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第209話 森の中へ
しおりを挟む「いやあ~やっぱり朝ご飯はこれだよな!」
俺の目の前には真っ白く炊かれたご飯がある。そしてご飯に合わせて味噌汁と魚の干物がある。
昨日この村へ入る時にリュックへ入れておいた食材を使い、わざわざ村の台所を借りて作ったものだ。この村を出てから作ってもよかったのだが、待ちきれなかった。この村も他の村と同様に朝食は食べないのだが、しっかりと手間賃を払ってご飯を用意してもらった。
「へえ~こいつは初めて飲むスープだが結構いけるな。この海藻の食感も悪くねえ」
「ええ、私も初めて飲みましたが、変わった風味でいけます。少し味が濃いかもしれませんが、ご飯と合いますな」
ガレンと村長さんは恐る恐る味噌汁を飲んで味を見ていたが、2人とも問題なく飲めるようだ。やっぱり色が鮮やかな他のスープとは違って茶色と黒色の海藻だから見た目はあまりよくないかもしれない。
味噌汁は大きな鍋いっぱいに作ったので、村の人の分も作ってある。
「このスープは味噌汁といって、大豆という豆を加工して作った味噌を使っています。今のところ俺の故郷以外では見たことがない調味料ですね」
味噌はキャンピングカーの香辛料・調味料補給機能で確保できるが、この異世界ではまだ見たことがない。大豆っぽい豆のようなものは見つけたが、それを発酵させて作る味噌や醤油はまだ作られていないのかもしれない。
俺もさすがに味噌と醤油の作り方までは知らないな。確か米から麹を作ってそれと大豆を合わせるはずだったと思うけれど、麹ってどうやって作るんだったか?
「こっちの干し魚とご飯は結構合うぞ。なるほど、他の料理と一緒に食えばいけるかもな」
「うん、すっごくおいしいね!」
カルラとコレットちゃんの口にもあったようだ。やはりご飯は他の料理とあわせてこそだな。
今日は狩りに行くことだし、しっかりとご飯を食べておかないとな。
「さて、それじゃあいくか。俺が先頭で進むから、後方の警戒は頼んだぜ」
「おう、任せとけ!」
「お任せください!」
「が、頑張るよ!」
「ホホー!」
……うちのメンバーはやる気満々だな。俺も今日は盾を持ってしっかりと準備をしている。
普段よりも魔物が強くて多い森ということで多少不安ではあるが、ガレンとスターフェル村の屈強な人たちがいるから心強さはいつも以上だ。というか――
「村長さんも狩りに参加するんですね?」
「ふぉっ、ふぉっ。儂もまだまだ若い者には負けていられませんからな!」
村の男たち4人と結構な歳であるはずの村長さんまで一緒に狩りへ参加するらしい。確かにムキムキで俺よりも強そうだと思ってはいたけれど、まさか現役で狩りに参加しているとは思わなかったな。
この村の人たちは本当に屈強で逞しいようだ。
「今回の一番の目的はブラッディベアの討伐だ。あいつらは繁殖時期になるとより凶暴になるから、今のうちに狩っておきたい。シゲトたちが以前に倒したと言っていたダナマベアよりも大きく強い魔物だから気は抜くなよ」
「……すでに気を抜く余裕なんてまったくないから大丈夫」
森の中を隊列を組みながら進んでいく。
いつも思うが森の中は木々や草がとても多く、視界が非常に悪い。いつ魔物が襲ってくるかわからないから常に気は抜けない。
そして今回の目的はブラッディベアだ。あのダナマベアよりも大きく凶暴という時点で足が震えてきそうである。ダナマベアの時でさえも怖かったのにそれが複数体いるというのだから、その近くで暮らしているスターフェル村の人にとってはかなりの脅威だろう。ガレンがこの村を訪れている今のうちに討伐しておきたいという気持ちも分かるというものだ。
「前の方から魔物が来るよ。……長くて地を這っているからヘビ型の魔物かも」
コレットちゃんが黒い耳をピンと張りつつ、前方に意識を集中している。この森は魔物が多すぎて周囲すべてを把握するのは難しいので、前方にだけ集中してもらった。フー太もいつも通り俺たちの上空から周囲を警戒している。
「おう、すでに捕捉した。ブラックサーペントだな。ジーナ、カルラ、2人でやってみろ。毒は持っていないが、あの牙は強力だから気を付けろ」
「了解です!」
「任せとけ!」
ガレンが指示を出す。
今回の魔物はジーナとカルラに任せるようだ。2人の実力を把握しているガレンのことだから、2人でも十分に倒せるくらいの魔物というこうとだろう。
「シャ~!」
コレットちゃんの言う通り、前方少し左から体長が数メートルもある大蛇が現れた。全身は漆黒の鱗に覆われており、パニック映画とかで見た大蛇よりも巨大である。あんなのに襲われてしまったら、俺なんか一瞬で丸呑みにされてしまうだろう。
これまで何度も魔物との戦闘を切り抜けてきた俺でも相当怖い。ジーナとカルラなら大丈夫だとは思うが、いざという時のために盾を持って2人を見守る。
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連載時、HOT 1位ありがとうございました!
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