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武士の影
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稽古が終わると香織と沙織は舞鶴城にやってきた。
城と言っても天守があるわけではない。
城の天守の土台や石垣があるだけであとは坂や階段、そして端には警察の武道場がある。
「舞鶴公園にもでっかい武道場があるんだよ」
「ほんと?」
沙織が見たことないというので香織が連れてきた。
近づくと気合いの掛け声が聞こえる。
「なんかすごくない?」
「なんの稽古だろうね」
コンクリートの高床式で階段を香織と沙織は登って窓からそっと覗いた。
落ちかけようとする渋墨の模様が際立つ古い木造の武道場だ。
剣道や柔道で激しく踏みつけ、汗を飛ばした壁が呼吸しているように思える。
香織と沙織は窓から見ただけで、漂う空気に静かな迫力を感じた。
中では剣道の稽古をしていた。
三組ほどで打ち合いをしている。
竹刀で互いに隙を探り合い、ここだと踏み込んでは寄声を上げ竹刀の打撃音を響かせる。
打ち込めたのか、弾かれたのか速すぎてわからない。
その迫力に香織と沙織は見入ってしまった。
香織の耳にはなぜか竹刀の打撃音から金属のぶつかるキーンという音が聞こえだした。
目には見えないが武士の影のようなものがいくつも襲ってくるような感覚に包まれ、思わず身構えようとした。
武士の影が剣を振り上げた。
なにこれ…影?
実在しない実在しない実在しない!
香織はたまらず体を捌いて下から顎へ突きを入れた。
すると影は消えた。
いや、はじめからそんなものはなかったようだ。
香織の感覚の中の現象だ。
それが霊的なものなのか、己が作りあげた単なるイメージなのか。
沙織のほうを見た。
沙織は不安そうな顔で香織を見ている。
少し震え今にも泣き出しそうだ。
香織はとっさに沙織を抱き寄せた。
「大丈夫。大丈夫だから」
そのとき、香織はハッとした。
なにこれ…以前沙織にこうしたことある気がする…
沙織も己を取り戻したのか顔を起こした。
「ごめんね急に」
「どうしたの?」
「なんか…怖くなって…」
「自分が自分でなくなるような…」
そうだ。沙織を抱き寄せた感覚を知ってた…でもこんなことしたの初めてだし。
自分じゃない感覚…
その瞬間、泣きじゃくる沙織を確かに抱きしめた自分が見えた。
周囲のはっきりしないぼんやりとしたイメージだ。
ただ香織には二人の襟が着物でなんとなく袴を履いてる感じがした。
沙織は香織を見つめてから改めて香織をハグした。
「ねえ。もうちょっとこうしてようよ」
「え」
沙織の女の子らしい可愛らしさに少し香織は照れて赤くなった。
「そしたらへんな気分になるかもしれないから」
「やめろおおおぉ!」
「あははははは」
城と言っても天守があるわけではない。
城の天守の土台や石垣があるだけであとは坂や階段、そして端には警察の武道場がある。
「舞鶴公園にもでっかい武道場があるんだよ」
「ほんと?」
沙織が見たことないというので香織が連れてきた。
近づくと気合いの掛け声が聞こえる。
「なんかすごくない?」
「なんの稽古だろうね」
コンクリートの高床式で階段を香織と沙織は登って窓からそっと覗いた。
落ちかけようとする渋墨の模様が際立つ古い木造の武道場だ。
剣道や柔道で激しく踏みつけ、汗を飛ばした壁が呼吸しているように思える。
香織と沙織は窓から見ただけで、漂う空気に静かな迫力を感じた。
中では剣道の稽古をしていた。
三組ほどで打ち合いをしている。
竹刀で互いに隙を探り合い、ここだと踏み込んでは寄声を上げ竹刀の打撃音を響かせる。
打ち込めたのか、弾かれたのか速すぎてわからない。
その迫力に香織と沙織は見入ってしまった。
香織の耳にはなぜか竹刀の打撃音から金属のぶつかるキーンという音が聞こえだした。
目には見えないが武士の影のようなものがいくつも襲ってくるような感覚に包まれ、思わず身構えようとした。
武士の影が剣を振り上げた。
なにこれ…影?
実在しない実在しない実在しない!
香織はたまらず体を捌いて下から顎へ突きを入れた。
すると影は消えた。
いや、はじめからそんなものはなかったようだ。
香織の感覚の中の現象だ。
それが霊的なものなのか、己が作りあげた単なるイメージなのか。
沙織のほうを見た。
沙織は不安そうな顔で香織を見ている。
少し震え今にも泣き出しそうだ。
香織はとっさに沙織を抱き寄せた。
「大丈夫。大丈夫だから」
そのとき、香織はハッとした。
なにこれ…以前沙織にこうしたことある気がする…
沙織も己を取り戻したのか顔を起こした。
「ごめんね急に」
「どうしたの?」
「なんか…怖くなって…」
「自分が自分でなくなるような…」
そうだ。沙織を抱き寄せた感覚を知ってた…でもこんなことしたの初めてだし。
自分じゃない感覚…
その瞬間、泣きじゃくる沙織を確かに抱きしめた自分が見えた。
周囲のはっきりしないぼんやりとしたイメージだ。
ただ香織には二人の襟が着物でなんとなく袴を履いてる感じがした。
沙織は香織を見つめてから改めて香織をハグした。
「ねえ。もうちょっとこうしてようよ」
「え」
沙織の女の子らしい可愛らしさに少し香織は照れて赤くなった。
「そしたらへんな気分になるかもしれないから」
「やめろおおおぉ!」
「あははははは」
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