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おじさん♡守られてます
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「手の打ち様は、必ず有る」
…今の所は、思いも浮かばぬが。
だが絶対に、見つけ出してみせよう。
相棒が執念を燃やし、リリィを見つけたように!
今度は俺が心を燃やすのだ。
「しかし、いかに我々の能力をしても時間稼ぎが関の山だ」
険しい表情の相棒が暗い声音で答えた。
それから彼は、景気づけにと俺が手渡した蒸留酒をナイトテーブルに置いてしまう。
「悲観するな。縁起の悪い奴め」
俺は彼が捨て置いたグラスを引っ掴んで、一気に煽った。
強い酒が喉を焼き尽くして、腹に落ちて燃え広がる。
「君の事だ。どうせ正攻法ばかりを考えあぐねているのだろう」
それでは駄目だ。
「…卑怯な真似など、私は好かぬ」
「好き嫌い等、聞いてはおらんわ。全く、困った男だ」
「この私の性質が、君の軽薄さ程に厄介だとでも申すのか」
受け言葉に、買い言葉だ。
俺達はこの様にお互いの身分を弁えず、好き勝手に言い合う。
長きに渡る信頼関係が俺達を気安くさせるのだった。
しかし一見して険悪にしか見えぬらしい。
その為、周囲を狼狽させる事になる。
「お二人とも、止して下さい!」
この、可愛い弟のように。
「確かに。セバスティアンのお力は一過性なので、効果は知れたものですが!」
…知れたもの、とは言ったものだ。
弟は昔から言葉の扱いが粗雑な奴だった。
未だに変わっておらぬ。
全く、お前こそ相棒に喧嘩を売っている。
アレックスよ、見ろ、セスのあの眼を!
あと一句、言い間違えれば…お前は、飛ぶぞ。
「私とマクシミリアンの能力を掛け合わせれば、策略の阻止が出来るやもしれません!」
…ふん。
悪くない、いや、なかなかに良い提案だ。
相棒も険を納めて、鼻を鳴らす。
「はん。当然、その方向での作戦となるだろう」
総領息子は、彼らしく、堂々と嘯いた。
リリィの愛を得た事で、セバスティアンと俺は元来に持ち得ていた能力が増大された。
しかし、アレクサンドールは違う。
彼は新規の力を得たのだ。
それは『読心』、その様な能力と言えよう。
元々の彼の能力は、ただ今妻に発揮されているものだ。
弟が生来から持ち得るこの能力は『昏睡』といい、人の睡眠を司る。
時に厳しく意識を奪い昏倒させ、時に安らかな睡眠に導き憩わせるのだ。
医学の発達により需要は減ったが、かつては手術時や治癒の施せぬ病傷人には欠かせぬ能力者だった。
弟の力によって完全なる安眠を与えられた妻は、可愛い顔でもう三刻もの間、寝返る事すらなく深く眠ったままでいる。
それは我々の算段を聞かぬように、それから次の精食に備えて充分な休息を取る為に、必要な処置だっだ。
なにしろ、若き新夫が君を酷く疲れさせてしまっていた。
お陰で我々はお預けをくらっている。
妻の相手が味方だと分かり、俺達は安堵したと同時に酷い飢えを催した。
久しぶりの熱い逢瀬になるはずだった。
だが妻は弟に抱き潰され、気絶していたのだ。
その精も棍も尽き果てた様子を見るなり、相棒は怒髪天を突いた。
それを取りなす俺の情けなさと言ったら、無い。
…弟は血気盛んなのだ、仕方があるまい。
とはいえ、俺だとて君が欲しい。
君の愛が足りぬのだ。
これからは、更に輪をかけて忙しくなるだろう。
君も出産に向け心身を養わなければならない。
お互いにそれぞれの決戦に備える為にも、たっぷりと頂かなければならないのだよ。
…つい、そのコトを想い腰が熱を持つ。
するとすかさずして、弟が遮った。
「マクシミリアン!まだ、いけません。リリィはもう少しお休みにならなければ…」
全く!
油断のならない弟になったものだ。
「アレックス、お前は一体にどれ程を読心するのだ?」
俺は気味が悪かった。
まさか、胸の内を全て読み取る訳では有るまいな。
「兄上方の御心は…実は、殆ど読めません」
内心、ほぅと嘆息した。
筒抜けでは、堪らない。
「ほんのりと、雰囲気が感じられる程度の事です。…ただ、リリィの御心は…聞こえ過ぎて。耳鳴りがする程だった」
…あの、可愛い妻の事だ。
それは合点がいく。
「つまり、αの能力者には発揮し辛い力だという事か?」
相棒が気落ちしたふうで、弟に問うた。
「はい」
素直に肯定した弟の返事に、俺達は言葉を失う。
妻の安らぎに満ちた寝室に、重苦しい空気が満ちた。
「ですが!捨てたものではありませんよ」
相変わらず、弟の言葉使いには難がある。
しかし、彼が漏らした不敵な笑みは希望に満ちていた。
\\\٩(๑`^´๑)۶////
「手の打ち様は、必ず有る」
…今の所は、思いも浮かばぬが。
だが絶対に、見つけ出してみせよう。
相棒が執念を燃やし、リリィを見つけたように!
今度は俺が心を燃やすのだ。
「しかし、いかに我々の能力をしても時間稼ぎが関の山だ」
険しい表情の相棒が暗い声音で答えた。
それから彼は、景気づけにと俺が手渡した蒸留酒をナイトテーブルに置いてしまう。
「悲観するな。縁起の悪い奴め」
俺は彼が捨て置いたグラスを引っ掴んで、一気に煽った。
強い酒が喉を焼き尽くして、腹に落ちて燃え広がる。
「君の事だ。どうせ正攻法ばかりを考えあぐねているのだろう」
それでは駄目だ。
「…卑怯な真似など、私は好かぬ」
「好き嫌い等、聞いてはおらんわ。全く、困った男だ」
「この私の性質が、君の軽薄さ程に厄介だとでも申すのか」
受け言葉に、買い言葉だ。
俺達はこの様にお互いの身分を弁えず、好き勝手に言い合う。
長きに渡る信頼関係が俺達を気安くさせるのだった。
しかし一見して険悪にしか見えぬらしい。
その為、周囲を狼狽させる事になる。
「お二人とも、止して下さい!」
この、可愛い弟のように。
「確かに。セバスティアンのお力は一過性なので、効果は知れたものですが!」
…知れたもの、とは言ったものだ。
弟は昔から言葉の扱いが粗雑な奴だった。
未だに変わっておらぬ。
全く、お前こそ相棒に喧嘩を売っている。
アレックスよ、見ろ、セスのあの眼を!
あと一句、言い間違えれば…お前は、飛ぶぞ。
「私とマクシミリアンの能力を掛け合わせれば、策略の阻止が出来るやもしれません!」
…ふん。
悪くない、いや、なかなかに良い提案だ。
相棒も険を納めて、鼻を鳴らす。
「はん。当然、その方向での作戦となるだろう」
総領息子は、彼らしく、堂々と嘯いた。
リリィの愛を得た事で、セバスティアンと俺は元来に持ち得ていた能力が増大された。
しかし、アレクサンドールは違う。
彼は新規の力を得たのだ。
それは『読心』、その様な能力と言えよう。
元々の彼の能力は、ただ今妻に発揮されているものだ。
弟が生来から持ち得るこの能力は『昏睡』といい、人の睡眠を司る。
時に厳しく意識を奪い昏倒させ、時に安らかな睡眠に導き憩わせるのだ。
医学の発達により需要は減ったが、かつては手術時や治癒の施せぬ病傷人には欠かせぬ能力者だった。
弟の力によって完全なる安眠を与えられた妻は、可愛い顔でもう三刻もの間、寝返る事すらなく深く眠ったままでいる。
それは我々の算段を聞かぬように、それから次の精食に備えて充分な休息を取る為に、必要な処置だっだ。
なにしろ、若き新夫が君を酷く疲れさせてしまっていた。
お陰で我々はお預けをくらっている。
妻の相手が味方だと分かり、俺達は安堵したと同時に酷い飢えを催した。
久しぶりの熱い逢瀬になるはずだった。
だが妻は弟に抱き潰され、気絶していたのだ。
その精も棍も尽き果てた様子を見るなり、相棒は怒髪天を突いた。
それを取りなす俺の情けなさと言ったら、無い。
…弟は血気盛んなのだ、仕方があるまい。
とはいえ、俺だとて君が欲しい。
君の愛が足りぬのだ。
これからは、更に輪をかけて忙しくなるだろう。
君も出産に向け心身を養わなければならない。
お互いにそれぞれの決戦に備える為にも、たっぷりと頂かなければならないのだよ。
…つい、そのコトを想い腰が熱を持つ。
するとすかさずして、弟が遮った。
「マクシミリアン!まだ、いけません。リリィはもう少しお休みにならなければ…」
全く!
油断のならない弟になったものだ。
「アレックス、お前は一体にどれ程を読心するのだ?」
俺は気味が悪かった。
まさか、胸の内を全て読み取る訳では有るまいな。
「兄上方の御心は…実は、殆ど読めません」
内心、ほぅと嘆息した。
筒抜けでは、堪らない。
「ほんのりと、雰囲気が感じられる程度の事です。…ただ、リリィの御心は…聞こえ過ぎて。耳鳴りがする程だった」
…あの、可愛い妻の事だ。
それは合点がいく。
「つまり、αの能力者には発揮し辛い力だという事か?」
相棒が気落ちしたふうで、弟に問うた。
「はい」
素直に肯定した弟の返事に、俺達は言葉を失う。
妻の安らぎに満ちた寝室に、重苦しい空気が満ちた。
「ですが!捨てたものではありませんよ」
相変わらず、弟の言葉使いには難がある。
しかし、彼が漏らした不敵な笑みは希望に満ちていた。
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