甘いキャンディー僕にも下さい

藍 湊

文字の大きさ
2 / 6

愉快な生徒会役員達

しおりを挟む
「はぁっ…はぁっ…会長はどこに行ったんだ…」

大量の資料を抱え込みもう三週目といったところだろうか。
生徒会書記委員となった天はサボりマンの会長を探し回っていた。
溜まる疲労と段々失せてくるやる気。これだけ校舎を走り回ってもいないとなると普通の人は探すのを諦めるだろう。しかし天は諦めなかった。
天は放送室へ向かい、再び走った。
ピーンポーンパーンポーンと合図がなると天は叫ぶのであった。

「生徒会長柴田翔は速攻、生徒会室へ来おおおぉおおい!!!」

散々走り回った挙句、今度は大声で叫んだ天は酸素不足に陥りながらもふらついた足で生徒会室へ向かった。

「ただいま戻りました……」

元気の無い声で挨拶をすると驚く光景が天の目に入ってきた。
あの、会長が真剣に書類と向き合い仕事を…もう一度言う。仕事をしていたのであった。
両隣には監視役がいたが…まぁ、それはさて置き。
生徒会室には翔と薫そして身に覚えのない人が2人いた。
天は薫のそばへ行き聞いてみることにした。

「稲葉先輩」

「薫でいいよ。どうした?」

「では、薫先輩。あのふたりはどなたですか?」

翔のそばで監視役をしている2人をみて天は薫に小首をかしげた。
薫はにこっと微笑み紹介をした。

「天くんから見て右の人、白い髪をしてる人は会計委員の天野聖羅(あまの せいら)。左の人、ピンクの髪をしてる人は文化体育委員の柚月杏(ゆずき もも)。杏は天くんと同級生だよ。仲良くしてあげてね?」

薫から紹介されて、こちらに気づいたのかピンク色の髪をした子____杏がニコリと微笑んだ。
2人に監視されながら仕事をしている会長は時々こちらを見ては助けを求める表情を浮かべるが、軽々と無視をする天と薫。
無視された会長は子犬のようにしょんぼりと肩をすくめて再び仕事へ戻る。そういうことを下校時間になるまで100回は行った。

「終わったああああ!!!」

「お疲れ様です」

天は薫に教わった入れ方で、紅茶を入れてあげた。

「おや?アッサムですか?」

会計委員であり、監視役の聖羅がメガネをクイッとあげて天に問いかけた。
種類も言ってないのに言い当てた聖羅に天は驚いて感心してしまった。

「香りで分かるんですか…!?」

「はい。アッサムはよく飲む紅茶ですからね。」

すごいすごい!と子犬のように尻尾をふりふりしてる天をみて翔はなにやら不機嫌そうな顔をしていた。
すると、バンッ!と物凄い音を立てて勢いよくドアが開いた。

「翔先輩っ!!何してたんすか~」

ヘッドホンを首にかけた金髪の男が翔に駆け寄り身体を前後に大きく揺らした。そして、机の上に腰を下ろし翔に対してブツブツと文句を言い始めた。
彼は向葵 夕 (ひなた ゆう)高校2年で、最後の1人の保健委員を務めている。
そして…

「翔先輩ーっ俺、寂しかったんすからねー!これからは仕事溜めないでくださいよー」

大の翔好きだ。
生徒会公認のこの光景を初めて見ることになった天は何が起こっているのか理解不明であった。

「天くん、大丈夫?」

「ははははいいいっ!?」

急に声をかけられて変な声が出てしまった。
周りからは一斉にドーンっと笑い声が吹き出した。
普段あまり笑いはしないあの聖羅もお腹を抱えながら笑うことを堪えようとしているのだ。すると…

「お前ら、なにをそんなに笑ってるんだ?」

副会長の涼がこの状況を飲み込めずに生徒会室へ入ってきた。
大笑いしている皆と恥ずかしくてうずくまっている天。涼は頭をフル回転させこの状況を飲み込もうとした。

「雨宮くんが、変な声を出したんですよ」

とととっと涼の側へ駆け寄り涼を屈ませ、耳打ちをした。
涼は「そうか」と杏の頭を優しく撫でてやった。
少し時間が経つと、みんな笑いすぎたのかぐったりしてる様子だった。
翔は先ほど貰った紅茶を口に含み喉を潤した。すると、あることに気がついた。

「これで、生徒会一同が揃ったな!」

「えぇ、そう見たいですね。」

今まで欠けていた書記委員が天によって埋められたので生徒会メンバーがようやく全員揃ったのであった。
すると、机の上に乗っていた夕が天に近付き、満面の笑みで手を差し出した。

「俺、向葵 夕!高校2年の保健委員だ。よろしくな!!」

「はいっ!」

二人は固い固い握手を交わした。

(生徒会…一体これからどんな生活が待っているんだろう…)

期待と不安を抱えた天はうきうきしながら散らばった書類や資料をまとめ、翔に渡した。

「先輩っ!これ最後の仕事です!」

「なっ!?なんだってええぇえ!?」

★続く★

稲葉先輩が大好きな天↓↓
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をついたのは……

hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。 幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。 それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。 そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。 誰がどんな嘘をついているのか。 嘘の先にあるものとはーー?

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...