【R18*TL短編集】身体も心も吸血鬼の紅い瞳に囚われて（ティーンズラブ）

森のやさしい吸血鬼に本能のままに愛されすぎて快感に溺れてしまうお人好しの薬草師の話（ティーンズラブ）

2. 吸血鬼との思わぬ再会

日が傾くにつれ、森の静けさがどこか不自然に乱れていることにファンリンは気づいた。普段聞こえる鳥たちのさえずりや葉擦れの音が消え、代わりに急ぎ足の音やかすかな声が響いている。窓辺に立った彼女は、目を細めながら遠くを見つめた。

そして、彼の姿を見た瞬間、彼女は息を飲んだ。

あの吸血鬼ーー

木々の間を駆け抜ける彼の姿は、優雅でありながらどこか切迫している。風がその身体を叩きつけるように吹いていたが、彼はまるで気にも留めていないようだった。

だが、その後ろに続く影が見えた瞬間、彼女の心に冷たい恐怖が走った。霧を切り裂くように追いかけてくる二つの人影。彼らの手に光る鋼の刃が、すべてを物語っていた。

吸血鬼狩りだ――

ファンリンの胸は恐怖で締めつけられた。ヴァンパイア・ハンターがあの吸血鬼に迫る様子を目の当たりにし、心臓が高鳴る。彼がついに足をもつれさせた瞬間、その顔が苦痛で歪むのが見えた。服は血に染まり、彼の優雅だった動きは次第に鈍くなっていく。

考える間もなく、ファンリンは小屋を飛び出した。頭の中で鳴り響くのは、自分の鼓動だけ。狩人たちは彼女に気づいていないようだった。彼らの目は、完全に獲物へと注がれていた。彼女は息を潜め、音を立てぬよう彼らの後を追った。

ついに吸血鬼のもとにたどり着いたとき、彼は木にもたれかかるように倒れ込んでいた。浅く乱れた呼吸が痛々しく、彼の紅い瞳には光がほとんど残されていなかった。狩人たちは自分たちが追いつけなくなったことに気づき、すでにどこかで動きを止めており、その場にはいなかった。

「こんなに傷つけられて...」ファンリンはそっと彼に囁いた。

その声に反応して、彼の紅い瞳がわずかに開いた。一瞬だけ、彼の目は困惑したように揺れた。彼女が現実の存在なのか、それとも意識が薄れる中で生まれた幻影なのか、わからないような表情だった。

「じっとしていて」

ファンリンは静かに指示した。その声は、胸の中で渦巻く緊張にもかかわらず、不思議と落ち着いていた。腰に下げた薬草袋に手を伸ばし、慣れた手つきで中を探ると、さまざまな葉や粉状の薬草を取り出した。

森の秘密――傷を癒し、痛みを和らげ、出血を止める方法を知ること。それは彼女にとって当たり前の知識だった。しかし今、この胸を突き動かすような切迫感には、これまで経験したことのないものがあった。

吸血鬼は彼女の手が傷ついた腕に触れるとき、思わず顔をしかめた。狩人たちの刃が残した深い傷が、痛々しくその肌に刻まれている。

「痛くしないから」ファンリンはそう言いながら、粉砕した薬草を詰めた湿布をそっと傷口に押し当てた。その触れ方に彼の瞳はわずかに柔らかくなったが、顔にはまだ痛みの影が浮かんでいる。

「あなたが吸血鬼だってことは知っているわ」彼女はほとんどささやくような声で付け加えた。「でも、だからといって追い払ったりはしない。」

彼の表情が曇る。「知っていたのか？」彼の声には張り詰めた緊張が滲んでいた。その手の甲に刻まれた文様が、今やはっきりと見える。それは彼の種族の証であった。

「一度、見かけたの」彼女は語り始めた。「あなたはウサギを助けてた」

彼はすぐには口を開かなかった。ただその赤い瞳に、不信と好奇心の入り混じった視線を浮かべながら、彼女をじっと見つめていた。

「あなたの、名前は？」

ファンリンは動じることなく手を動かし続け、傷口を丁寧に清め、さらに薬草を施した。

彼は掠れた声で問いに答えた。

「...ユーシェン」

「ユーシェン、あなたひどい怪我をしてる」と彼女は静かに言った。「私はファンリン。薬草師だから、あなたのことを手当てさせて。」

彼がためらっているのは感じ取れたが、彼の目に恐れはなかった。ただ、長い間追い詰められてきた者の痛みと疲労がそこにあった。

やがて、彼は静かにうなずいた。その声は低く、しかししっかりとしていた。「ありがとう。」

ファンリンは慎重に彼を立たせ、彼の体重を支えながら小屋へと導いた。まだ傷は癒えていなかったが、彼は抵抗することなく彼女の助けを受け入れた。おそらく彼女の静かな存在が彼を安心させたのだろう。それとも、ただ疲れ果てて反攻する気力も残っていなかったのかもしれない。

小屋にたどり着くと、彼女は彼を部屋の隅に置かれた患者用のベッドへと優しく寝かせた。彼の呼吸はまだ荒かったが、少なくとも今は命の危険はなさそうだった。ファンリンはそばを離れず、薬草が効いて痛みが和らいだ彼の様子をじっと見守った。

ユーシェンは、彼女が思い描いていた吸血鬼とはまるで違っていた。彼の種族に付きまとう恐ろしい評判の裏に、彼には予想外の脆さが見え隠れしていた――誰もが想像しないような儚さだった。

そして彼は、何年も味わったことのない安息を、初めて許したのだった。