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第42話 即席ドレッシング
しおりを挟む「んん……朝か」
目が覚めてカーテンを開けるとすでに日が昇っていた。昨日の夜は一度このキャンピングカーの検証をするために一度起きて、そのあとでもう一度寝た。
ガソリンなんかも予想通りの結果で一気に満タンになっていたから、毎日かなりの距離を走れることが分かった。
この世界では夜にまともな明かりなどないし、道もあれていて魔物という存在もあるから、夜は走らずに日が昇っている間しか走らないつもりだ。そのため、旅をしている間は朝早くに起きて、夜は早く寝るという生活になる。
「ホー」
「おはよう、フー太。さあ、朝ご飯の準備をするか」
俺が起きるとフー太も起きたが、ジーナはまだ寝ているようだ。ジーナを起こさないようにキャンピングカーのキッチンへと移動し、朝食の準備を始める。
キャンピングカーの車内はそれほど広いというわけではなく、料理をしている音は結構聞こえていたはずだが、ジーナは起きなかった。ここ数日はいろいろとあったし、ジーナも疲れていたのだろう。
「ジーナ、おはよう。朝食ができたよ」
「ホー♪」
「……おはようございます、シゲト、フー太様。朝からとても良い香りですね」
目をこすってあくびをしながらジーナが起きてきた。なんとなくエルフって朝に強そうなイメージはあったが、そうでもないようだ。
「昨日は夜に一度起こしちゃったけれど、そのあとはちゃんと眠れた?」
「はい! というよりも、本当はシゲトとフー太様の護衛として、あまり寝ないようにしようと思ったのですが、こちらのベッドというものが気持ち良すぎてぐっすりと眠ってしまいまして……」
そう言いながらジーナは恨めしそうに自分が寝ていたベッドを見る。
そうか、疲れていると思ったけれど、ベッドがあまりに気持ち良かったからぐっすり眠っていただけなんだな。確かに村では布団のようなものを敷いて寝ていたが、少し硬く寝心地はそれほどいいとは言えなかった。
それと比べるとこのキャンピングカーにあるベッドはとても柔らかく快適に寝ることができる。どうやらそれはこの世界のジーナでも例外ではないらしい。
「昼間はずっと前を見て気を張っているんだから、夜はゆっくりと休んでいていいからな」
夜にエンジンもかけていないこのキャンピングカーは大きな岩みたいなものにしか見えないから、魔物が襲ってくることもない気がする。人に見つけられたらまずいかもしれないが、カギは掛けてあるし中には入ることができないだろう。
毎日夜にまで気を張るよりも、車体強化されたキャンピングカーを信じて、夜はしっかりと休んだ方がいい。
この世界だと運転中は障害物が多く、元の世界よりも気を張るため、俺も普段運転している以上に疲れてしまう。それはジーナとフー太にも言えることだ。
「……わかりました。できるだけそうするようにしますね」
了解はしたが、完全に納得したというわけではなさそうなジーナ。まあ、この世界だとすぐに警戒を解くのは難しいかもしれない。これについては少しずつ警戒を解いてもらえればいいと思う。
「今日の朝食はパンとサラダと野菜の肉巻きだよ」
朝食は村でもらったパンと生野菜のサラダ。そして切った野菜に薄いディアクの肉を巻いて焼いた野菜の肉巻きだ。
「とってもおいしいです! 野菜に味が付いているのですね!」
「ああ。うん、なかなかいけるな」
残念ながらキャンピングカーにはドレッシングやマヨネーズを積んでいなかったので、これは即席に作ったドレッシングとなる。サラダ油にバーベキューの時に使ったレモン汁とアウトドアスパイスを混ぜたものだ。
シンプルだけれど、野菜を生のまま食べるよりもおいしい。調味料をいろいろと混ぜることでいろんなものの代用品となるので、やはり元の世界の調味料を補給できるのは本当に助かる。
「ホー♪」
「うん、こっちの野菜の肉巻きもおいしいな。やっぱり焼き肉のタレは万能だ」
こっちの野菜の肉巻きは切った野菜に肉を巻いて焼いて、仕上げに焼き肉のタレで味を付けたものだ。だいたいの野菜はこうして食べると美味いのである。こちらの世界の野菜はとてもおいしいので、焼き肉のタレは少なめにして正解だったようだ。
理想を言えば朝食はパンよりも米と一緒に食べたいところだったけれど、米は残り少ないからな。補給機能はいろいろとあるが、残念ながら食材の補給機能はなかったので、米を補給することはできないのがつらい。
ジーナに話を聞いたところ、米というものを知らなかったから、この辺りに米はないのだろうか? とりあえず街の市場へ行ったら米がないかは探してみるとしよう。
「さあ、今日は昼過ぎには目的地のロッテルガの街まで行けるといいな」
朝食を食べて片付けを終え、目的地へ向けて出発する。今日は目的地であるロッテルガの街まで到着予定だ。オドリオの街ではゆっくりと街を回ることもできなかったし、今回は異世界の街を楽しむとしよう。
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