某国の皇子、冒険者となる

くー

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第4章 古代遺跡探索行

17. 約束

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「遅かったですね。何かあったのではないかと心配しましたよ」
「大丈夫だ。問題ない」
「……そうですか?」
「みんな、俺たちを待っててくれたの?」

よく見ると、ウィルとジンは服が破れたりところどころ傷を負っていたり……疲弊の色も濃いようだった。

「はい。三か所の仕掛けをすべて発動させねば、最奥の扉は開かぬ仕組みとなっていたと推測しております。陛下たちが現れると同時に、あの扉が開いたのを、この目で確認しております」
「ざっと調べたところ、扉の先に罠はなさそうです。先へ進みましょう」


そして、俺たちはついに遺跡の最深部に到達したのだ!

「す、すごい…」
最深部の小部屋は金銀宝石などの財宝で溢れかえっていた。
宝箱がいくつも置かれている。中にはいったいどんな貴重なものが入っているのだろうか。

「やりましたね!兄上!」
「ああ…ノアのおかげだ」

「まったく…陛下ともあろう方が、こんなに消耗されて……あなたの調子がいつもと違うので、みな戸惑っていますよ」
「……私にだって、たまにはそんなときもある」

ラウルスは溜め息を吐いた。
「重症のようですね……ノア、何があったのですか」
ラウルスの背後で首と手を左右に振る兄上。すごく嫌そうな顔だ……

「え~~っと……遺跡探索って、思ってたより大変だったっていうか……」
「ふむ……あなた方の辿ったのは私たちの辿った道よりも、困難であった、ということでしょうか」
「ま…そんなとこかな」

兄上は覇気がないながらも、普段通りに巧みに魔法を使いこなし、亜空間召喚魔法を用いて部屋いっぱいの財宝を回収していた。


ダンジョンの入り口に転移魔法で戻ったときには日はとうに落ちていて、辺りは真っ暗だった。

「では、報酬の残りは後ほど、ギルドを通してお渡しする手はずになっております。私たちはここより帝都に戻りますので、ここでしばしのお別れとなります」

「さらばだノア。冒険者として、しっかりな」

背を向けて去ってゆく兄上の姿に、どうしようもなく寂しさが溢れ――
「あ、兄上!!」
思わず呼び止めてしまっていた。

どうしよう……なんて言おう……考えろ考えろ……

「……あの、このローブも杖も、すごく使い心地がよかったです。魔力が体中に溢れてきて……こんな希少なもの、ほんとうに私がいただいてもいいのでしょうか?」
「杖が持ち主を選ぶこともあるという……問題なく扱えているおまえを私は誇りに思うよ」
「こんなよいものをいただくばかりでは……私からも兄上に何かお返ししたいのですが、どういったものがよろしいでしょうか?」

「お返し?」
「その…冒険者は副業でクラフターも嗜む者が多いと聞きますので、私も何か作ってみようかなと……」
「ノアの手作り…!?私に……くれるのか……?」
「は、はい!うまくできないかもしれませんが……何かリクエストがあればと……」
「ノアの手作りならば、なんでも嬉しいに決まっている!……だができれば、肌身離さず身に着けることができるものだと、もっと嬉しい」

渡す前からこんなに喜んでくれるなんて……ハードルが上がった気もするが、やる気も上がった。
「わかりました!楽しみにしていてくださいね」
「うむ!!待っているぞ!!」

「陛下……また、心の汗が出ておりますよ」
白いハンカチを兄上にスッ…と差し出すラウルス。紳士だ……

「心の汗か……十年ぶりだ……こんなことは」
「……そういうことにしておきましょう」


兄上たちとの別れを惜しみながらも、俺たち四人は転移魔法で師の屋敷に戻った。

振り返ってみると、大変な一日だった。ああ、長かった……

特に……ルクスの存在が、一番の気がかりだ。
正直、整理がつくまで眠っていてくれると助かるんだけど――


「せっかく遊びに来たのに、なんだか浮かない顔だね、ノア?」

屋敷の居間には、懐かしい友の姿があった。





第4章・完


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