74 / 189
第74話 後悔はしていない
しおりを挟む「手を上げろ!」
「………………」
俺は黙って手を上げた。リアルなこのセリフを聞くのは今日二回目になる。俺は10人近くの機動隊、SAT、自衛隊のどれかに取り囲まれている。もちろん銃を突きつけられて……
この人達の格好はテレビとか見でたことがあるな。黒い服に防弾ベスト、腕や足の部分に黒色のプロテクター、ヘルメットに大型の盾を持っている。どれかといえば機動隊かな?
「君は何者だ!? テロリスト共を拘束したのは君か?」
「はい」
「うお!?」
この隊の隊長のような人が前に出て俺に尋ねてきたのだが、変声機の声に驚いたようだ。
「……隊長、自分はこの者のことを知っています。この前動画であがっていた爆発事故の時に人を救助していた不審者ですよ!」
人を救助していた不審者ってなんだよ! 見た目が不審者なのは否定しないけどさあ……
「自分も見たことがあります。ネットではおかしな力を持った超能力者だと騒がれております!」
「超能力者? 本気で言っているのか?」
まあ拘束魔法を使っている時点でもう普通の人間ではないことはバレてしまうか。
「まずはテロリスト達の拘束をお願いします。今は俺が拘束していますが、しばらくすると拘束が解けてしまいます」
「なに! わかった、だが君はそのまま手をあげてついてきてほしい」
「わかりました、拘束したテロリスト達の場所までご案内します」
「それでは拘束を解除するのでお願いしますね」
「あ、ああ。よろしく頼む」
ひとりのテロリストの拘束魔法を解除する。足から肩までグルグル巻きにしていた鎖が一瞬のうちに消えた。
「んな!? ま、まさか本当に超能力なのか?」
「す、すごい! これが本物の超能力!」
一応魔法なんだけど超能力とあまり違いはない。同じようにひとりずつ拘束を解除していき、隊員さん達が次々とテロリスト達を拘束していった。
「これでテロリスト達は全員ですね」
「あ、ああ。協力感謝する。もう両手はおろしてもらって大丈夫だ。協力してくれたのに疑ってしまい、本当に申し訳ない」
「いえ、自分でも見た目が怪しいことはわかっておりますので」
「それで君はいったい何者なんだ? すまないが上に話をしたいので、少しだけ一緒に来てもらってもいいだろうか?」
う~ん、気持ちはわかるのだが、これ以上は俺の個人情報がバレかねない。
「すみませんが、これ以上はご勘弁ください。それではこれで失礼します」
「あっ、ちょっ……」
「きっ、消えた!」
「……こんなの上になんて報告すればいいんだよ!?」
……目の前で隠密スキルを使うと消えたように見えるのか。実はまだこっそり駅構内にいたりする。隊員さん達が慌てているがこればっかりはなあ。
ただでさえ今回は工場爆発の時とは比較にならないくらい目立ってしまっている。隊員さん達には悪いがこのまま転移魔法で離脱させてもらおう。
疲れた……帰るのは転移魔法で一瞬だったから本当に助かったよ。行きは自分の風魔法で吹き飛ばされながら数時間だったけどしんどかった。もうこの移動方法はできれば使いたくない。
それにしても今日は本当に危なかった。そもそもあと30分異世界に行くのが早ければ、ニュースを見ることができていなかったから、このテロ事件に気付くことすらもできなかった。
そう考えると俺が異世界に行っている間に、こちらの世界でなにか起こってしまったら非常にまずい。いくらなんでも前回の工場の爆発事故や、今回のテロ事件みたいな大きな事件が、そう何度も起こる可能性は非常に少ないがゼロではない。
異世界の場合は情報伝達能力がまだあまりないから、ルクセリアの街やエガートンの街付近で何かが起こったとしても、街に情報が伝わるまでにとても時間が掛かり、行けなかったとしてもまだ諦めがつく。
しかしこちらの世界では遠くの情報がSNSなどで一瞬で広がるので、今回みたいに急いで移動すれば事件や事故に間に合う可能性がある。そうなると異世界に行き難くなってしまう。何か方法を考えないといけないかもな。
『本日の朝に起こりました三滝原駅における立て篭もり事件についての続報です。本日朝8時ごろ三滝原駅に武装した集団が駅を占拠し、大勢の人質を取り立て篭もりました。
その後、犯行グループは政府に対し犯行声明を出し、留置所に拘束されている教祖とその教団員の解放を要求しました。
そして本日昼過ぎごろ、駅構内より人質の約半数が出てきました。すぐに残りの人質も駅構内より解放された模様です。その後、機動隊が駅構内に突入し、犯行グループを全員逮捕したとの情報が入ってきております。
今回の立て篭もり事件についての死傷者は今のところございません。また、実際に人質とされていた方からの情報によりますと、突然現れた謎の人物がひとりで事件を解決したとの証言が入っております。それでは現場の柳さん~
はい、現場の柳です。現在現場の三滝原駅におります。事件が解決した現在もまだ立ち入りが禁止されております。それでは実際に人質となっていた方からのお話を伺いたいと思います』
家に帰ってテレビをつけるともう事件の概要が放送されていた。少なくとも今のところは死傷者がいないのはいいニュースだな。テロリスト達に関してはどうでもいいが。
今回はだいぶ目立ってしまったし、人質達や機動隊の目の前で拘束魔法を使ってしまった。またいろいろと騒がれる可能性は高いだろう。だが少なくとも俺が行かなければ、あの勇気のある男の子の命は危なかったから後悔はしていないけどな。
39
あなたにおすすめの小説
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる