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11 強めのクマ
しおりを挟む夜中、カゲロウは店主から得た情報を頼りに、そのまま国を出て北を目指し走る。陰纏いを使い、昼でも隠密な行動をとれるカゲロウではあるが、調査は明るい時間よりも人目につかない夜の方が都合がいい。一度報告に戻ろうかとも思ったが、シュガーから与えられた時間にも余裕があり、確実な状況変化を知るために自身の判断で動いている。
(先ほどのバーで腹になにか入れておけばよかったな)
アヴァロンヘイム王国の国境へ向かう道中、森に差し掛かりカゲロウは食事をとることにした。懐から携帯食料として常備している小判型の干し肉を手にし、口に放り込み、体力回復ポーションで流し込む。もちろん任務中であるため、走りながら食べる。
(やはり拙者が作った干し肉はうまい、今度主にも食べてもらいたいな。……いやいや、拙者のこんな下卑な物を口にさせるなど……いや、しかし……。)
夜中の森には血に飢えた獣もいるが、周辺探知能力に優れているカゲロウは余裕で遭遇を回避できる。この森の中をそんな平和な考えで走るやつはこの男だけといえるだろう。
そうこうしている間に森を抜け、いまだ遠くにある山の上に城のようなものが見えてきた。その山を抜けるとアヴァロンヘイムの国境に差し掛かるのだが、以前までは無かったものだ。
(あんなものは、見たことなかったな……、なにかキラキラとしたものが……動いている?)
カゲロウはその目標物に向けてさらに走る速度を上げ、徐々に城が見えてくる。山に入山し中腹に差し掛かるころ、忍びとして各地を見てきた男でも見たことがないモンスターと遭遇した。
それは、たしかに各地にいるレアモンスターの形状に似ており、おおよそクマの形をしているが、額には緑色のクリスタルのようなものが埋め込まれている。そして、全身が魔力で覆われたようなキラキラとした光の膜が張られており、獰猛性が見てわかる。
(ゴールドベア……に似ているが……)
本来のゴールドベアは名前の由来になる体毛が金色に輝いているクマ型のモンスターである。基本レベルは低く、ステータスも低い為、逃走能力に優れたモンスターであり、警戒心が高く、あまり遭遇しない。だが、他のレアモンスターと比べるとまだ遭遇しやすい部類ではあり、一般的には”よく見るレアモンスター”である。また、気候や時間帯、フィールド特性に影響がなく出現することもあり、より遭遇しやすいとされている。
カゲロウは異質なそのモンスターの力を図るため、身を隠していた茂みから獣の前に姿を晒す。
自身の前に獲物を捕らえたその獰猛な獣は、こちらの様子を伺うその人物に向け容赦なく咆哮を浴びさせる。出会ってきたヒトはこれだけで戦意を喪失し、いつも全力で逃走する。そうしてゆっくりと追い回し、狩りを道楽としてやってきた。ただ今回遭遇したヒトは違った。
「……グルル」
(俺の魔力が籠った咆哮を無視するようなやつ、少しは楽しめそうだ。)
咆哮を食らわせてもいまだに変わらず様子を見続けているヒトに対し、その熊は続けて攻撃を仕掛けた。全身に魔力を高め、常人では反応ができないほどの速さで襲う自慢の爪での攻撃である。
(終わったな)
クマはそう思っていたが、次の瞬間、世界が反転する。クマの頭部を切断する忍びの一太刀であった。ゴールドベア、もとい、エンダーゴールドベアの最期である。
「所詮、熊は熊。拙者の敵ではない」
カゲロウは振るった小太刀を納刀し、光の粒と消えその場に獣が残したアイテムを確認する。
【エンダーゴールドベアの黄金毛】:ゴールドベアが進化を得た個体、エンダーゴールドベアの体毛。魔力伝導率が高い。
【エンダーゴールドベアのクリスタル】:ゴールドベアが進化を得た個体、エンダーゴールドベアの緑色の宝石。
(……エンダーゴールドベアとは……、このアイテムは主に献上しよう。……褒めて頂けるかな……。)
主からの賞賛に期待を膨らませ、さらに山へと歩みを進める。
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