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第34話 運命の杖様の言う通り
しおりを挟む昨日はサーラさんの屋敷から帰ったあとは母さんが早めに帰ってくる予定だったので、久しぶりに母さんとのんびりと過ごした。人助けをしたら謝礼金をもらい臨時収入があったからとケーキを買ってきて驚かれもした。一応は事実なのだが、最近は母さんに嘘ばかりついているから少しだけ気が重かったな。
そして今日、朝早くから出かけたふりをして、すぐに転移魔法で自分の部屋に戻ってから異世界の扉を通って異世界へ移動した。
さて今日はルクセリアの街を出て新しい場所に行ってみようと思う。今のところの候補は北にある山脈にドラゴンを狩りに行くか、南にある海に面した街に行くかだ。どちらも非常に魅力的だがどちらに向かおうかな。
「うん、こういう時はあれに任せよう!」
収納魔法で前回どちらに行くか迷った時に使った運命の杖を取り出す。前回はこの杖のおかげでサーラさん達と出会えたわけだし、今回もいい運命がありますように!
パタッ
「よし、運命の杖の導きにより北に向かうことに決定!」
運命の杖が指し示した方向は北の方角だった。運命の杖の先がしっかりと北への街道を指していた。
ダダダダダダ
車以上のスピードでひたすら走り続けること早3時間。目的地である北の山脈にはまだまだ辿り着けない。
移動方法に関しては今のところ走るしかない。日本で車やバイクを買ってこっちで使うという手もあるが、ぶっちゃけそれよりも走った方が速い。飛行機とかヘリコプターとかなら走るより速そうだが、さすがにそんなの一高校生が手に入れられるわけがないからな。
あらかじめサーラさん達に見せてもらったこの国の地図だと、おそらくもう少し先にそこそこ大きな街があるはずだ。そこで少しだけ休憩をして、さらに進めば山脈の最寄りの村に夕方ごろには到着予定となる。
まあ地図の精度もわからないし、自分がどれだけのスピードで移動しているかはっきりとはわからないから、正確な時間まではわからないけどな。
「おっ、ようやく見えてきたな!」
時刻は13時ごろ、ようやく街が見えてきた。走るペースを落として歩いて進む。この道を走って進んでいる時も、通り行く人達からなんだあれは?的な感じで見られていたからな。ファンタジーな世界とはいえこれほどのスピードで移動する人はいないのかもしれない。
この道を通っていたのはほとんどが馬車で、たくさんの商品を積んだ商人達や、乗合馬車のような大勢の人を乗せた馬車ばかりだ。こういった自然の景色を見ながら馬車でのんびりと進むのも悪くはないのかもしれない。まあ今はあんまり時間がないから景色も全て無視して進んでしまっているがな。
「身分証を見せよ。それとこの街へ入るには3000Gが必要だ」
ふむふむ、3000Gということは街へ入るためには1500円くらいか。商人とかだったらもっとたくさん払わなければいけないんだろうな。
「はい、こちらの通行証で大丈夫ですか?」
「……ふむ、こっ、これは大変失礼しました! どうぞ中にお入りください!」
前回サーラさんにもらった通行証を見せるといきなり門番の態度が急変した。
「はい、ありがとうございます。あの、やっぱりこの通行証って珍しい物なんですか?」
「はっ、もちろんでございます! 通行証にもいくつか種類があるのですが、こちらの第一等通行証は王族、もしくはそれに準ずる貴族様しか持ち得ない通行証となっております!
今までこの通行証をお持ちの方は多くの従者を引き連れ、大きな馬車に乗っている方しかいなかったため、大変失礼な態度をとってしまいました! どうか、お許しを!」
門番さんが深く頭を下げる。まあ王族や貴族がこんな格好で一人でいるわけがないから間違えて当然だ。それにしてもどうやらこの通行証はかなりの代物らしい。
ルクセリアの街では普通に通してくれたが、多分サーラさんが事前に伝えていたのだろう。サーラさんに深く感謝をしなければいけないな。
「とんでもない。俺は王族でも貴族でもないので気にしないでください。いろいろと教えてくれてありがとうございます。それでは入らせてもらいますね」
「はっ!寛大なお言葉ありがとうございます! どうぞ、エガートンの街を楽しんでくださいませ!」
エガートンの街、王都であるルクセリアの北側に位置する街で面積はルクセリアの半分くらい。街の壁もルクセリアよりは低く、道を通る人もルクセリアの半分以下だ。
やはり最初にあれだけ立派な街を見てしまうと、この街は少し見劣りしてしまう。とはいえ、王都とはまた違った街並みをしているので街の中を歩くのはとても面白い。
「それにしても1人だとちょっと寂しいな」
ルクセリアの街にいる時はいつもサーラさん達と一緒にいたし、いくら大魔導士の力があるとはいえ、1人で異世界の街を歩くのは少し怖い。これだけすごい力を継承していてもビビりなところ全然変わってない。
言葉は通じるとはいえ高校生が一人で外国に旅行しているようなものだから、当たり前といえば当たり前か。黒髪が珍しいからか結構見られている気もする。
街の中央の方へ進むと大きな広場に出て、たくさんの屋台があった。ちょうど昼過ぎだし、ここで昼食を取るとしよう。
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