アイスとチーズ

迷熊井 泥(Make my day)

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香織の喧嘩剣法

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「どちらが多く斬れるか勝負しようぜ」

数十人のやくざ者達と斬り合う。
そんな不安など沙織の不敵な笑みは微塵も感じさせない。
香織も笑みを浮かべた。

「望むところだ」

香織が道場の方へ行こうとすると沙織は阿吽の呼吸で反対庭の方へ足を向けた。
そして互いに立ち止まって見つめた。
沙織は最後の言葉を送った。

「死ぬな。友よ」

香織が笑顔になった。

「そっちこそ。友よ」

「来世でもまた友になろうぞ」

「なる!夢で見たからな」

「南蛮の着物か。どんな世界なのか楽しみだな」

「来世で」

「来世で」

香織と沙織は侍の顔になりそれぞれの敵へと向かった。
道場に入ると二、三十人のやくざ者が大男と共に物色するように入ってきた。 
庭に出た沙織も同じように二、三十人のやくざ者と大男を捉えた。

「先手必勝!」

二人は別々の場所で同時に同じことを言って男達に斬りかかった。
香織の連続技は二人、三人斬ったと思ったらあれよあれよといううちに七人斬った。

「気をつけろ!」

「速いぞ!」

誰かが警戒を呼びかけた。
大男、龍蔵は香織を見て満足気な顔をした。

おなごのくせによう動く…

やはり斬り合いをよう知っとるな。

それにしても香織は止まらない。
回転に回転する剣。
まるで舞でも踊るかのようにバッサバッサとやくざ者を斬ってゆく。
幼少の頃から父親に連れられ数人を打ち斬り倒す稽古を重ねて来た。

「お前が人斬り地井頭か?」

さすがに息が上がってきた香織は足を止めた。
すでにそこいら中血で床が見えなくなってきた。

「人斬り地井頭?いったいここをどこだと思って入ってきた?ここは陰流の愛洲道場だ」

そう言いながら、香織は懐から小さな匂い袋を取り出した。
そして血のついた足の裏に中身をまぶした。
龍蔵は目を見張った。

松ヤニだな…

血で道場の床が滑るので滑り止めに使ったのか。

案の定、香織の背後から斬りかかった男が血で滑って尻もちをついた。

「イテッ!」

すかさず香織は振り向きざまにその男の首をはねた。
まったく滑ることなく斬った姿勢で残心をとった。
やくざ者達は滑るのを警戒して動きが鈍くなった。
龍蔵は歯ぎしりをした。

なんてやつだ…出入りの喧嘩に慣れてやがる…
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