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動かない型

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「漢字だと小さい念に頭で小念頭」

「しょうねんとう?」

「じゃちょっと見てて」

沙織はロックマーの立ち方になると両手を正面でクロスさせ、手の甲を正面に向けながら下へクロスを降ろし、今度は顔の前にもってきた。
そして両拳を脇に引くと左の縦拳を突き出した。
手首を回すとフクサオを作りすぐに正拳にして脇へ引いた。右も同じように繰り返すと、左からタンサオを伸ばしまた手首を回転させるとルーサオで拝むような手をゆっくりと溝落ちまで引き、そこからフクサオをまたゆっくりと突き出した。

「なにサオがけっこう出てくるね」

香織はひととおり沙織の行った小念頭を見て気づいたことがあった。

「一歩も動いてなくない?」

「そ。一歩も動かないから」

「手を動かしてるだけ?こうやったりパクチーとか…」

「パクチーはないけどね。まず立ち方を学んでるんだよ」

「立ち方?」

「体を沈める意識っていうか」

「へぇ」

「追々やってこ。じゃ、蹴り技いこう」

「蹴り技があるの?」

「フロントキック」

沙織はロックマーで両手刀を前後に構えるとつま先を立てたまま前に蹴り出した。
膝を曲げたまま足の裏全体を当てるような蹴りつまりは前蹴りだ。

香織も無心に動きを真似る。

「今度はサイドキック」

手刀を構えたまま横に蹴り出す。

香織はすぐに気づいた。
内股のロックマーから軸足の踵を返しつま先を外へ向けて蹴り出している。
香織もやってみた。
手刀を正面に構えたまま横を向いて蹴るのは難しかった。
合気道には基本蹴り技はない。
それだけに新鮮だった。

「じゃフロントからサイドキック」

沙織は前に蹴った足を降ろさずに横を蹴った。

サマになってるな…かっこいい。

香織もやってみてがバランスをとるのが難しい。
前を蹴った足を降ろさずに方向変える。
沙織がやると簡単に見えるが、やってみると軸足がふらついてそれどころではない。

「ムズッ!」

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