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三角関係

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その夜、愛洲家の台盤所では夜這いに来た真吉が香織と沙織、そしてなぜか亜香里も一緒に真吉が撃退した浪人達の話を肴に菓子と酒を楽しんでいた。

「で、おとといきやがれ!って誰かが言ったらみんなどっと笑いが起こってさ」

「それは愉快な話だな」

沙織はあぐらで酒を煽った。

「そうか。いつぞやの道場破り達が…」

香織は責任を感じていた。

「気にすることはないぜ香織、オイラが追っ払ったからよ」

香織はわざとらしく咳をし「想い人が危険な目にあっては困る。世間体ではそうなっておる」

「世間体で言ったらオレは男だぜ。負けてられねえよ」

真紀理はごきげんだ。

「ま、世間体はともかくだな。今日はオレの部屋で寝ていけ」

「え…」

沙織の言葉ついおなごの声を出してしまう真紀理。
自信に満ちた男のような笑みを浮かべた沙織が続ける。

「おぬし。オレの前では女でいろ。無理しなくていい」

そうなると真紀理の顔はただの無垢な女の子になっている。

「な?」

と、真紀理の肩に腕を回し口づけをしようとする沙織、そして目をトロンとさせ受け入れようとしている真紀理。
それを正面で見てわなわなと震えているのが香織だ。

「やめろ!」

二人の間に割って入った。

「そなたはわたしの男であろう。今宵は、いやこれからずっとわたしと臥所ふしどを共にするのだ」

香織は真紀理の腕を引っ張り立ち上がらせた。

「終わったらオレのとこに来てもいいぞ」

「終わらぬ。ずっと朝まで真吉はわたしと一緒にいるのだ」
 
香織は強引に真吉、いや真紀理を部屋に連れていった。

「ちっ…」

沙織はやけ酒気味に酒を煽った。
気づくと亜香里がニヤニヤしながら沙織を見ていた。

「なんだ?」

「いや面白い三角関係だと思ってな。愉快愉快」
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