14 / 81
第14話 アイテムボックス機能
しおりを挟む「……さて、こいつをどうするかな?」
「ホー……」
「村まではまだ少しあるので、可能ならばここで解体をして、不要な素材は置いていきたいところです」
目の前には首を落とされた巨大なディアクの死骸がある。先ほどの戦闘でジーナがディアクの首を落とした。今は木に吊るして血を抜いているところだ。
「ジーナは解体ができるんだね。解体したことはないけれど、俺も手伝うよ」
「ありがとうございます、とても助かります」
「ホー!」
フー太も右の翼を上げるが、残念だけれどフー太に手伝いはたぶん難しいだろうな。
「おお、こいつは美味しそうだ!」
「ホー♪」
「ディアクはとても美味しい魔物ですからね。私の村でもめったに出ないご馳走なのですよ!」
俺たちの目の前には解体されて焼かれたディアクのレバーやハツなどの内臓がジュージューと焼けて、とても良い香りを一面にまき散らしている。
無事にディアクの解体作業が終わり、今は解体したばかりのディアクの肉で昼食の用意ができたところだ。肉はともかく、内臓系はすぐに悪くなってしまうので、先に食べることとなった。
「うおっ、これはうまいな! 臭みなんてこれっぽっちもなくて、純粋な肉の旨みが口の中いっぱいに広がっていくぞ!」
「ホーホー♪」
フー太も今までで一番喜んでいるように見える。
普通レバーと言えば臭みが強いものだと思っていたが、この新鮮なディアクのレバーから臭みはまったく感じず、少し弾力と歯ごたえがあって、濃い肉の味が口いっぱいに広がっていく。
ハツの方はクセが少なく淡白な味わいながら、ギュッとした弾力がありつつもスッと噛み切れる食感だ。新鮮なホルモンというものはこれほどまでに旨いものなのか!
「……っ!? これはとても美味しいです! この香辛料がディアクの肉の美味しさをさらに引き出していますね!」
「うん、アウトドアスパイスを掛けるだけで十分に美味しい。これは肉自体が新鮮でとてもうまいんだろうな。スーパーでおつとめ品の肉とはレベルが違いすぎるぞ」
「すーぱー、おつとめ品?」
「おっと、今のは忘れてくれ」
正直に言って、昨日食べたスーパーのおつとめ品の肉とはレベルが違う味だった。新鮮な肉で、自分たちが解体したという補正があるのかもしれないが、それにしてもうますぎるな。
すごいな、ちょっと異世界をなめていた。品種改良を繰り返して美味しく食べられるように育てられた豚や牛よりもうまいとは驚きだ!
「ホー!」
「そうだな、ちょっとだけれど野草なんかがあるとさらに美味しくなるな」
フー太がくちばしで指しているように、この肉に添えたタンポポとシソもいい味を出している。
ジーナの村まで歩いている最中、道端に生えていた野草を摘んでおいた。今は野菜がないから、何かの足しになるかと思っていたのだが、早速役に立ったようだ。
どうやらこちらの世界にも元の世界で生えていたのと同じ草や花などが生えていた。とはいえ、元の世界と違って毒があったりする可能性もあるから、味見は慎重にしたけれどな。
「ジーナもこのあたりの野草は覚えておいたほうがいいぞ。いざ遭難したり、食料が尽きた時には森や草原で食べられる野草って結構あるから」
「耳が痛いです……」
実は森にはかなりの種類の食べられる木の実やキノコ、山菜、野草などが存在する。
「とはいえ毒のある野草も結構あるからな。下手をしたらお腹を壊して、元よりも悪い状況になってしまう可能性も高いから、ちゃんとした知識は必要だ」
ヨモギとトリカブトの見分けがつきにくいというのは元の世界では有名な話だ。別に俺も遭難とかしたわけではないが、一時は野草図鑑とか見て覚えたもんな。有名どころではたんぽぽやつくし、シソやふきとかが食べられる野草だ。
今回はたんぽぽとシソがあったのでお昼に食べようと取っておいた。さすがに肉オンリーだけだと胃がもたれそうだからな。
アクが強い野草も多いから、本当は衣をつけて天ぷらにするのが一番うまい。今回は肉と一緒に炒めるだけだが、それでも多少はサッパリとしたはずだ。
「それに色あいも綺麗ですね!」
「そうだね、緑色や黄色も加わって色合いもよくなるよ」
うん、少量だけどないよりはマシだな。少なくとも肉だけよりはいいと思う。
「……さて、2ポイントで取ったこの『アイテムボックス機能』がはたしてどうなるのやら」
「ホー!」
遅い昼食を取って、キャンピングカーの新たな機能を拡張した。その名もアイテムボックス機能だ。
自動修復機能も必要なのだが、ディアクの突進でベッコリいってしまったのはキャンピングカーの側面だけだったので、当分は大丈夫だろうという判断だ。早く相棒を治してあげたいんだけれどな……
解体したディアクの肉だが、ジーナと半分に分けることとなった。お互いに譲り合って少しだけでいいという話をしてたので、きっかり半分にすることにしたわけだ。
そして解体されたディアクの肉は相当な量で、キャンピングカーに搭載されている冷蔵庫には半分も入らなかったので、キャンピングカーの収納機能を拡張した。
「アイテムボックスというくらいだから、物を収納できる機能だと思うんだけれど、相変わらず説明がないからどう使うのか分からないんだよなあ――ってなんじゃこりゃ!?」
アイテムボックス機能を拡張したあと、キャンピングカー内で何が変わったのかを確認して回っていると、キャンピングカー内に設置されている箪笥のうちのひとつが黒い渦のようなものになっていた。
応援ありがとうございます!
1,575
お気に入りに追加
3,014
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる