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第4章 古代遺跡探索行
1. 思考の海
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気温の高い日が徐々に続くようになっていた。
空は青く、高くひろがっている。季節は夏を迎えていた。
だが、俺の心は今日の空模様と同じように晴れ渡ってはいない。
しばらくの間忘れていたことを、思い出してしまったせいだ。
『異世界より招かれし者よ――こんなつまらぬところで、おまえは死ぬのか?』
アラゴグにやられかけ、意識が朦朧としていたときに出会った謎の男――
俺が転生者だと知っていた。
あの男は何者なのだろう。何故知っているのだろう。俺の転生に関わっているのだろうか……
どれだけ考えても、わからないことばかりだ。
「ていうか俺、考えるの嫌いなんだよな……」
こんな日は町に気分転換に出かけたいなぁ……
コンコン――部屋の扉をノックする音が響いた。この音はウィルかなぁ。
「ノア、修行中のとこ悪いな」
当たり、ウィルだ。
「……いや、サボり中だった」
「それならちょうどよかった。きみに来客だ」
「来客――?」
「ああ、冒険者ギルドからの使者と名乗っている。きみに名指しの依頼が来ているらしいぞ」
ギルドからの使者の話は、某要人である依頼人から俺への指名依頼があるということだった。
「先方が俺を指名されているということですか」
「はい。アラゴグスレイヤーとして名高いノア・スターク様にしか任せられない、重要な案件とのことです」
魔獣殺し――アラゴグスレイヤー・ノア。……とんでもない二つ名が付けられてしまっていた。
先月、ギルドを挙げて大規模編成のモンスター討伐が行われ、魔獣アラゴグ討伐は無事達成された。そして俺は今やアラゴグの息の根を止めた凄腕冒険者として、冒険者たちの尊敬を集める存在である。
だがちょっと待ってくれ。実は、俺じゃない。いや、やったのは俺かもしれないが、俺の力では全然ない。
謎の男――俺が転生者だと知っていたあの男がいなければ、俺はアラゴグにやられていたに違いないのだ。
しかし、仲間たちにも手伝ってもらい、漆黒のローブに身を包んだ魔法詠唱者の目撃情報を聞き回ったが、誰も男を知らず、見てもいなかった。
そのため、俺はブラウフォンスの冒険者ギルド一の魔術師、とまで目されている。
勘違いで冒険者としての名が上がっても嬉しくない。名前だけがひとり歩きしてるだけじゃないか……
「ノア?どうかしましたか?」
考え込んでしまっていたせいだろうか。エトワールが心配そうな面持ちで顔を覗き込んできた。
「なんでもないよ、大丈夫」
「今日はあんまり元気ないね、ノア。変なものでも食べちゃった?」
「ノアをガサツなお前と一緒にするな」
ジンとウィルも、いつも俺を気にかけてくれている。
俺には頼りになる仲間たちがいる。だからきっと、大丈夫――
「依頼の内容は依頼人より直接お話しされるとのことですので、至急ブラウフォンスの冒険者ギルドまでお越しください」
伝言を伝え終え、使者は屋敷から去っていった。
名指し――か……
もしかして……兄上?
兄上だったら俺は、嬉しいんだろうか?
それとも……
空は青く、高くひろがっている。季節は夏を迎えていた。
だが、俺の心は今日の空模様と同じように晴れ渡ってはいない。
しばらくの間忘れていたことを、思い出してしまったせいだ。
『異世界より招かれし者よ――こんなつまらぬところで、おまえは死ぬのか?』
アラゴグにやられかけ、意識が朦朧としていたときに出会った謎の男――
俺が転生者だと知っていた。
あの男は何者なのだろう。何故知っているのだろう。俺の転生に関わっているのだろうか……
どれだけ考えても、わからないことばかりだ。
「ていうか俺、考えるの嫌いなんだよな……」
こんな日は町に気分転換に出かけたいなぁ……
コンコン――部屋の扉をノックする音が響いた。この音はウィルかなぁ。
「ノア、修行中のとこ悪いな」
当たり、ウィルだ。
「……いや、サボり中だった」
「それならちょうどよかった。きみに来客だ」
「来客――?」
「ああ、冒険者ギルドからの使者と名乗っている。きみに名指しの依頼が来ているらしいぞ」
ギルドからの使者の話は、某要人である依頼人から俺への指名依頼があるということだった。
「先方が俺を指名されているということですか」
「はい。アラゴグスレイヤーとして名高いノア・スターク様にしか任せられない、重要な案件とのことです」
魔獣殺し――アラゴグスレイヤー・ノア。……とんでもない二つ名が付けられてしまっていた。
先月、ギルドを挙げて大規模編成のモンスター討伐が行われ、魔獣アラゴグ討伐は無事達成された。そして俺は今やアラゴグの息の根を止めた凄腕冒険者として、冒険者たちの尊敬を集める存在である。
だがちょっと待ってくれ。実は、俺じゃない。いや、やったのは俺かもしれないが、俺の力では全然ない。
謎の男――俺が転生者だと知っていたあの男がいなければ、俺はアラゴグにやられていたに違いないのだ。
しかし、仲間たちにも手伝ってもらい、漆黒のローブに身を包んだ魔法詠唱者の目撃情報を聞き回ったが、誰も男を知らず、見てもいなかった。
そのため、俺はブラウフォンスの冒険者ギルド一の魔術師、とまで目されている。
勘違いで冒険者としての名が上がっても嬉しくない。名前だけがひとり歩きしてるだけじゃないか……
「ノア?どうかしましたか?」
考え込んでしまっていたせいだろうか。エトワールが心配そうな面持ちで顔を覗き込んできた。
「なんでもないよ、大丈夫」
「今日はあんまり元気ないね、ノア。変なものでも食べちゃった?」
「ノアをガサツなお前と一緒にするな」
ジンとウィルも、いつも俺を気にかけてくれている。
俺には頼りになる仲間たちがいる。だからきっと、大丈夫――
「依頼の内容は依頼人より直接お話しされるとのことですので、至急ブラウフォンスの冒険者ギルドまでお越しください」
伝言を伝え終え、使者は屋敷から去っていった。
名指し――か……
もしかして……兄上?
兄上だったら俺は、嬉しいんだろうか?
それとも……
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