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春物語
初恋話
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「ねぇ、その神様とは両想いだったの? 葵葉ちゃんの恋は成就できたの? 」
何の遠慮なく興奮気味に根掘り葉掘り聞こうとする莉乃に、俺は慌てて莉乃の口を塞ごうとする。
だが、幽霊の俺では、莉乃の体を通り抜けてしまって、止める事が出来ない。
何とかして止めなくてはと思いながらも、なす術がなく、オロオロするばかりの俺に代わって、予想外の人物が助け船に入って来た。
「おーい、何騒いでるんだお前ら? 廊下まで声が聞こえるぞ」
「あ、沢田先生ー! 今ね、葵葉ちゃんの初恋の人の話を聞いてたの!」
「へぇ、葵葉のねぇ。そんな事より莉乃、お前の事、服部先生が探してたぞ。今日、血液検査の予約が入ってたんじゃないのか? 」
「えぇー注射嫌い。莉乃、もっと葵葉ちゃんの話聞いてたい。だから注射はキャンセルで!」
「そんな事できるわけないだろ。いいから、お前はお前の部屋へ戻れって」
そう言いながら沢田は、莉乃を肩に担ぎ上た。
莉乃は「きゃーーー!!!」と悲鳴を上げながらも、楽しそうにはしゃいでいた。
丁度その時、看護師の女性が慌てた様子で入ってくる。
「莉乃ちゃん!やーっと見つけたー。もぉ、探してたのよ。沢田先生、見つけて頂いてありがとうございます」
「いえいえ、じゃあ、あとは宜しく」
そう行って沢田は、肩から下ろすと、莉乃を看護師さんに引き渡した。
「じゃあ莉乃ちゃん、行こうか」
「……はーい。じゃあね、葵葉ちゃん。また神耶君のお話聞かせてね」
「うん、またいつでも遊びにおいで」
そう言って、莉乃と葵葉さんは互いに手を振りあって別れた。
莉乃が去った病室内。
沢田は葵葉さんのベッドに腰掛けると、先程まで莉乃が見ていたスケッチブックをペラペラめくりながら、二人で話し始める。
「お前、まーた“神耶君”の話、してたのか?」
「うん、莉乃ちゃんを元気付けようと思って。治療を頑張ってる莉乃ちゃんの事、神様は見てくれていて、本気で病気を治したいって努力し続けていれば絶対治るよって」
「あぁ、それでか。莉乃の奴が今日は素直に治療しに行ったのは。でも、医者の立場からすると、絶対なんて簡単には言いきれないんだけどな」
「だとしても、治療を受けてる本人の気持ち次第で、治療の成果に影響があったりするでしょ?」
「まぁ、確かに。それは否定しない。取り敢えず、莉乃を前向きにさせてくれてありがとな」
二人の会話を聞きながら、俺は不思議に思いながら二人の会話をすぐそばで聞いていた。
沢田も葵葉さんが神様と友達だった話を知っているのかと。それも、多分、俺なんかよりもよっぽど詳しく。
昨日も思ったが、医者と患者にしては距離感が近い二人。
その理由が気になりながらも、俺には詮索する度胸もなくて、ただ静かに二人の会話を聞いていた。
何の遠慮なく興奮気味に根掘り葉掘り聞こうとする莉乃に、俺は慌てて莉乃の口を塞ごうとする。
だが、幽霊の俺では、莉乃の体を通り抜けてしまって、止める事が出来ない。
何とかして止めなくてはと思いながらも、なす術がなく、オロオロするばかりの俺に代わって、予想外の人物が助け船に入って来た。
「おーい、何騒いでるんだお前ら? 廊下まで声が聞こえるぞ」
「あ、沢田先生ー! 今ね、葵葉ちゃんの初恋の人の話を聞いてたの!」
「へぇ、葵葉のねぇ。そんな事より莉乃、お前の事、服部先生が探してたぞ。今日、血液検査の予約が入ってたんじゃないのか? 」
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そう言いながら沢田は、莉乃を肩に担ぎ上た。
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そう行って沢田は、肩から下ろすと、莉乃を看護師さんに引き渡した。
「じゃあ莉乃ちゃん、行こうか」
「……はーい。じゃあね、葵葉ちゃん。また神耶君のお話聞かせてね」
「うん、またいつでも遊びにおいで」
そう言って、莉乃と葵葉さんは互いに手を振りあって別れた。
莉乃が去った病室内。
沢田は葵葉さんのベッドに腰掛けると、先程まで莉乃が見ていたスケッチブックをペラペラめくりながら、二人で話し始める。
「お前、まーた“神耶君”の話、してたのか?」
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