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第17話 調味料補給機能
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茹でた野菜とディアクの焼いた肉にアウトドアスパイスを振っていく。ぶっちゃけ焼いたり茹でたものでアウトドアスパイスに合わないものなんてないよな。
「……う、うまい!!」
ただでさえうまかった野菜と肉が更にうまくなった。特にディアクの肉はヤバイな。日本の肉は日本人の舌に合うように品種改良を重ねて育てられているが、それに匹敵する肉の旨さだ。よくわからないが、この世界にある魔法というものが肉の旨さに影響しているのかもしれない。
いやあ、お腹も空いているし、こんなのいくらでもお腹に入っちゃうぜ。くそ、こんなうまい肉にはキンキンに冷えたビールが合うんだけどなあ! キャンピングカーの冷蔵庫にはまだビールが数本だけ残っているが、この場にいきなりキャンピングカーを出すわけにはいかないから諦めるしかない。
……なんだか視線を感じる。隣を見るとジーナが俺の食べている様子をじっと見ていた。俺と目線が合うとすぐに目を逸らしたが、何を思っているかは丸分かりだ。
「ほら、ジーナもどうぞ」
「えっ、あ、いや。そんな高価なものはいただけないぞ!」
「昨日も言ったけれど、俺の故郷ではそんなに高いものじゃないし、まだあるから遠慮するなよ。それにこんなうまい肉を食べられるのもジーナのおかげなんだからな」
「いや、そもそもさっきのディアクとの戦いでも、シゲトを守ることができなかった訳だし……」
「てい!」
パラパラパラ
「あっ!!」
「あんまり遠慮しすぎるのもよくないぞ。このディアクの肉も、食べることができたのはジーナのおかげなんだからな。それに村へ案内してくれたし、俺も本当に助かったんだからこれでおあいこだ」
「……シゲト。すまないな、ありがたくいただこう」
「おう、食え食え!」
「……っ!! うまい、これはうまいぞ!」
うむ、こんなに可愛いエルフの女の子が美味しそうに食べている姿を見られたのだから、こちらこそご馳走さまだ。
「ジーナ、シゲト。すげえうまそうに食っているけどさっきは何をかけたんだ?」
「あっ、いや、これは……」
門番のベルクさんも気になったようだ。他の村の人もこちらを見ているが、俺がよそ者だから話しかけにくかったのだろう。ジーナはアウトドアスパイスについて話していいのかわからなくて困っているようだ。
「あっ、ベルクさん。これは俺の故郷の調味料です。塩とか香辛料とかいろいろ入っていて茹でた野菜やお肉にもとてもあうんですよ」
「ベルクでいいぞ。たぶん年も同じくらいだし敬語もいらねえよ。香辛料ってすげえな! 旅をしていると言ってたが、シゲトは金持ちなんだな」
確かにベルクさんもエイベンさんも俺と同い年くらいに見えたな。向こうがそういってくれるし、こっちも敬語はいいだろ。
「うちの故郷だと香辛料はすごく安いんだ。それこそ全部の家庭にあって毎食使えるくらいにはな。せっかくだからベルクも試してみないか? 特にこのディアクの肉にはすごくあうぞ」
「い、いいのか!? この辺りだと香辛料はかなり高価なんだぞ。それを毎食って……よっぽど豊かな土地なんだな」
「まだたくさんあるから気にしないで大丈夫だ。それにこの肉だってもらっているし、寝る場所まで貸してもらっているんだ。俺のほうもすごい助かっているよ」
実を言うと、キャンピングカーの中にはこのアウトドアスパイスの他に別の種類のアウトドアスパイスがもうひとつある。最近ではいろんなメーカーがアウトドアスパイスを販売しており、それぞれ味が微妙に違うのだ。
「いや、ジーナを助けてくれたんだし、それは当然なんだがな……すまねえ、ありがたくいただこう」
「ああ!」
パラパラパラ
「うおっ!! こりゃうめえ! いつもの肉や野菜とは別もんじゃねえか!」
胡椒も入っているのは黙っておこう。塩よりもさらに高価って言ってたからな。しかし、ただのアウトドアスパイスでここまで喜んでくれるとこちらも嬉しい。
「よかったらみなさんもどうですか? まだいっぱいあるから遠慮しないでいいですよ」
おう、一気に長蛇の列になった。というかいつの間にか村長さんも並んでいるし!
うまい飯はみんなで分かち合って食べるとさらにうまくなるからな。これから数日間お世話になるわけだし、村の人たちと仲良くなっておいて損はないはずだ。限られた貴重なアウトドアスパイスではあるが、ここはこの村の人達の友好度を上げる方を優先しよう。
そして俺にはひとつ考えがある。キャンピングカーの拡張機能の中にあった『調味料補給機能』。1ポイントで補給できる拡張機能だが、おそらくはガソリンとタンクの水と同様に自動的にアウトドアスパイスや醬油などの調味料を補給してくれる機能……だと思う。
キャンピングカーの機能拡張と言えるのかとも思ったが、元の世界からやってきたキャンピングカーの中にあった物だからいいのか。少なくともこちらの世界にはないであろう調味料なんかを補給できるのはとても助かる機能だ。
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