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軍服の慕情
季世編 第三話『二度目は―――』
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季世と智志が一夜を過ごし、数日が過ぎた。
「甘味屋?」
「ああ、季世。前に行きたいって言っていただろう」
「覚えていてくれたんだ?」
新しく改装される甘味屋に、季世が以前から行きたがっていたのを智志はちゃんと覚えていた。
「明日は店が休みだろ?午後から行くか」
「やったぁ」
仲の良い二人に、柚子と瑞江も笑顔になる。
「柚子ちゃんは?」
「いえ、私は」
「雪杜されの都合しだいかい?」
「ええ」
柚子は頷いた。
「大変だね、軍人さんを彼氏にするのは」
「仕方ないです」
「杉原なら、今問題を任されてるんだよ」
智志が言った。
「アイツは優しいから、断れないんだ」
「へへ」
柚子が嬉しそうに笑う。
(ほんと、大した女だな)
淋しくても、相手が褒められれば笑顔になる。
『杉原、お前たまには柚子さんに会いに行けよ』
『大丈夫だ、柚子なら』
会わなくても、互いを信じて待てる。
『連絡も取れない場所にいるわけじゃない。時間さえ作れば、いつでも会える』
まったく会えなかった、佐世保と東京ほど離れている訳じゃない。
「私、柚子さんって、ほんとに凄いと思う。何年も会えずにいたのに、同じ人を思い続けるなんて」
「だな、オレは狂いそうになるが」
季世を遠ざけ、胸が痛んだ。
「十年だよ?アイツら、十年も会ってなかったんだぞ」
「上官の命令で見合いするまで、会えなかったのよね?凄いな、運命の恋人だわ」
― 柚子 ―
駅で再会し、抱きしめ会った二人を想像すると、小説のいち場面が出来上がる。
「私も、柚子さんがいなければ、智志さんと」
「感謝、しないとな」
改装された甘味屋で、季世と智志はかき氷を食べる。
「甘ーい、幸せ」
ニパッと笑う季世を、智志は目を細める。
「可愛いな」
呟き、慌てて目をそらす。
「え、可愛い?」
「武士の情け、知らないフリしてくれ」
「でも」
確かに聞こえた、可愛いと。
「頼むから!」
耳だけでなく、首筋まで赤い智志が叫んだ。
ダメですっ
そこは、神社の裏手にある小さな袋小路のような行き止まりだった。
「季世」
何度も口づけられ、季世は目を潤ませる。片方は神社、反対は民家という、人に見られるがも知れない場所で。
「智志さん」
季世はボタンを外され半裸とまでいかないが、かなり際どい姿だった。
「こんな、外で」
「外じゃない、海の家だ」
「大して変わりません」
壁はほとんど無いし、ベニヤ板の床に畳を敷いた簡易的な室内だ。衝立がなければ、行為が丸見えだろう。
「声出さなきゃ、大丈夫だろ」
「無理です」
口唇を噛めば、智志が指で防ぐ。傷がつくからと、自分の指を噛ませる。
「噛んでいいから」
「出来ま」
まだ水泳の季節ではないが、子連れや若い男女が歩いている。
キャハハ
子供のはしゃぐ声や足音に、季世はビクビクと震える。そのたびに智志を締め付け、智志は眉を寄せる。
「動くよ」
「ちょっ、ダメ」
律動を再開され、季世は首を振る。口を手で塞がれ、季世は涙目で見上げる。
「無理やりしてるみたいだな」
「・・・!」
クスと智志が笑い、季世は『バカ!』と表情で訴えた。
「甘味屋?」
「ああ、季世。前に行きたいって言っていただろう」
「覚えていてくれたんだ?」
新しく改装される甘味屋に、季世が以前から行きたがっていたのを智志はちゃんと覚えていた。
「明日は店が休みだろ?午後から行くか」
「やったぁ」
仲の良い二人に、柚子と瑞江も笑顔になる。
「柚子ちゃんは?」
「いえ、私は」
「雪杜されの都合しだいかい?」
「ええ」
柚子は頷いた。
「大変だね、軍人さんを彼氏にするのは」
「仕方ないです」
「杉原なら、今問題を任されてるんだよ」
智志が言った。
「アイツは優しいから、断れないんだ」
「へへ」
柚子が嬉しそうに笑う。
(ほんと、大した女だな)
淋しくても、相手が褒められれば笑顔になる。
『杉原、お前たまには柚子さんに会いに行けよ』
『大丈夫だ、柚子なら』
会わなくても、互いを信じて待てる。
『連絡も取れない場所にいるわけじゃない。時間さえ作れば、いつでも会える』
まったく会えなかった、佐世保と東京ほど離れている訳じゃない。
「私、柚子さんって、ほんとに凄いと思う。何年も会えずにいたのに、同じ人を思い続けるなんて」
「だな、オレは狂いそうになるが」
季世を遠ざけ、胸が痛んだ。
「十年だよ?アイツら、十年も会ってなかったんだぞ」
「上官の命令で見合いするまで、会えなかったのよね?凄いな、運命の恋人だわ」
― 柚子 ―
駅で再会し、抱きしめ会った二人を想像すると、小説のいち場面が出来上がる。
「私も、柚子さんがいなければ、智志さんと」
「感謝、しないとな」
改装された甘味屋で、季世と智志はかき氷を食べる。
「甘ーい、幸せ」
ニパッと笑う季世を、智志は目を細める。
「可愛いな」
呟き、慌てて目をそらす。
「え、可愛い?」
「武士の情け、知らないフリしてくれ」
「でも」
確かに聞こえた、可愛いと。
「頼むから!」
耳だけでなく、首筋まで赤い智志が叫んだ。
ダメですっ
そこは、神社の裏手にある小さな袋小路のような行き止まりだった。
「季世」
何度も口づけられ、季世は目を潤ませる。片方は神社、反対は民家という、人に見られるがも知れない場所で。
「智志さん」
季世はボタンを外され半裸とまでいかないが、かなり際どい姿だった。
「こんな、外で」
「外じゃない、海の家だ」
「大して変わりません」
壁はほとんど無いし、ベニヤ板の床に畳を敷いた簡易的な室内だ。衝立がなければ、行為が丸見えだろう。
「声出さなきゃ、大丈夫だろ」
「無理です」
口唇を噛めば、智志が指で防ぐ。傷がつくからと、自分の指を噛ませる。
「噛んでいいから」
「出来ま」
まだ水泳の季節ではないが、子連れや若い男女が歩いている。
キャハハ
子供のはしゃぐ声や足音に、季世はビクビクと震える。そのたびに智志を締め付け、智志は眉を寄せる。
「動くよ」
「ちょっ、ダメ」
律動を再開され、季世は首を振る。口を手で塞がれ、季世は涙目で見上げる。
「無理やりしてるみたいだな」
「・・・!」
クスと智志が笑い、季世は『バカ!』と表情で訴えた。
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