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おじさん♡ジタバタします
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たぁ♡
俺は前科者のコソ泥だ。
生まれも育ちも卑しくて、運も無ければツキもない。
世間を恨んで、人を妬んで、何もかもを僻んで生きて来た。
そんなんだから当たり前に、ドン底の暮らしに追われるハメになった。
その挙句、うっかり悪事に片足を突っ込んで、そのままズブズブと沈んでいった。
それからはあれよあれよと言う間にも堕ちていき、罪に罪を重ねて気づけば救いようのないクズになった。
とはいえ、俺は頭の出来も悪くて身体も貧弱な上に臆病者だ。
大それた事など出来るはずもない。
万引きに置引き、食い逃げやらかっぱらいやらを繰り返して日々をやり過ごすくらいが関の山だった。
そんな小悪党に過ぎなかった俺が、思いがけずも大罪を犯した。
それを言い訳するなら、不運に不運が重なったせいなんだ。
あの日、夏祭りが済んだばかりの神社に俺は忍び込んだ。
寂れた神社の賽銭を頂戴するつもりだった。
参拝客はずいぶん浮かれていたらしい。
いつになく、賽銭箱は満載だった。
だから持ち込んだボロ袋はあっという間に一杯になった。
でも俺は卑しいから、つい欲を出した。
人気が無いのをいい事に、着物の懐にも小銭を詰めまくったんだ。
それが思い切り、仇となった。
俺は袋の鼠だったんだ。
この神社には前から世話になっていた。
要するに、ここで何度も賽銭ドロを繰り返していた。
最初のうちは食い詰めた乞食だからと、宮司も多目に見てくれた。
でも俺は救いようのないクズだから、人の情けなんか知ったことじゃない。
盗みは何度も繰り返したし、供物にも手をつけたし、御神酒を飲んだくれて暴れたりもした。
さすがに堪忍袋の緒を切った宮司は、氏子らと徒党を組んで俺の捕物にかかった。
だが俺は足だけは速くて、いつも逃げ切ってやった。
それでもって、ほとぼりが冷めると舞い戻っていた。
だから、今度こそはと念を入れて俺をハメることにしたのだろう。
「馬鹿者めが、観念しろ!」
気がつくと俺は囲まれていた。
万事休すで慌てる俺に、宮司が勢い勇んで怒鳴った。
俺はどうしても捕まりたく無かった。
以前、半年の懲役を喰らった時の辛く惨めな日々が頭によぎる。
二度とはごめんだった。
だから、逃げる事しか考えられない。
人壁を何とかかわして飛び出した。
でも懐が重くてうまく走れず、ふらつく。
そしてついによく肥えた鈍足の宮司に追いつかれ、肩を掴まれた。
俺は咄嗟に、なんとか振り切ろうと腕を振り上げた。
…決して、わざとじゃなかった。
宮司を殺そうなんて、思ってもみない事だったんだ!
ただ、懐がパンパンになるほど詰まった小銭は硬くて重い鉄の塊になっていた。
それが宮司の側頭を打ち付けてしまった。
…死ぬなんて、思って無かった。
死んだなんて知ってたら、腰を抜かしたさ。
ひっくり返った宮司はその時はまだ、もんどり打ってうめいていたんだ。
だから俺はひたすらおっかなくて、とにかくと逃げた。
蜂の巣をつついた様な大騒ぎになっていたから逃げられるって思ったんだ。
ただ、そんな時に提灯が目について。
ボヤでも起こせば、なお逃げやすいと思っちまった。
それで提灯を蹴り上げたら、思った以上に火の粉が飛び散って…
古く乾いた屋代は瞬く間に燃え上がり、辺り一面が大いに燃え盛った。
火の手は早く結局は九軒が焼け落ちて、沢山の人に火傷を負わせてしまった。
死んだのは宮司だけだったが、俺が殺した事には間違いない。
しかも火事場のゴタゴタで死体はすっかり焼けてしまい、墓に入れる骨もないと宮司の家族は嘆いていたそうだ。
殺人と放火で、死罪。
俺は死刑囚になった。
当然の報いだ。
仕方がないと納得は出来る。
でも死ぬのは怖い。
刑の執行は役人の意向次第だと聞かされた。
その日はずっと先かもしれないが、明日かもしれない。
そんな不安と焦燥に、俺の心は簡単に押しつぶされた。
怖くて、恐ろしくて。
牢屋の冷たい床板に這いつくばって、ベソをかいて震える日々を過ごしていた。
するとある日、当然に現れた役人がこんな話を持ちかけてきた。
「死刑を免れる方法がある。伸るか反るかは君次第です」
そんなの、乗るに決まってる。
俺は絞首刑になると決まっていた。
俺は、俺を憎む人の前で首を吊って詫びなくてはならなかった。
それでも、許してはもらえないだろう。
だけども、そうしないといけない。
俺は人を殺めた上に沢山の人を傷つけた極悪人なんだから。
分かっている。
…でも、嫌だ。
申し訳ないけど、そんな事したくない。
だって、怖い。
すごく痛くて、辛そうじゃないか。
そんなの絶対に無理だ!
だから、一も二もなく話に乗った。
どこまで行っても浅はかな俺は、いつだって酷く間違っちまう。
そしてとうとう、地獄に堕ちた。
。・゜・(ノД`)・゜・。
俺は前科者のコソ泥だ。
生まれも育ちも卑しくて、運も無ければツキもない。
世間を恨んで、人を妬んで、何もかもを僻んで生きて来た。
そんなんだから当たり前に、ドン底の暮らしに追われるハメになった。
その挙句、うっかり悪事に片足を突っ込んで、そのままズブズブと沈んでいった。
それからはあれよあれよと言う間にも堕ちていき、罪に罪を重ねて気づけば救いようのないクズになった。
とはいえ、俺は頭の出来も悪くて身体も貧弱な上に臆病者だ。
大それた事など出来るはずもない。
万引きに置引き、食い逃げやらかっぱらいやらを繰り返して日々をやり過ごすくらいが関の山だった。
そんな小悪党に過ぎなかった俺が、思いがけずも大罪を犯した。
それを言い訳するなら、不運に不運が重なったせいなんだ。
あの日、夏祭りが済んだばかりの神社に俺は忍び込んだ。
寂れた神社の賽銭を頂戴するつもりだった。
参拝客はずいぶん浮かれていたらしい。
いつになく、賽銭箱は満載だった。
だから持ち込んだボロ袋はあっという間に一杯になった。
でも俺は卑しいから、つい欲を出した。
人気が無いのをいい事に、着物の懐にも小銭を詰めまくったんだ。
それが思い切り、仇となった。
俺は袋の鼠だったんだ。
この神社には前から世話になっていた。
要するに、ここで何度も賽銭ドロを繰り返していた。
最初のうちは食い詰めた乞食だからと、宮司も多目に見てくれた。
でも俺は救いようのないクズだから、人の情けなんか知ったことじゃない。
盗みは何度も繰り返したし、供物にも手をつけたし、御神酒を飲んだくれて暴れたりもした。
さすがに堪忍袋の緒を切った宮司は、氏子らと徒党を組んで俺の捕物にかかった。
だが俺は足だけは速くて、いつも逃げ切ってやった。
それでもって、ほとぼりが冷めると舞い戻っていた。
だから、今度こそはと念を入れて俺をハメることにしたのだろう。
「馬鹿者めが、観念しろ!」
気がつくと俺は囲まれていた。
万事休すで慌てる俺に、宮司が勢い勇んで怒鳴った。
俺はどうしても捕まりたく無かった。
以前、半年の懲役を喰らった時の辛く惨めな日々が頭によぎる。
二度とはごめんだった。
だから、逃げる事しか考えられない。
人壁を何とかかわして飛び出した。
でも懐が重くてうまく走れず、ふらつく。
そしてついによく肥えた鈍足の宮司に追いつかれ、肩を掴まれた。
俺は咄嗟に、なんとか振り切ろうと腕を振り上げた。
…決して、わざとじゃなかった。
宮司を殺そうなんて、思ってもみない事だったんだ!
ただ、懐がパンパンになるほど詰まった小銭は硬くて重い鉄の塊になっていた。
それが宮司の側頭を打ち付けてしまった。
…死ぬなんて、思って無かった。
死んだなんて知ってたら、腰を抜かしたさ。
ひっくり返った宮司はその時はまだ、もんどり打ってうめいていたんだ。
だから俺はひたすらおっかなくて、とにかくと逃げた。
蜂の巣をつついた様な大騒ぎになっていたから逃げられるって思ったんだ。
ただ、そんな時に提灯が目について。
ボヤでも起こせば、なお逃げやすいと思っちまった。
それで提灯を蹴り上げたら、思った以上に火の粉が飛び散って…
古く乾いた屋代は瞬く間に燃え上がり、辺り一面が大いに燃え盛った。
火の手は早く結局は九軒が焼け落ちて、沢山の人に火傷を負わせてしまった。
死んだのは宮司だけだったが、俺が殺した事には間違いない。
しかも火事場のゴタゴタで死体はすっかり焼けてしまい、墓に入れる骨もないと宮司の家族は嘆いていたそうだ。
殺人と放火で、死罪。
俺は死刑囚になった。
当然の報いだ。
仕方がないと納得は出来る。
でも死ぬのは怖い。
刑の執行は役人の意向次第だと聞かされた。
その日はずっと先かもしれないが、明日かもしれない。
そんな不安と焦燥に、俺の心は簡単に押しつぶされた。
怖くて、恐ろしくて。
牢屋の冷たい床板に這いつくばって、ベソをかいて震える日々を過ごしていた。
するとある日、当然に現れた役人がこんな話を持ちかけてきた。
「死刑を免れる方法がある。伸るか反るかは君次第です」
そんなの、乗るに決まってる。
俺は絞首刑になると決まっていた。
俺は、俺を憎む人の前で首を吊って詫びなくてはならなかった。
それでも、許してはもらえないだろう。
だけども、そうしないといけない。
俺は人を殺めた上に沢山の人を傷つけた極悪人なんだから。
分かっている。
…でも、嫌だ。
申し訳ないけど、そんな事したくない。
だって、怖い。
すごく痛くて、辛そうじゃないか。
そんなの絶対に無理だ!
だから、一も二もなく話に乗った。
どこまで行っても浅はかな俺は、いつだって酷く間違っちまう。
そしてとうとう、地獄に堕ちた。
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