拾われた異世界転移者

デスVoice

文字の大きさ
15 / 45
第一章《ギルド》「闇の権力者編」

第二話 「待ち人」

しおりを挟む
門をくぐり、私達が街に着いた頃にはもう結構暗くなっていた。最近は暗くなるのが早いなぁ。

「帰る前に寄るとこがあるんだが、いいか?」

「いいよ!別に疲れてないし」

レイは、妙にうきうきしながら答えた。

「お前って意外と好戦的なんだな…」

「え!?いや、別に…そんなことは、ないと思うけど」

レイの戦いをちょくちょく覗き見してたけど、明らかにテンションがおかしかった。
まるで狂気とも表現出来るそれに、私は…ちょっと引いた。まぁ元の世界ではできなかったようなことだし、少年心をくすぐった...のか?

「それより何処に寄るの?」

「お前の稼いでくれた霊魂玉を売りに行くのさ」

「でもギルドの圧力で、ギルド以外の霊魂玉回収店はもう無いんじゃないの?」

私が今朝レイに説明した話のことだ。
今日、霊魂玉を売ることができるのは冒険者だけになってしまった。

かなりの権力を持つギルドは、法を自分たちの都合のいいように変えたのだ。

霊魂球売買は完全にギルドの独占市場となっているのだが、そもそも上位の魔物を倒せるような存在はギルド所属の冒険者ぐらいしかいない。

ギルドに所属するとパーティーも組みやすいし、何しろちょっとした人気職なので、少しでも腕に覚えのある者は大体冒険者になるからだ。

そんな訳で私達にとって霊魂玉はゴミ…のはずなんだが、そこはやっぱり私。流石私。

「霊魂玉を買ってくれる人物を知っている。しかも店を構えている訳ではないから違法にはならない」

「違法...」

「法を操るほどギルドが力を持っているということだ。その力を平和のために使ってくれればいいんだけどな」

レイは怪訝な顔をしたが、深くは語らなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「あと五分でこの店に着くようだ」

待ち人より先に私たちは待ち合わせ場所である、レストラン「命懸けフード」に着いた。なんて物騒な名前だよ。

待つのもあれなので、レイと先に席をとっておくことにした。

「この店の名前も気になるけど…どうしてその人があと五分で着くなんてわかるの?」

「そうか、後でレイにも買っておかないとな」

「?」

「このポケベルという名の魔道具を使うことで遠く離れた人とも文章のやり取りができるんだ」

レイに、私の可愛いポケベルを取り出して見せた。丸っこくてツヤツヤしたそのデザインは、いつ見ても素敵だ。

「メールみたいなものか…。そんな便利なものがこの世界にもあったんだな」

どうやら向こうにも似たようなのがあるらしい...恐るべし異世界!

「しかしこれには重大なデメリットがある…」

「一体、どんな重大なデメリットがあるって言うんだ…」

便利で可愛い最高のアイテム、ポケベル。それに伴うデメリット...。

私は生唾を飲み込み、ゆっくりと口を開く。

「ポケベルを使うには…

相手のポケベルNo.を事前に登録しないと使えないんだ」

「普通だよ!!」

えーー!?だって万が一聞きそびれたら、この広大な世界で二度とその人に会えないかもしれないんだぞ!?ポケベルが壊れたり、無くなったりしたらデータが消えるんだぞ!!?

レイは呆れている。なんか文明の遅れているこの世界をバカにされたようで、少し腹が立った私は無言で彼の頬っぺを引っ張る。

あ、フニフニだ。

カランコロン

ドアに付けられたベルが、誰かが入店したことを告げる。彼女こそが私たちの待ち人だった。

「おーい!こっちだ」

こっちに気づくと、彼女はにぱーと笑う。そして嬉しそうに、こちらへトコトコと小走りでやってきた。

「アンナァ、久しぶり♡」

彼女が抱きついてくる。少々気恥しいが、私も再会出来た喜びは大きい。

「久しぶり!元気そうでよかったよ」

視界の端で気まずそうに立っているレイに気づく。

「あ、紹介するよレイ。彼女は…」

「エイ・ティアと申します♡よろしくね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...