甘いキャンディー僕にも下さい

藍 湊

文字の大きさ
1 / 6

第一印象悪すぎっ!!

しおりを挟む
「ねぇ、君!」

この学校の生徒会長である柴田 翔はとある男子高校生に声をかけた。
自分より少し小さい背丈に中性的な顔立ち、動物で例えると小さな子犬や子兎のような子だ。

(よっしゃ!この子めっちゃいい子ぽいっ!)

そう思った翔はその子の手を引き半ば強制に生徒会室へ駆け抜けた。
サッカー部のキャプテンである翔は物凄く足が速い。手を引かれ走らされている子は流石についていけずついに声を放った。

「ちょ、タンマ!止まってくださいっ!!」

そう言われ我に返った翔はすぐに止まり後ろを振り向いた。先ほど勧誘した子は下を向いてぜぇ…ぜぇ…と乱れた呼吸を整えていた。翔は少し焦りすぎたな…と後悔しその子の背中を優しく摩った。
少し落ち着いたのか、ようやく顔を上げ翔のことを真っ直ぐと見つめた。

「…僕は1年3組 雨宮天と言います。僕に何のようですか?生徒会長さん」

少し怒り気味なのだろうか?天はトーンを少し低くして翔に自己紹介をした。そんな天をみて翔は思わず吹き出してしまった。

「ぶふっ…!!」

「な、何がおかしいんですか!!大体急に声をかけたと思ったら急に手を引っ張って走り出して、僕を誘拐する気ですか!?」

天の怒りはMAXを超えてついに爆発してしまった。しかし、どうだろう。彼のように中性的な容姿が怒りを爆発させても何一つ怖さが出てこない。むしろ、可愛さが増えるだけだ。頬を膨らませてプイっと拗ねている天を見て翔はまた、再び手を握り走り出した。

「だからっ…!!!話を聞けえええええ!!」

天は手を振りほどこうとするが、一向に手を離す素振りはない。ただひたすら走り回されようやく辿り着いた生徒会室には一人の男が黒いオーラを漂わせて会長を待っていた。

「やぁ、ただいま!可愛い書記くんを連れてきたよ~」

「はぁ!?しょ、書記!?」

初めて「書記」という単語を聞いてまた怒鳴りつけようとした天だったが、それはある男によって止められた。
茶色い髪に黒縁メガネをかけた高身長の男。
生徒副会長の広瀬 涼によって。
涼は翔の元へ歩みだし強烈な一撃を喰らわせた。

「いってぇぇええ!!なにすんだよ!」

「それはこっちのセリフだ。遅刻してきたと思えば下級生を振り回し、何も説明もせずにここに連れてきたお前に言われたくない。」

涼の言葉はまさにそうだった。
声をかけられたと思えば急に走り出し、着いたとなれば書記委員になれと言われ…
散々な思いをした天は疲れきっていた。
すると、隣からいい香りがしてきた。

(わぁ…綺麗な人…)

横を見ると長い髪をした人が紅茶をいれていたのだ。
天はそれに気づき思わず近付いてみた。

「わぁ…いい香りですね」

「こんにちは。私は稲葉 薫 ここの風紀委員をしているよ。良かったら1杯飲む?」

薫は天にティーカップと少量のお菓子を渡した。天は差し出された紅茶を1口飲んでみた。
口に含むと茶葉のいい香りが身体を駆け巡り天は先ほどの怒りをどこかへ忘れてきてしまったみたいだった。
天と薫が2人でお茶をしていた間、涼は未だに翔にお説教をしていた。
翔はいい加減聞き飽きたのか全く涼の話を聞いていない。
涼はとうとう、言うのを諦めて天に向かって自己紹介をした。

「急に驚かせてしまってすまない。俺は副会長をしている広瀬 涼だ。失礼だが、君は?」

「僕は雨宮天です。急にここへ連れてこられてビックリしましたが…どうしてもやって欲しいなら、やってあげても…構いませんけど…「マジで!?」

翔はボールを見つけた子犬のように目を輝かせ天の手を握った。
と、思いきや再び涼の一撃を受けることになった。

「いいから、早く自己紹介をしろ!」

「いたた…ったく涼は暴力が多いんだよ…俺は生徒会長の柴田 翔だ。急に連れてきてごめん…けど、君が良いなら是非書記委員として生徒会に入って欲しいんだ。」

翔の真剣な眼差しについ目を逸らしてしまった天だったが、薫と一緒に飲んだ紅茶が美味しかったということもあり、渋々書記委員を引き受けた。
しかし、これが天の運命を180度ひっくり返されることはまだ誰も知らない。

「会長!!仕事しろーー!!!!!」

「あははっ!天ー頼んだよーっ!!」

★続く★
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をついたのは……

hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。 幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。 それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。 そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。 誰がどんな嘘をついているのか。 嘘の先にあるものとはーー?

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...