拾われた異世界転移者

デスVoice

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第一章《ギルド》「闇の権力者編」

第四話 「一人にはできない」

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なんとか宿に戻ってきた。ティアは私の部屋に連れていった。落ち着くまでここで一緒にいた方がいい。

彼女は酷く傷ついた様子だった。ガタガタ震えていて、その瞳は絶望に満ちていた。

「レイ、厨房に行ってホットミルクでも貰ってきてくれないか?」

「分かった」

レイは頷くと下へ降りていった。

「大丈夫か?
すまなかった…。
まさかここら辺まで噂が広まっているとは…」

「…アンナの、せいじゃない…よ」

ティアは震えながらも、なんとか声を絞り出しながらそう言った。

「…私も、知らなかった…から」

「テイマーへの差別…クソっギルドめ!」

ティアは黙っている。

「ホットミルク持ってきたよ」

レイは優しく笑うと、ティアにマグカップを手渡す。

「それと、アンナ。そこに座って」

「え?」

椅子に座らされる。
レイは治療道具セットを手に持っていた。借りてきてくれたのだろう。慣れない手つきで私の額の傷の手当をしてくれた。

「あ、キズ…ありがと」

レイの顔はとても悲しそうだった。私達の事を本気で心配しているのが伝わってきた。想ってくれていた。

その優しさが、本当に嬉しかった。

「アンナ...膝枕...」

ティアが膝枕をせがむ。普段なら恥ずかしくて絶対にしないが、まぁ...今日は特別だ。

小さい頭が太ももにちょんと乗っかる。サラサラした髪を優しく撫でてやる。

「ティアは...寝てしまったようだな」

「じゃあ僕は自分の部屋に戻るよ」
今日はもう遅かったし、ティアはこのまま私の部屋で寝かすことにした。それに今夜は誰かが傍に居てやらないと不安だろうしな…

「レイ、まって」

私は部屋を出ようとするレイを呼び止める。

「どうしたの?」

「ひとつ...聞きたい」

私には前から決めていたことがあった。だが今はレイもいる。彼にも聞いておかねばなるまい。とても過酷なことになるだろうから。

「お前は、ティアのことをどう思う?国民に差別され、侮辱される彼女が、私達と一緒にいたら迷惑か…?」

レイは一瞬キョトンとしたが、意味を理解したのかすぐに優しく微笑み、

「明日僕から頼もうと思ってた」

「ありがと」

おやすみと言って、レイは自分の部屋に戻っていった。


早朝。誰にも見つからないようにひっそりと、私達3人はこの街を出たのだった。
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