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第40話 ジャパニーズ調味料
しおりを挟む「お待たせしました!」
「おお、早いな。こっもちょうど野営の準備ができたところだ」
「さっきからすげえいい匂いがしてたんでもうお腹ペコペコっすよ!」
「俺も俺も! 腹減ってしようがねえ!」
「といってもワイバーンの肉を焼いただけですけどね」
「それだけでも俺たちにとっては大のご馳走だよ。それにしても凄い量だな。大皿三皿分もあるとはな」
「実はこれ、3皿とも味が違うので気に入ったのを食べてくださいね。あっ、おかわりもありますから!」
「すごいな、3種類もあるのか。ありがたくいただくとしよう」
「それじゃあ俺はこっちのやつから!……うん、塩と胡椒が利いていてうめえ! 結構高い胡椒もふんだんに使われてるな」
この皿はシンプルに塩胡椒だ。しかも日本で売っている定番の塩胡椒を使ったから間違いない味だろう。
「おお、こっちのやつは甘辛くて不思議な味がしてうますぎる!!」
そっちの皿は焼いたワイバーンの肉に日本で売っている焼肉のタレをかけたものだ。しかも定番中の定番である黄金の味、これをまずいという日本人は存在しないと思っている。
「すげえ、こっちのやつはさっぱりした味にすりおろした野菜みたいなのが乗ってるぞ!!」
そして最後のは大根おろしのタレだ。個人的にはステーキにはこれが一番好きだったりする。醤油をベースに和風ダシと酢とレモンの果汁を使った定番のやつだ。やっぱり日本人には醤油とダシですよ!
そう、せっかくドラゴンステーキを食べられるのだから、こちらの世界の味付けだけではなく、日本で売っている調味料やソースを持ってきたというわけだ。
軽く味見をしてみたが、ワイバーンの肉との相性もバッチリだった。昼間食べたお店のワイバーン料理もとても美味しかったが、日本の調味料やソースも断然アリだ。
「うおおお! どれもうめえ!」
「いやこれワイバーンの肉もうめえけど、かかってるタレも超うめえよ! マサヨシさん、これは?」
「こっちの皿はシンプルに塩胡椒で、こっちの2つの皿は俺の故郷で使っているタレを使ってみました。なかなかいけるでしょ?」
「ああ、俺はこっちのタレのやつが一番気に入ったな。甘辛くて濃厚ですげー美味い!」
「俺もこれだな、もちろん肉自体も美味いがこのタレが肉の旨みを引き立てている」
「俺はこっちのあっさりしたタレだな。こんなにさっぱりした味は初めて食った」
「俺もこっちのタレだな。これなら肉でもいくらでも食えそうだ」
ちょうど2対2に分かれたようだ。塩胡椒も十分美味いんだけどたぶん食べ慣れているせいだろうな。
「マサヨシさん、このタレはどこかで売ってないのか? 間違いなく冒険者に売れると思うぞ!」
「ああ、いつもの塩味も美味いけど、たまには味を変えたいもんな」
「すみません、あまり量が作れないので、商売用とかにはできないんですよ」
ケーキと同じことを言われたな。こっちの世界の人は食にあまり興味がないと思っていたが、そうでもないらしい。単純に砂糖とか醤油がないだけなんだろう。
「……そうか、残念だ」
「ならここでいっぱい食べとかなきゃっすね!」
「ふふ、そうですね。追加分も焼いておきますよ」
すごい勢いでワイバーンの肉が消えていく。成人男性4人の食欲を舐めていた。この勢いならさっきの量の倍くらいは必要だな。
「すまねえな、マサヨシさん」
「それじゃあ俺はこれで失礼します」
「ああ、今回は本当に助かったよ。美味い飯までご馳走になって感謝する。Cランク冒険者の俺達にできることは限られているが、エガートンの街に常駐しているから何かあったら声をかけてくれ」
「まあ俺たちにできることなら、マサヨシさんにはなんでもできると思うけどな」
「まあな」
「そんなことありませんよ。何かあったら声をかけさせてもらいますね」
「おう、それじゃあな!」
イアンさん達と別れて山を少し登ったところで転移魔法を使って大魔導士の家に戻り、異世界へのとびらを通って日本へ戻る。
明日の日曜日はさらに先へ進んでいよいよドラゴンとのご対面だ。
この世界のドラゴンは人を喰らう害獣だ。いや、害獣なんかよりも圧倒的な力を持っている分災害にも等しいのかもしれない。普段は自らの巣にいるが、何十年かに一度の産卵時期になると、人里に降りて暴れ回るそうだ。
産卵期が近付いていたら、多くの冒険者や騎士団が強制的に招集され、多くの犠牲を出しながらもなんとか討伐するそうだ。今回のドラゴンは北の山脈に住み着いてからまだ数年だから、当分は産卵期に入らないらしいが、早めに狩っておく分には問題ないだろう。
ドラゴンの素材に関しても頭から尻尾の先まですべてが利用され、その肉は超高級食材として王族や貴族の下にしか出回らない。仕留めることができれば富に名声、その全てが手に入るが、イアンさんの知り合いのように命を失うものも少なくはない。引き際だけはしっかりと見極めるようにするとしよう。
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