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第33話 様々なお酒
しおりを挟む「いやあ、見たことがない料理ばかりじゃが、どの料理もうまいのう!」
「うむ、この天ぷらっちゅう料理もうまい上に、ビールによく合うわい!」
「こちらのお鍋のほうはも準備ができたので、肉を入れて色が変わってきたら、取り出してつけダレでお召し上がりください」
「なるほどのう。さて、この鍋とやらも楽しみじゃが、そろそろ別の酒も試してみるとするか!」
「そうじゃな。ビールとやらがあそこまでうまいなら、こいつは期待してしまうわい! ヒトヨシといったのう、お主のおすすめを教えてもらえんか?」
酒のペースが速すぎるため、2杯目は少しゆっくり飲むように伝えたところ、今度はちゃんと味わいながらゆっくりと飲んでくれた。このドワーフたちは本当にお酒を愛しているんだろうな。
「そうですね、ワインや果実を使った果実酒、こちらのご飯を作る際に使った米を使った芳醇な香りがする日本酒、蒸留という技術を使って酒精を強めたウイスキー、ブランデー、焼酎などがあります」
「おお、そんなにも種類があるのか!」
「ワインや果実酒はあるが、他の酒は知らんのう……よし、どれがうまいか飲み比べるとしよう!」
「そうじゃな! それではそれらの酒をすべて1杯ずつもらうとしよう」
「すべて1杯ずつですね、承知しました」
「ありがとうございます!」
俺のストアの能力ではそれぞれのお酒で複数の銘柄の中から選んで購入できるが、さすがにすべての銘柄を注文できるようにしてしまえば、圧倒的に人手が足りなくなる。
そのため、基本的にはそれぞれのお酒の種類で1種類の銘柄の提供にした。ある程度宿の経営が問題なさそうなら銘柄を増やしたり、週ごとに銘柄を変えても良さそうだな。
フィアナと一緒に厨房へ戻って、いろんな種類のお酒を1杯ずつ注いでいく。蒸留酒はかなり酒精が強いからちゃんとゆっくりと飲んでもらうように頼むとしよう。
「お待たせしました」
「お待たせしました!」
様々なお酒をお盆に乗せて運んできた。
「おお、待っておったぞ!」
「こっちの鍋という料理もとてつもなくうまいぞ! このタレはどれも初めて食べる味じゃったな!」
「満足したようでよかったです。鍋のあとには雑炊も作れますので、食べ終わったら従業員を呼んでくださいね」
「わかったぞ。ほう、これは見事なグラスじゃな!」
「うむ、さっきのジョッキも見事じゃったが、このグラスも美しいわい!」
「こりゃ、酒がよりうまくなるに違いないのう!」
ドワーフのみんなは先ほどのビールを持ってきたよりも興奮しているように思える。
それもそのはず、目の前のテーブルにはドワーフの大好きなお酒が何種類も並んでいる。それもそれぞれの酒に合わせたワイングラスや日本酒用のグラスなど色とりどりの器まであるから、目で見ても楽しめるはずだ。
「こちらからワイン、梅を使った果実酒、日本酒、ウイスキー、ブランデー、焼酎になります」
「「「おおおおお!」」」
合計で6種類の酒を持ってきた。ワインはこちらの世界にもあるだろうけれど、梅酒なんかはないだろうし、味わったことのないない酒がこれだけ並べば興奮もするだろう。
「酒精が強いので、くれぐれもゆっくりと味わって飲んでくださいね」
「おう、わかっておるわい! お主たちもちゃんと少しずつ飲むんじゃぞ!」
「お主こそ絶対に飲み干すんじゃないぞ!」
6種類の酒を味わうようにゆっくりと次々に口に含んでいくドワーフたち。
「ぬおおおおお! なんじゃこの酒は! 口に含んだ瞬間に芳醇でふくよかな香りが広がっていくぞ! そしてほんのわずかな甘みと渋みがこの酒の旨みを引き立たせておるわい!」
こっちの一際アゴヒゲの長いドワーフさんが飲んでいるのは日本酒だ。日本酒はその温度によって味が全然違う。冷やした冷酒、常温の冷や、ぬる燗に熱燗。今回はおすすめの飲み方でということなので、基本の冷やで飲んでもらうことにした。
「ふおおおおお! なんじゃこの酒精の強さは! 一口飲むだけで一気に身体中が熱くなってきて、他の酒とは段違いじゃ! それにただ酒精が強いだけでなく、独特の雑味が少ない力強い香りがするぞ」
そっちの口ひげが一番モジャモジャのドワーフさんはウイスキーを飲んでいる。ウイスキーにはスコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーなど様々な種類があるが、今回は俺が一番なじみのあるジャパニーズウイスキーを選んだ。
ウイスキーはストレートで飲むと酒の味が一番わかるなんて話もよく聞くが、さすがにアルコール度数40度を超えるウイスキーなんてドワーフに出してしまえば、とんでもないことになるのは分かり切っているので水割りで提供している。
それでも20度以上あるのだから、ゆっくりと飲んでもらわないとすぐにぶっ倒れてしまう。
「ぬぬぬぬぬぬ! このワインは街で飲むワインとは別物じゃ! 渋みや雑味なんてカケラもしないぞ! スッキリとした味わいと見事な香りがたまらんわい!」
一番背の高いドワーフさんはワインをうっとりと眺めながら、ワイングラスを傾けてワインをゆっくりと味わっている。
実際のところ、まったく有名ではない安物のワインだが、ドワーフのみんなは満足してくれたみたいだな。品種改良を何度も重ね、ワインのために育てられたんだ。さすがにまずいわけがない。
目を閉じて、舌先の感覚をすべて使うかのごとく、一口ずつをゆっくりと楽しんでいるドワーフたち。
他のお酒も一口ずつ味わって飲みながら恍惚笑みを浮かべている。あそこまでおいしそうにお酒を飲まれると、こちらのほうまでお酒を飲みたくなってしまうな。
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