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第38話 バーベキュー

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「……よし、もうすぐ日が暮れるだろうし、今日はこの辺りまでにしようか」

 午後もキャンピングカーで走り続け、少しだけ道を外れて川辺へとやってきた。カーナビによって、付近の川の場所が分かるのはとても便利だ。この川辺には大きな木なんかもあるので、日が暮れればこのキャンピングカーもそれほど目立たないだろう。

 今のところは道を走っていてもあんまり人には会わなかった。今日も結構な距離を走ってきたが、数組の商人と思われる人たちしかすれ違っていない。

 ちなみにすれ違った人たちはとても驚いていたり、臨戦態勢を取られたりすることもあったが、ジーナとフー太が早めに気付いてくれて、少しだけ道を逸れて避けていった。さすがにこちらから避けようとしているのにいきなり攻撃を仕掛けてくる人はいなかった。

 まあ、この世界には魔道具というものがあるらしいし、このキャンピングカーもそのひとつだと思ってくれればいいんだけどな。それにすれ違った人たちとまた会う可能性はほとんどないだろうからな。

「やはりこのキャンピングカーは本当に素晴らしいですね。あれだけの速度でずっと走り続けることができるなんて!」

「ホー!」

「1日に走れる距離の制限はあるんだけどね。それに森や川なんかは迂回しないと駄目なんだ。まあ、それでも十分にすごいと思うけれどね」

 今日は大きなトラブルもなく結構な距離を走ったので、ガソリンを7~8割も使用している。たぶん大丈夫とは思うが、ガソリン補給機能により、明日は満タンに補給されているはずだ。

 すごいように見えるこのキャンピングカーでも森や川なんかは通過することができない。この世界だと元の世界のように道が整備されていないから、結構迂回しなければならない場所も多いんだよ。まあ、それを迂回しても十分に速いんだけどな。

「それじゃあご飯にしようか。少し待っていてくれ」

「シゲト、なにか私にも手伝えることはないですか?」

「今日は肉と野菜を切るだけですぐに終わっちゃうんだよな。そしたら外にテーブルと椅子を準備してもらってもいい?」

「はい、もちろんです!」

 今日の晩ご飯の準備はすぐにできるので、ジーナには先に外でテーブルと椅子の準備をしてもらう。これまでは魔物などがいる外で食事をするのは少し怖かったが、ジーナが護衛として活躍してくれるので、多少は安心して外で食事をすることができる。

 もちろん万が一に備えて、すぐにキャンピングカーの中に逃げ込んで走り出せるよう、キャンピングカーの近くにテーブルと椅子を設置してもらった。



「さあ、晩ご飯はバーベキューだよ!」

「ばーべきゅーですか?」

「ホー?」

 目の前にはバーベキューコンロがあり、すでに炭に火が付いている。数人用のバーベキューコンロは結構な大きさがあるのだが、キャンピングカーなら余裕で収納することができる。

 俺も稀にだが複数人でバーベキューをすることがあるから、キャンピングカーに積んでおいたやつだ。まさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったな。

「……切り分けられた肉と野菜があるので、ここで直接焼いて食べるということですか?」

「正解だよ。バーベキューは一口大に切った食材をその場で焼いて味を付けて食べるんだ。自分の好きな食材を好きな焼き加減で食べることができるんだよ」

 もちろん肉と野菜を切るだけというバーベキューで手を抜いたというわけではないぞ。実はバーベキューを一緒に食べることによって、結構いろいろなことが分かったりする。

 どれくらいの量を食べるのか、濃いめの味と薄めの味のどちらが好みか、嫌いな野菜や肉の種類はないかなどなど、一緒に食べる者の様々な情報を得ることができる。

 しばらくはジーナとフー太と一緒に旅をすることになったし、2人の好みなどを把握しておこうというわけだ。

「こんな感じで、自分で肉や野菜を焼いて、こっちの小皿にある味を付けて食べるんだよ」

 試しにディアクの肉と野菜をバーベキューコンロの上に乗せて焼いていく。味の方はキャンピングカーに元々積んであったレモン汁、アウトドアスパイス、塩とコショウ、そしてオドリオの街のエミリオさんにも少し渡した焼き肉のタレがある。やはりバーベキューと言えば、焼き肉のタレだよな。

「うん、やっぱりこのディアクの肉は焼き肉にしてもうまい。野菜は少しだけ塩をかけて食べるのがいいかもしれないな」

 焼きあがったディアクの肉に焼き肉のタレを付けて口へと放る。甘辛い焼き肉のタレとディアクの肉の脂が絡み合って非常にうまい! ディアクの肉は分厚く切ってステーキにしてもうまいが、一口サイズに切って焼き肉にしてもいけるな。

 野菜の方はタレに付けて食べるよりも、軽く塩をかけるだけで野菜本来の味がよく分かって好きだ。まあ、これは元の世界の野菜よりもこちらの野菜の方がおいしいから俺の好みに合うのかもしれない。

 ジーナとフー太の方を見ると、とても羨ましそうに俺が味見をするのを眺めていた。

「ディアクの肉や野菜は山ほどあるからな。さあ、お腹いっぱい食べてくれ」
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