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リトルカブとズーマー
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香織はひとりで技をかけて、またその技を受ける練習もしていた。
傍から見てると見えない相手に引っ張られ畳に抑えられてる姿はさすがに沙織も笑いそうになるのをこらえた。
あれはなにやってんだろ?
ひととおり稽古を終えるとちょうど沙織も終わった感じだった。
「地井頭そっちは終わり?わたしのほうはもういいけど」
「わたしも」
「じゃ着替えて出よう。鍵閉めるから」
「了解了解」
香織は職員室に鍵を返し、駐輪場に向かうと沙織がバイクのシートに腰掛けてスマホをイジっていた。
バイクはズーマー。
この人もバイク?
香織は自分のリトルカブのリアボックスを開けてカバンを入れた。
道着と木刀、杖を入れた長い革ケースを背中に背負い愛車へ足をかけた。
その一連の慣れた動作に声をかけ忘れそうになった沙織が一声をあげた。
「愛洲もバイクなんだね」
「うん、新府だから」
「ほんと?わたし韮崎」
「あ。近いね」
「一緒に帰ろ」
「うん」
香織は一瞬考えた。
「韮崎まてどの道通ってく?」
「え?山の手通り果てまで行ってそのままラザ通って…」
「わたしはラザ通らない田舎道いつも通ってる」
「知らないそれ」
「じゃ、わたし先に行くからついてきて」
「了解」
二人は縦一列に並んで走った。
プコブルーのボディーに白い風よけ、香織のリトルカブはレトロで小さな昭和が走ってるようだった。
ときおり年配のおじさんがバイクのことを懐かしそうに聞いてくることがあった。
二人で街中を走り、沙織が「え?そこ?」というところで香織は右折した。
ちょっとした坂を登りきり今度は坂を降りるのかと思ったら大きな橋を渡ることになった。
高さといい景色といい爽快で圧巻だ。
そこから畑だの、葡萄畑だのが続き南仏の田舎道を走ってるような錯覚が意識的にできそうな道だった。
ツーリングにはもってこいだと沙織は思った。
今度は長い坂道にさしかかると香織は気合を入れるためか上半身をかがめハンドルに伏せた。
レーサーみたいに。
シフトを落としてパワーを出したがスピードが載らなくなる。
だからといってレーサー風の姿勢がどれほど役に立つか。
せいぜい風の抵抗を減らすくらいのものなのだが、じつは若干スピードが変わってくる。
そもそもカブは風の抵抗からラジエターを役割をさせるように設計されている。
カブの場合、左右の白い風よけが風自体を足元のエンジンに当て冷却するためのものだ。
自然の力を利用する設計になっている。
リトルカブにとって風の活用は重要な要素だということを香織はよく知っていた。
リトルカブは左折した。
またしても田舎道が続き今度は見晴らしの良い広大な土地に不釣り合いな企業の社屋が点々とあった。
なにもこんな田舎に建てなくても…
沙織は思った。
そしてくねったカーブを走り出るとそこは韮崎だった。
傍から見てると見えない相手に引っ張られ畳に抑えられてる姿はさすがに沙織も笑いそうになるのをこらえた。
あれはなにやってんだろ?
ひととおり稽古を終えるとちょうど沙織も終わった感じだった。
「地井頭そっちは終わり?わたしのほうはもういいけど」
「わたしも」
「じゃ着替えて出よう。鍵閉めるから」
「了解了解」
香織は職員室に鍵を返し、駐輪場に向かうと沙織がバイクのシートに腰掛けてスマホをイジっていた。
バイクはズーマー。
この人もバイク?
香織は自分のリトルカブのリアボックスを開けてカバンを入れた。
道着と木刀、杖を入れた長い革ケースを背中に背負い愛車へ足をかけた。
その一連の慣れた動作に声をかけ忘れそうになった沙織が一声をあげた。
「愛洲もバイクなんだね」
「うん、新府だから」
「ほんと?わたし韮崎」
「あ。近いね」
「一緒に帰ろ」
「うん」
香織は一瞬考えた。
「韮崎まてどの道通ってく?」
「え?山の手通り果てまで行ってそのままラザ通って…」
「わたしはラザ通らない田舎道いつも通ってる」
「知らないそれ」
「じゃ、わたし先に行くからついてきて」
「了解」
二人は縦一列に並んで走った。
プコブルーのボディーに白い風よけ、香織のリトルカブはレトロで小さな昭和が走ってるようだった。
ときおり年配のおじさんがバイクのことを懐かしそうに聞いてくることがあった。
二人で街中を走り、沙織が「え?そこ?」というところで香織は右折した。
ちょっとした坂を登りきり今度は坂を降りるのかと思ったら大きな橋を渡ることになった。
高さといい景色といい爽快で圧巻だ。
そこから畑だの、葡萄畑だのが続き南仏の田舎道を走ってるような錯覚が意識的にできそうな道だった。
ツーリングにはもってこいだと沙織は思った。
今度は長い坂道にさしかかると香織は気合を入れるためか上半身をかがめハンドルに伏せた。
レーサーみたいに。
シフトを落としてパワーを出したがスピードが載らなくなる。
だからといってレーサー風の姿勢がどれほど役に立つか。
せいぜい風の抵抗を減らすくらいのものなのだが、じつは若干スピードが変わってくる。
そもそもカブは風の抵抗からラジエターを役割をさせるように設計されている。
カブの場合、左右の白い風よけが風自体を足元のエンジンに当て冷却するためのものだ。
自然の力を利用する設計になっている。
リトルカブにとって風の活用は重要な要素だということを香織はよく知っていた。
リトルカブは左折した。
またしても田舎道が続き今度は見晴らしの良い広大な土地に不釣り合いな企業の社屋が点々とあった。
なにもこんな田舎に建てなくても…
沙織は思った。
そしてくねったカーブを走り出るとそこは韮崎だった。
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