いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

文字の大きさ
73 / 189

第73話 最後のあがき

しおりを挟む

「ちくしょう、なにが起きているんだ?」

「同志が殺すガキを選びに行ったまま戻ってこないぞ!」

「さっきから人質についているはずの同志達とも連絡が取れねえ!」

「おい、この部屋から出れねえぞ! ドアを開けたら半透明の壁があって通ることができない!」

 くそっ、なにが起きた! 計画は完璧だったはずだ。時間をかけて同志と共に現地に潜り込み、下調べも十分に行った。念には念を入れ人質も二つに分け、人質に見せかけた同志まで潜り込ませた。

 なのになぜだ!? 様々な不測の事態に備えて想定してきたはずなのにどの同志からも連絡がこない。こんな平和な国の警察どもが、すぐに対応できるはずはない。何者かが我々の邪魔をしていることは間違いない!



――――――――――――――――――――――――
 
「バインド!」

「うわっ、なんだこれは!」

「くそ、動けねえ!」

「なんだよ、足元から鎖が!」

 よし、これでテロリストどもはすべて拘束したことになる。ふう~なんとか被害を出すことなく解決することができたようだな。

「なんだてめえは!」

「うお、おかしな格好をしているが警察か!?」

 部屋の入り口の障壁魔法を解いて中に入る。この部屋にいるテロリストは全部で5名。……もうこのスーツの評価はどうでもいいや。

「あなた達の仲間はすべて捕まえました。警察がくるまで大人しくしてくださいね」

「変な声しやがって! 離しやがれ!」

 あとは警察がきたら、俺が拘束魔法を解いても大丈夫なように上からさらに拘束してくれればオッケーだな。

 ドタドタドタ

 おっ、どうやら警察官も突入してきたようだな。人質達の安否が確認できてようやく突入してきたというわけか。

「……くっくっく、我らが神と同志達を解放することは叶わなかったか」

 聞き耳スキルで話を聞いていたところ、おそらくはこのテロリストグループのリーダーと思われる男が突然笑い出した。

「あんたらのいう神がどんなもんか知らないけれど、これであんたらは終わりだ。その神と一緒の牢屋に入れられることでも祈っていろよ」

 どうせこいつらは手足を鎖で縛られているからもう何もできやしない。こんなテロ集団を作った教祖だけは、探し出して思いっきりぶん殴るくらいはしてやりたいけどな。

「……民間人を巻き込めなかったのは残念だが、せめて今この駅に入ってきた警察と貴様だけは道連れにしてやろう!」

 道連れ!? おい、ちょっと待て、まさか!!

「我らは常に神と共に!」

「「「神と共に!」」」

「待て!!」

 カチッ

「「「………………」」」

「……スリープ!」

「ふあ……」

「リーダー!?」

「てめえ、リーダーに何をした!?」

「なぜ爆発しない!?」

「馬鹿な、ひとつも爆発しないだと!?」

 焦ったあああああああ!

 まさか両手両足を拘束した状態で爆弾のスイッチを押せるとは思わなかった! おまえ奥歯に仕込んだスイッチとかいつの時代の人間だよ! 普通は赤いボタンとか黒い無線みたいなやつとかスマホだろうが!

 しかし爆弾はあれで全部だったのは本当に助かった。おそらくは大丈夫だと思いつつも、心臓が破裂しそうなくらいビビって、全力の障壁魔法を張って防御したぞ!



 そもそも俺がここに到着したのはだいぶ前になる。自分自身に風魔法をぶつけるという荒技で現場に急いだ。下の階はシャッターが閉じられ、強引に扉を破らなければ入ることができなかったので、隠密スキルと風魔法を使って2階のホームから侵入した。

 人質達が傷付けられていないことを確認し、隠密スキルを使いながらテロリスト達の数や動向を探っていた。テロリストの人数も配置も確認し、いざ突入しようとした時に聞き耳スキルで聞いていたテロリスト達の会話から、全員が死を覚悟しているとか人質全員を殺す覚悟があるとか物騒な話が聞こえてきた。

 もしやと思い探索の魔法を使い、駅構内を探してみると紙袋に入れられ、隠されていた爆弾を発見した。念のために駅の中をすべてと、この駅の周りに至るまですべてを探索魔法で探していたため、人質を救助するのがだいぶ遅れてしまったというわけだ。

 正直に言って、爆弾を探している間はいつテロリスト達がマシンガンを人質達に向けて撃つんじゃないかと思うと緊張で胃に穴が開きそうになっていた。聞き耳スキルでテロリスト達の会話は聞こえているとはいえ、テロなんて起こすやつらだ。どんな些細なきっかけで人質達に銃を向けるかわからないからな。

 駅にあった爆弾は全部で2つ。爆弾の解体なんてできるわけがないのですべて収納魔法で回収した。下手をしたら駅の外にまで仕掛けているのではないかとも思い、聞き耳スキルが届くギリギリの範囲まで爆弾を探していた。

 俺が探せる範囲もあと少しということでテロリスト共が見せしめのために子供を殺すとふざけたことが聞こえてきたので転移魔法で急いで戻ってきたというわけだ。

 俺が探せなかったエリアに爆弾がなかったことと、収納魔法の中で爆弾が爆発してしまうことがなかったのは本当に助かった。

 リーダーと呼ばれていた男の口の中から爆弾のスイッチを回収する。どうやら奥歯の一本を抜き、そこにこの歯形のスイッチを埋め込んだようだ。死を覚悟してよくそこまでやれるよな……
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...