某国の皇子、冒険者となる

くー

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第2章 魔術師の試練

13. 帝国騎士

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「ルクス?」

「この者を殺すのは少し待ってください、兄上」
「何故だ……」
「私はこの者を使い魔にしようと思います。よろしいでしょうか?」
「賛成できない……コレはおまえを傷つけた。また同じことをするだろう」
「契約で縛ればよいのです。私に手を出したら死ぬ――とか」
「ルクスに手を出す?」
ピシッ――窓ガラスに蜘蛛の巣のような波状のヒビが入った。

「手を出すって…なんだ?」
「あ…兄上……っ!落ち着いてください」
「手を出すって、つまりアレか?アレなのか!?手を出したら死ぬ――どの時点で死ぬんだ?終わってから?じゃあルクスはどうなる!?私の可愛い弟が、私の可愛いルクスが私のルクス――私の私の私の――」
兄上は剣を振り上げた。魔族に止めを刺すために――

「陛下!」
破壊された扉のそばから、兄上を止める低い声が発せられた。
「ルクス・パニック――またしてもルクパニに陥っておられますよ。大きく息を吸って、落ち着いてください」
兄上は振り上げていた腕を下ろした。
「……ありがとう、ラウルス。おまえがいなければ、ルクスに嫌われてしまうところだった」

「ラウルス…?」
「お久しぶりです、ルクス皇子」
ラウルス・アダマース――鈍色の甲冑に身を包んだ、帝国最強の騎士と名高い近衛騎士団団長が膝をつき、俺に臣下の礼を取っている。
「あなたまで……と言うか、おふたりはどうしてこに?」
「あなた方を護るのが私の使命ですから」

ラウルスの身長は、190cm近い身長の兄上よりもまだ高く、195cmをゆうに超える長身だった。青みがかった黒髪は、うしろで一つに束ねられている。声は心地よい低音の美声で、城のメイドたちからはベルベットボイスなどと称されていた。その上整った顔立ちをしているのだが、灰色の瞳は眼光は鋭く、眉間には常に皺が寄っている。そのためか、威圧感を感じずに接することができる者は決して多くはない。

「偶然、用があってこの近くまで来ていたのです。今もここより南の街に隊を駐屯させています。……会議中でした。あなたの兄上である皇帝陛下が突然……」
「ルクスの魔力が、生命力が、小さくなっていくのを感じたのだ!!怖かった……ルクスに何かあったのだ……ルクス、おまえを失ってしまうと考えることすら、私には何よりも恐ろしいのに…………私はいてもたってもいられず、飛び出した!おまえの元に向かうために。どうか間に合ってくれと、祈りながら――」

「……と、いうわけなのです」

「兄上――私のために……ありがとうございます」
「弟を守るのは、兄として当然だ!――ああ!かわいそうなルクス!首の傷を見せてくれ。すぐに治してやるからな」

兄上は籠手と手袋を外し、手のひらを魔族に噛みつかれた跡の残る俺の首に当てた。温かな魔力が傷を癒し、力強い生命力が流し込まれてくるのを感じる。

兄上は魔族を一撃で倒す程の剣の腕を持ち、また、攻撃、回復問わず多くの魔法を使いこなす――天才だった。




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