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第75話 石川県② なぎさドライブウェイ、白米千枚田
しおりを挟む「これはすごいですね……」
「砂浜を車が走っているのじゃ!」
金沢を北上してやってきたのは千里浜なぎさドライブウェイだ。ここは日本で唯一波打ち際を自動車やバイクで走ることができる砂浜だ。
千里浜の砂は一粒一粒の大きさが0.2ミリメートル。同じ大きさのきめ細かい砂が海水を含んで硬く引き締まることによって、二輪駆動でも四輪駆動でも走行が可能となるらしい。
片栗粉と水でよく実験されているダイラタンシー現象というやつだな。俺もここを自転車で走った時も、ちゃんとタイヤが砂に沈んだりせずに走行することができた。
「もちろん夏は海水浴をできる場所もあるよ。さすがに8kmは歩けないけれど、少しだけ歩いていこうか」
波打ち際の辺りをしばらく歩きつつ石川県の綺麗な海を楽しんだ。
「おお~これは見事な絶景じゃな!」
「ええ、これは本当に美しいですね。別の季節に来ても美しそうです」
「収穫時期とかは本当に綺麗だろうね。他にも秋や夜なんかは夜にライトアップされるみたいだよ」
なぎさドライブウェイをさらに北上して、輪島市にある白米千枚田までやってきた。
「このひとつひとつが田んぼなのですよね?」
「うん、もちろん。今はそれぞれがオーナー制みたいになっていて、実際にお米を育てて収穫しているらしいよ」
この千枚田は世界農業遺産であるのと同時に、実際にお米を育てて使用している田んぼでもあるのだ。ここには1004枚もの棚田がある。
急斜面に幾重にも段になって海へと広がっていくこの田んぼにはいくつかのメリットがある。平野の水田よりも風通しが良いため、害虫が発生しにくくなるらしい。
また、斜面にあるから日照時間が長くなり、棚田の稲は地中奥深く根が伸びるようになる。そして防災の面もあり、棚田がダムのような役割も持っており、地滑りや浸透水が減るような効果もあるようだ。
「この道もとても良いのう。海と田んぼを見下ろしながらゆっくりと歩くのは気持ちがいいのじゃ」
「さっきの砂浜も良かったけれど、こういう景色もいいよね」
まあ実用的にも棚田が優れているのもよく分かるが、それよりもこの光景が素晴らしいよな。青空と美しい海、そして段々と連なる棚田を見下ろしながら歩くこの光景は素晴らしいのである。
「おお、これは素晴らしい!」
思わず俺から声を上げてしまう。今日の晩ご飯はことさら豪華な食材がとても多い。石川県は海の幸と山の幸どちらも楽しめるからな!
「いろんな料理があるのじゃ! どれもとても色鮮やかじゃな」
まずは能登牛を使ったステーキ。他の県のブランド牛と同じように数々の条件を満たした最高級黒毛和牛だ。まずい理由が欠片も見当たらない肉だな。これだけで腹をいっぱいにしたいところだが、もちろん一人当たり数切れだ。
そして金沢の名物である加能ガニと香箱ガニだ。これは2種類のカニというわけではなく、石川県で水揚げされたズワイガニのうち、甲羅幅が9センチメートルを超えたオスだけがブランドである加能ガニと呼ばれている。メスのズワイガニの方は香箱ガニと呼ばれているわけだ。
同じ海鮮系で能登の新鮮な海鮮を使用した能登丼、かぶに切れ込みを入れてブリを挟んで発酵させたかぶら寿司なんかもある。かぶら寿司の方はちょっと贅沢なお正月の料理だったらしい。
「うむ、やはりこちらの世界の牛肉はうまいのじゃ!」
「おいしくなるように育てられているからね。うん、こっちの能登丼に入っている海鮮丼の魚はどれもおいしい! こっちの地方だと、のどぐろなんかも有名だね。ちなみに能登丼は能登で取れた肉や魚を使った丼だから、お店によってはローストビーフ丼だったり、天丼だったりもあるんだよ」
「それは面白いですね。こちらのカニはどちらも本当においしいです」
「どっちのカニもおいしいけれど、こっちの香箱ガニはこっちのほうじゃないとなかなか食べられないんだ。身の方は大きな加能ガニの方がおいしいけれど、このプチプチとした卵が楽しめるのはメスの香箱ガニだけだからね」
加能ガニのほうは多くの県にも輸送されているのだが、卵の詰まった香箱ガニの方は他県にはあまり出回らないようなので、金沢に来たらぜひこちらの方も食べてみてもらいたいものだ。
「ふむ、これは面白い味と香りなのじゃ。このかぶら寿司というのは寿司というのに米はないのじゃな?」
「かぶら寿司はなれ寿司といって、米麹ともち米を使って発酵したものになるんだよ。その白くて酸っぱいのが米になるんだ」
なれ寿司だと発酵に使った米は使わないかもな。
他にも石川県には加賀野菜や治部煮、金沢おでんなどのご当地グルメもある。
石川県の料理を食べたあとは開湯1200年の古い歴史を持つ和倉温泉へとやってきた。和倉温泉は海の温泉ならでは塩分を多く含んだ温泉で様々な効能があり、美しい海を見ながら入ることのできる温泉地だ。
こちらは全国有数の高級温泉街となっているので、ミルネさんと喜屋武さんとたくさん食べた晩ご飯をゆっくりと消化させるため、少し散歩をしてから和倉温泉の湯を楽しんだ。
応援ありがとうございます!
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