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おなご同士

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香織と真紀理が部屋に来ると香織は「では寝るとしよう」と、言葉少なくふとんに潜った。
その隣に真紀理も入った。
顔赤くして真紀理と逆の方を向いて寝ようとする香織だがどうしても寝付けない。

おなご同士でドキマギしてもはじまらん…

そう。おなご同士なのだから…

と思ったら真紀理が腰に腕を回してきた。
香織の背中にピッタリとついて抱きついてきた。
香織は思わず真紀理の方へ顔を向けた。
真紀理は香織に唇を近づけた。
互いの吐息を感じたそのとき、障子の外からなにやら声がした。

「よう見えんぞ」

「バカ、声をだすな」

「おなご同士でふふふふふ…」

するりと香織の腕を抜け風のような動きで障子を開けた香織。

「ぬしら!なにをしとる!」

沙織の肩に手を載せた亜香里が障子の隙間に合わせて顔が縦に並んでいた。

「いや…あはははは。そのあれだ。おなご同士でちゃんとまぐわってるか心配でな」

「まぐわったりせんわ。あくまでふりだからな!それにコソコソ覗き込むとは武士のすることか!」

「覗き込むだなんて…そのあれだ。亜香里が可愛くてな。今宵は亜香里と寝ようと思ってな」

「え…そうなのか?」

亜香里が赤面した。
沙織はその場しのぎのでまかせを言った。

「なんだ。亜香里を抱くのか?」

「抱くなんておなご同士で、あははははは」

「そうだ。おなご同士だ。だからおかしなことがあるわけなかろう!」

「そ、そうだな。ではゆっくり休め」

そそくさと沙織は立ち去ろうとしたが、その場を離れようとしない亜香里を引っ張っていった。

「まったく…」

香織は真吉の方を見ると両腕を頭の後ろで組んで仰向けになっていた。

「今宵はただ添い寝するだけにしようよ」

「そ、そうだな。あくまで想い人のふりをするだけなのだから」

香織と真吉は並んで眠った。
沙織達が再び訪れることもなく静まり返った夜となった。
そして夜が明けようとする頃、真吉は香織の唇に己の唇を重ねた。
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