて、私達は中へと入る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そろそろ説明してくださいフライドさん!」
3人の簡単な自己紹介も終わり、私達はフライドさんの工房の奥の客間で出されたお茶を飲んでいた。
しかしなかなか本題を始めず、世間話ばかりする彼に私は苛立ちを覚えてしまい、つい叫んでしまった。
「嬢ちゃんはせっかちだなぁ、そんなんじゃすぐに老けるぜぇ?ワハハハ」
ウザイ…
やっぱり苦手なタイプだ。
「武器を作りたいって、僕なんかにどうして?ただの新人冒険者ですよ?」
私の頼みでレイが異世界から来たということは内緒にして貰っている。
レイは軽く記憶を失っており、どうしてそしてどうやって転移してきたかは本人にも分からない。事故の可能性もあるが、もし何者かが彼を利用するために転移させたのだとしたら、彼の事はあまり知られない方が身のためだからだ。
なので、これから冒険者ギルドで冒険者登録をしに行く新人という設定を作り、他人にはそう説明するようにした。
「なぁに、隠すことはない。君が魔術において相当の腕前だということは一目見ただけで俺にはお見通しだぜ?ワハハハ」
術式習得でのあれのことか。いきなり上位術式を手に入れたレイが、魔力に長けているのは間違いがない。しかしそれを見抜くとは...このおっさんやっぱり只者じゃない。
…中身がコレじゃなかったら尊敬できるんだけどなぁ。
「えーと、僕は…」
「レイは本当に新人です。ただ、何故か学もないのに術式習得が使用でき、謎のスキル『ANALYSIS』っていうのを所有しているんです」
「『ANALYSIS』...やはりそれを持っていたか」
不真面目だった彼の顔が、初めて真剣なものになる。
「知ってるんですね」
「あぁ、俺が感じたレイジ君の才能の正体だろう。そのスキルをもつ者は魔術学校で学ぶようなマナの法則性や性質を全て熟知していて、本能的に術式を組み立てることができる。人に聞いた話で、俺も詳しくは知らないがな」
「僕にそんな力が…」
「それならなんでレイに武器を作りたいなんて言い出したんですか?魔法のちからを持つ者に剣や斧は必要ないはずでは?」
魔法を扱うものに、剣は必要ない。子供でも知っている常識だ。しかしフライドさんはクックックと含み笑いをうかべる。
「そこなんだよ!俺が惹かれた所は!」
「え?」
「レイジ君、君は魔術の才能がありながらも君の体…いや、君の魂は魔術師になる事を望んではいない。彼は産まれながらの剣士でもある」
この世界には「ちから」というものがある。才能とも言い換えられるそれは、本来1人1個の筈だ。
「……!!!!? つまり、フライドさん、貴方はレイが…」
ここに来てフライドさんが黙る。言うべきか悩んでいるようだ。しかし言おうと決めたのか、ゆっくりと口を開く。
「...そう、レイジ君は伝説の【おとぎ話の彼】と同じように、
魔法剣士の資格者というとても希少かつ、それでいて、
畏怖すべき才能をもっているのさ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる