いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

文字の大きさ
172 / 189

第172話 ちゃんと考えないといけない

しおりを挟む

 ……あのあとはいろいろと大変だった。冷静沈着スキルを使っていたとはいえ、下半身を鎮めるのに全力を尽くした。

 イアンさん達はニヤニヤとこちらの様子を楽しみながらお酒を飲んで料理を楽しんでいた。そしてリリスさん達はAランク冒険者パーティの中でも人気のある女性だったので、周りの男の冒険者達が血の涙を流しながら、4人に囲まれている俺を睨みつけていた。

 俺もいつもは睨みつけている側だったから、その気持ちは痛いほどわかる。……今後この街に来る時は、夜道で刺されないように本気で気をつけなければならない。

 みんなに離れてもらうようにお願いしたら、私達が嫌いかと上目遣いで聞かれて断ることができなかった……あれを断ることができる男なんていないだろう……

 なんとかしばらくの間、天国みたいなこの状況にいろいろと耐え、この後も一緒に飲もうというみんなの誘いをギリギリで断って、エガートンの街の冒険者ギルドを後にした。

「……リリスさん達はものすごくグイグイ来たな。やっぱりこの世界の女性は重婚がオッケーだから、男の人へのアピールが強いのかな」

 確かに重婚が可能な世界なら、そもそもの考え方が元の世界と異なるのは当然か。言ってしまえば、相手が妻帯者だとしても求婚できるんだもんな。

「結局リリスさん達にもはっきりと答えずに保留にしてしまったからな……」

 サーラさんへの返事と同様にリリスさん達への返事もはっきりとしないまま、冒険者ギルドを後にしてしまった。もっともリリスさん達にはっきりと求婚されたわけではないが、好きだと言われた。

 ……今まで一度も女性と付き合ったことのない俺が、求婚されたり、好きだと言われたり、ハーレムがオッケーとか言われても、完全に情報処理機能をオーバーしている。

 優柔不断で非常に申し訳ない限りだが、俺にとって本当に大事なことなので、ちゃんと考えて決めていきたい。……というか、元の世界でも川端さんと結構いい雰囲気だったんだよな。数日後からは学校も始まるし、元の世界のことも考えないと……





「こんな時間に外でどうしたんた?」

「……この障壁魔法を調べていただけだ。周囲の魔力を取り込み、この障壁やあの異世界への扉を繋げるための魔力に変換している機能は非常に興味深い」

「なるほど、そういうことか」

 大魔導士の家に戻ってくると、アンデは家の中ではなく、庭のほうにいた。確か大魔導士の手紙によると、魔力がなぜか集まる破滅の森にある周囲の魔力を取り込んで、この障壁と扉を維持しているんだっけか。

「俺は元の世界に帰るけれど、アンデはどうする?」

「我はもう少し調べたいことがある。マサヨシの世界にも非常に興味はあるが、先にこちらを優先したい」

 アンデはアンデでいろいろと大魔導士が遺したものが気になるようだ。

「わかった。晩ご飯は食べるか? どうせ母さんの分も作るから一緒にアンデの分も作れるぞ」

「すまんな、頼むとしよう」

「はいよ」



 扉を通って日本に戻り、買い物に行って3人分の晩ご飯を作る。

「……ふむ、これはうまいな」

「そうか。ワイバーン肉の甘味噌炒めだ。こっちの世界にはない味付けだろ」

 今日の晩ご飯はワイバーン肉を使った甘味噌炒めだ。まだたくさん残っているワイバーンの肉と、こちらの世界のナスとピーマンとネギに市販の甘味噌ダレで炒めるだけの、お手軽だけどご飯が進む料理だ。

「この前の牛丼とやらにも使っていた白いものだな。これだけでは味がないが、他の味が濃いものと合わせるとよい味だ」

「俺の国だと、このご飯という穀物が主食となっているんだ。それと合わせて味の濃いおかずや、こっちの味噌汁を一緒に食べるのが基本になるな」

 母さんはいつものように帰ってくるのが遅くなるから、今は大魔導士の家でアンデと一緒に晩ご飯を食べている。

「アンデは料理とかはしないのか?」

「師匠といたころはもっぱら我が料理をしていたな。……いや、料理どころか家事はすべて我がやっていた」

 ……イメージだけど、大魔導士って家事とか絶対にやらなそうだよな。

「こうして誰かと食卓を囲むというのも久しぶりだ。それに最近の食事は食べやすく、持ち運べるものを優先していたからな。こうして温かくうまい飯を食べるというのも、悪くはないものだ」

「こっちの世界には俺なんかが作るものよりもうまい料理がいっぱいあるからな。今やっている研究みたいなのが落ち着いたら、こっちの世界のうまい料理を食べながら、いろいろな場所をまわってみるのも面白いかもな」

 日本だけでもご当地グルメなんかが山ほどある。もちろん母さんとは一緒に行けないから、アンデとは別行動にしないといけないがな。……いや、むしろ友人として紹介するのもアリか。

「……それも悪くないかもしれんな」

 晩ご飯のあとはデザートに安いやつだが、ケーキも買ってきている。サーラさん達の反応まではいかなかったが、それでも表情の動きが少ないアンデが驚いてくれたみたいだし良しとしよう。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...