異世界で傭兵始めました

ミストレ

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1章 転生編

3話

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【本文】

 ヒカリ達と同行させてもらい、孤児院のある街"メレッカ"と呼ばれる街に着いた。

 門を通るのにお金がかかるとは知らず、ヒカリが代わりに支払ってくれた。証明書、つまりは冒険者ギルドカードか傭兵ギルドカードが必要だって事だ。しかも、両ギルド共入会試験なるものがあるらしくそれに落ちると1ヶ月は再試験を受けれないとヒカリに教えられた時には少し心配になった。

 そして今、傭兵ギルドの前に僕らは来ていた。今回ヒカリ達が受けた討伐クエストの報酬を受ける為である。提出は指定されている討伐部位を出し、確認された後、問題がなければクエスト達成である。
 
 本来ならそうして終わるはずだったのだが・・・。

 「おい、お前らが受けてたクエストの達成部位を出せ」

 ガラの悪そうな男達が僕らを囲むように現れた。

 「誰ですかあなた達は。それに達成部位を渡すつもりはありませんから」

 「ほほー、俺らをB級傭兵団、竜の右翼と知ってのことか?」

 「り、竜の右翼・・・」

 「そうだ。俺達は竜の右翼さ、逆らえばどうなるかわかるよね?」

 リーダー的存在の男が強気にヒカリに物言いながら近づいて来た。E級傭兵団、氷の団とB級傭兵団、竜の右翼が戦いとなれば負けるのは明らかに氷の団である。それが本当なら。

 「あのー、サンスさん、あなたは竜の右翼ではないですよね?E級傭兵で団すら結成していないですよね?」

 僕が名前を呼びながら話しかけると男は驚きを顔に出していた。なんて返答すればいいのか迷ったのか少し間が空いた。

 「へ、へー、おいガキ。俺達が竜の右翼じゃねーとはどういう事だ?」

 「僕、鑑定持ちなんですよ。だから、あなたのステータスを見れるんですよ」

 笑顔で答えてやると男は血管を浮かせながら怒りをあらわにしていた。

 「なら、実力の差を見せてやるよ!!」

 そう言いながらサンスは腕を振り上げた。返り討ちにしてやろうとした時、後ろから人影が現れた。

 「子供相手に随分な行いだな。竜の右翼にお前みたいな奴がいたとはなぁ~。竜の右翼の副リーダーをしているのに知らんかったなぁ~」

 現れた男はリーゼント頭でこちらもガラ悪そうな感じだ。

 「ふ、副リーダーだと・・。ってことは、竜の特攻隊長の異名を持つヘルガなのか・・・」

 「ほー、竜の右翼に入ってるはずなのに俺の顔を見てもわからないのか?」

 「いや、わかってるさ。ただ酔っていて判断力が鈍ってただけだ」

 「なら、序列を言ってみろよ」

 「じょ、序列か?確か37位だったはずだ」

 「ほー!お前は序列を持っているのか?竜の右翼に序列が存在しないのに」

 「なっ!騙したな!!」

 「騙した?何言ってんだお前。竜の右翼と名乗って悪さしやがって、お前こそさんざん人を騙しているだろうが。落とし前はつけてもらうぜ。周りのお前らもだ」

 リーゼント男がそう言うと新たな人影が複数現れ、男達を囲むように立っていた。

 「お前らにはちょっと付いてきてもらうぜ」

 リーゼント男がそう言い部下と思う男達に連行させた。それを見送るとこちらを向いてニッと笑顔を向けてきた。

 「悪いな嬢ちゃん達、怖い思いさせたな。俺達竜の右翼はこんな山賊紛いな事はしねーから安心しな。んじゃ、死なない程度に頑張なよ」

 リーゼント男はそう言うと男達を連行した方へと消えて行った。



__________________



 その後は何事も問題なく、討伐部位の確認に移れた。討伐部位の確認に時間がかかるとの事だったのでロビーの休憩エリアで談笑をしていた。

 「それにしてもカッコよかったなリーゼントの兄ちゃん」

 「そうね、付き合うならあんな風に強くて優しい人と付き合いたいわ」

 僕は心の中で、えっ!、と思っていた。確かに強そうで優しいかった。だけど、まさかヒカリの守備範囲内なのかと思うとちょっと引いた。ま、まぁ~人それぞれだよね。
 そんなことを思っていると受付嬢が来た。

 「氷の団の皆様お待たせ致しました。確認が終了しました。報酬がこちらになります」

 受付嬢から報酬が入った袋を受け取り、孤児院に向かおうとしたら、一人のゴツイ見た目のおっさんが現れた。

 「よう、ガキ共。クエストクリアしたようだな。おめでとう、まさかあのクエストをクリアして来るとは思わなかったぞ。それで、話は変わるが、そこのお前、ちょいと付いて来てはくれないか?」

 おっさんが指差して来たのは僕だった。

 「えっ?僕ですか?」

 「そうだ。お前だ。他の子供達にはちょいと悪いが先に帰っててもらうがいいか?」

 「えー、あのー、困りますね。これから連れて行ってもらう所があるので」

 「そうか。なら、休憩エリアで待っててもらうか。おい、エミリーコイツらにジュースでも出しといてくれ」

 「は、はい!」

 そう言うと受付嬢のエミリーは足早に引っ込んで行った。当の僕はというとおっさんに連れられギルド長の部屋にいた。


 「突然の事ですまないね。私はここディルク領傭兵ギルド長、スレインだ。早速で悪いが君は氷の団のメンバーではないね?」

 椅子に座るや自己紹介の後に質問をして来た。鋭い視線を飛ばしてくるスレインに思わず息を呑んだ。

 「は、はい。僕は氷の団のメンバーではないです」

 「よし、わかった。では次だ。それなら、何故君が倒したモンスターを彼らに譲ったのだね」

 この質問が来るかもと予想はしていた。だけど、何故気づかれたのかが分からなかった。討伐部位から討伐者などは分からない。ただ、何の討伐部位なのかしか分からない。なのにスレインは僕が倒したと確信しているように見える。

 「いやですねー、どうして僕が倒したと思われているのですか?モンスターを倒したのはヒカリ達、氷の団ですよ」

 少しわざとらしかったかもしれないが僕ではなくヒカリ達が倒したと訂正した。そんな僕の様子を見て、スレインはより鋭く僕を見てきた。

 「まだ、偽るか」

 そう言った瞬間、突然僕に殴りかかってきた。それも一度だけではなく、複数回殴りかかってきた。
 さらに驚いたのはモンスターと戦ったように避けれると思っていたが複数回の内、2、3回か避けれないものがあり、腕をクロスして防いだ。

 「これは、どういうつもりですか」

 先程と違い声色を低くして僕が言うとスレインは満足したかのような笑顔を向けてきた。

 「やはり、私の目は狂ってなかったな」

 「は?」

 さっきまで剣幕していた状況から一転して、部屋は和やかな雰囲気に包まれた。

 「いやいや、君を試すような真似をして悪かったね。君が嘘をつくから本当に実力があるのかを見なくてはならなくなって、つい、手が先に出てしまった」

 そんな事を言って笑うスレインだった。そこへ、エミリーが入ってきた。

 「何の音ですか今のは!!」

 2、3回防いだ時、ドゴン!ドゴン!と音を立ててた。エミリーが聞いた音はおそらくはその音だろう。

 「なに、ちょっとこの子を試していたんだよ。私の鑑定スキルでもステータスが見れないうえに、クリア出来るはずがないクエストをクリアして帰って来た氷の団を見てこれは何か隠していると思ったからね」

 「だからって、いきなり試したなんて、元A級傭兵のあなたが試したら普通じゃ、済まないではないですか!!やめてくださいよ、これ以上私達の仕事を増やすのは」

 「なになに、この子は問題ないよ。なんせ、私の攻撃を凌いだのだから」

 「えっ!嘘・・・。本当ですか!って、それよりこの子は誰なんですか?」

 「そう言えば名前を聞いてなかったね」

 「名前も聞かないで試していたんですか・・・。やめてくださいよ~。これでもし死んでたりしたらどう対処していいか、わかりませんでしたよ」

 「まぁ~、死んでないから問題なしって事でいいではないか」

 「あなたがそんなんだから、私達が苦労するんですよ。はぁ~」

 ため息をつきながらエミリーは部屋を出て行った。この会話からこのスレインと言う男は普段からやらかすタイプなのだろう。エミリーさんも大変そうだ。


 「それで君の名前は?」

 「僕はカオルです。旅をしていました」

 「カオルか。それに旅か・・・。流され者か?」

 この二つの情報から察するとは意外にもスレインと言う男はキレ者かもしれない。

 「そうですね。僕は流され者です」

 「それ故のあの戦闘力か。それなら、まだ何処のギルドにも所属していないだろ?」

 「そうですね」

 「なら、傭兵ギルドに登録しないか?」

 「それはどうしてですか?」

 「カオルは知らないのか?この世界にはモンスター退治を主な専門とする冒険者ギルドと護衛や戦争派遣など対人戦闘を主な専門とする傭兵ギルドの二つのギルドがあるのだが、このどちらか片方だけしか所属出来ないんだ。
 だから、冒険者ギルドに取られる前に有力候補をスカウトしてるってことさ」

 この世界の事をあまり知らない中でまた新たな知識を得れた。どちらかのギルドにしか入れないとするならば安全面を考慮すれば冒険者ギルドだろう。
 しかし、ギルド長自らのスカウトなら僕に対してのメリットもあるだろう。

 「では、僕が傭兵ギルドに登録したらどんなメリットがありますか?」

 「メリット?そんなもんあるわけ無いだろ」

 まさかの無かった!僕ならば普通はE級からなのをC級からみたいなのでスカウトするのに、まさか何も無いとは思いもしなかった。

 「えー、では、僕は危険なクエストが多い傭兵に入るメリットがないので、ご縁がなかったと言う事で」

 「ちょっ!ちょ、ちょっと待った!わかった。ギルド長権限でカオルのギルドの階級をC級にするのってのはどうだ?」

 「失礼します」

 「ちょっ!待った!待った!ならば、団を結成出来る権利とあまり大きくはないが私が所有している家を譲ろう!これでどうだ!!」

 スレインはゼーハ、ゼーハと息をしながらこちらを見ている。そんな趣味がない僕からするとここまで引き止められると逆に引いてしまう。

 「わかりました。その条件で登録しましょう。あともう一つお願いしても良いですか?」

 「ここまできたら、一つくらい増えたって変わらねーからいいよ」

 「では、ですね・・・・・」



__________________



 スレインと話し終え、休憩エリアに行くとヒカリ達とエミリーが楽しそうに談笑していた。

 「そうなんですね。あっ、カオルさん、あの後大丈夫でしたか?」

 「はい、大丈夫でしたよ。むしろこっちが悪いくらい良くしてもらいましたよ」

 ニコニコする僕に対し、後ろでやつれ気味にいるスレインを見てエミリーは驚いていた。

 「こんなスレインさん、見たことないです・・・」

 「まさか私の方が一本取られるとは・・・」

 二人は無言で見つめ合い、その後僕の方に目線を向けてきた。

 「では、スレインさん、よろしくお願いしますね」

 「あいよ、その代わりにしっかりとクエストをしてもらうからね。ギルドカードは明日までには出来るから取りに来てくれ」

 「わかりました。それでは、失礼します。みんな行こう」
 
 そう言って僕らは夕日が沈みかける中、孤児院に向かった。


 
【後文】

 今回は長めに書いたつもりです。慣れてないと案外疲れますね。設定集のような物も書くつもりですのでよろしくお願いします。設定集は短めで作る予定です。
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