某国の皇子、冒険者となる

くー

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第4章 古代遺跡探索行

11. 皇帝陛下

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「問題大アリ!です!ほんとうにやめてください!」
「すまない、ラウルス……こんな面白いことを大事な弟に秘密にしておくなんて、私にはできないのだ」
「兄上、無理にとは……」

常に沈着冷静なラウルスらしからぬ態度に、相当な暴露である思われるが、兄上はこうと決めたら変えない人だった。

「いいから聞くのだ、ノア。コイツの趣味はな…少女向け小説――少女が主人公の小説を書くことなんだ」
「や……っ!やめろおおぉぉ!!」
ラウルスの怒りの叫びが遺跡に反響した。

「どうだ!驚いただろ?っていうかこの厳つさで少女向け小説って…」
たしかに、驚いた。ラウルスの方を見ると、今にも火を噴かんばかりに真っ赤になっている。
「ちがう!これはちがうのです皇子…いや、ノア!私には病床の妹がおりまして、彼女のためにと……」
「そして……この男は小説を書く面白さに目覚めてしまい、妹が元気になった今もまだ執筆を続けているのだ」
「……っ!」
「妹の病はただのきっかけだったにすぎない。おまえには素養があるのだ、ラウルスよ。さらなる目覚めが生じぬことを祈るよ」

「さらなる目覚めとは……いえ、やはり仰らなくて結構です」
「ぜひ聞いておけ、わが友よ。私が危惧しているのはな……執筆を続けるうち、おまえが自分自身が少女であればと望むようになるのではないか、ということだ!頼むから、ドレスを着て出仕だけはしないでくれよ。笑いを堪えきれず、仕事ができなくなってしまう」
あははははっ!という、兄上の笑い声が遺跡の静寂の中にこだまする。
ラウルスは何かを堪えるように、拳を握り込んでいた。

「今日のことは忘れませんからね、陛下……どうぞ、お楽しみに」
「おお、怖い怖い」

兄上への向けて発散できない怒りの代用品になったモンスターは、一瞬で灰塵へと帰すのだった。


「そういえば、エトワールはエルフだろう。何歳なのだ?」
「……!」
それは俺も前からずっと気になっていた。
「まだ今年で九十三歳になります」
「ふーん…エルフの寿命は300年、人間は大体80年だから、人間に換算するとエトワールは二十五歳くらいってことか…なんだ、私より五歳も年下だな。そんな気がしていたのだ」
「恐れ入ります……」
聞きづらいことをずけずけと聞き出し、自分に都合よく解釈する兄上。最高権力者である皇帝の辞書には、遠慮や謙遜という文字は載っていないのかもしれない……


雑談を続けながらもモンスターを蹴散らしつつ、遺跡の仕掛けをも事も無げに解いていく兄上。

疑問に思った途端、解かれていく遺跡の仕掛けたち。古代人が生きていたら、苦労して考えた仕掛けをあっさりと解かれてしまったことを、地団太を踏んで悔しがるのだろうか……

手持ち無沙汰だった俺は、通路の壁になんとはなしに触れた。前世で遊んだRPGゲームを懐かしみながら。
謎が解けたときの達成感、爽快感が好きだった――今日は兄上に全部持ってかれてるけど、俺だっていつかきっと――

カチリ――
「ルクス……っ!」
何かの作動音が聞こえた直後、兄上に背後からぎゅっと抱きしめられる。

そして、転移魔法が発動した。


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