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第7章 命の代償
6. 魔族の隠れ里
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「我らの魔法を唱えし者よ。何用だ?」
扉の奥からこちらへ問いかける声がきこえてきた。低い声の男性だった。
「俺だよ!二百年前にここを出たジンだ。そっち側からはこっちが見えているのも知ってるぜ」
「ジン?……知ってるか?」
「俺が子どもの頃、里はずれにそんな名前のやつがいたような……」
「二百年前か……まあ、その漆黒の角と翼は本物に違いないが……他の者たちは?」
「俺の仲間だ。ひどい怪我を負ってるやつがいて、里の治癒師に診てもらいたいんだ」
「ふむ……たしかに、ひどい呪いの気配がする。しかし、その男は相当な術者だな……まあ、その呪いを受けていては我らの脅威ではないか……」
「みんな俺の友達なんだ。脅威になんてならないさ」
「……二百年間前に里を捨てたきりの貴様の言葉など、信ずるに足りぬが……まあいいだろう」
扉が開いた。扉の内側には武装した三人の魔族がいた。みな背が高く、ジンと同じように漆黒の羽根と角を持っており、目は赤く光っている。
「客人たちよ、我らの里へようこそ」
50メートルはあろうかという岩を掘って造られた通路を抜けると、そこには集落があった。
四方を山に囲まれており、平地や山の斜面に家や風車が建ち並び、畑が作られている。
「平和そうだね」
「なんにもないからね~」
ちらほらと人をみかけたが、みな普段のジンのように人間と変わらない姿をしている。
「魔族の里でも、みんな人間と変わらない姿で暮らしているんだね」
「昔はそうでもなかったって聞くけど、俺が生まれたときはもうこんなかんじだったよ……。ここより北に人間のけっこう大きな都市があるんだけど、そこと争いごとがあったみたい。それからは、里に住みたければひっそりとつつましく暮らすことが掟になった。人間の血は貴重なんだけど、この三人は里の警備を担当してるから特別なんだろうね」
「部外者に治癒師を襲われてはならんからな」
三人の魔族はずっと後をついて来ていた。
「信用されていませんね……」
「ここってジンの故郷なのにね……」
「うぅ…」
「魔族にとっても二百年は長いんだろうな」
「もうすぐ着くよ。あの家だ」
通路を抜けて十分ほど歩いた小高い丘に、治癒師の家はあった。
石造りの家は三階建てで、庭には畑があり、野菜が実っていた。
コンコンコン――
ジンがドアを叩き、しばらくすると返事があった。
「はい。どちらさまでしょうか――」
「あー…ジンだけど……ミーカ?」
「……ジン?」
ガチャリ――
扉から現れたのは、眼鏡をかけた神経質そうな男性だった。
扉の奥からこちらへ問いかける声がきこえてきた。低い声の男性だった。
「俺だよ!二百年前にここを出たジンだ。そっち側からはこっちが見えているのも知ってるぜ」
「ジン?……知ってるか?」
「俺が子どもの頃、里はずれにそんな名前のやつがいたような……」
「二百年前か……まあ、その漆黒の角と翼は本物に違いないが……他の者たちは?」
「俺の仲間だ。ひどい怪我を負ってるやつがいて、里の治癒師に診てもらいたいんだ」
「ふむ……たしかに、ひどい呪いの気配がする。しかし、その男は相当な術者だな……まあ、その呪いを受けていては我らの脅威ではないか……」
「みんな俺の友達なんだ。脅威になんてならないさ」
「……二百年間前に里を捨てたきりの貴様の言葉など、信ずるに足りぬが……まあいいだろう」
扉が開いた。扉の内側には武装した三人の魔族がいた。みな背が高く、ジンと同じように漆黒の羽根と角を持っており、目は赤く光っている。
「客人たちよ、我らの里へようこそ」
50メートルはあろうかという岩を掘って造られた通路を抜けると、そこには集落があった。
四方を山に囲まれており、平地や山の斜面に家や風車が建ち並び、畑が作られている。
「平和そうだね」
「なんにもないからね~」
ちらほらと人をみかけたが、みな普段のジンのように人間と変わらない姿をしている。
「魔族の里でも、みんな人間と変わらない姿で暮らしているんだね」
「昔はそうでもなかったって聞くけど、俺が生まれたときはもうこんなかんじだったよ……。ここより北に人間のけっこう大きな都市があるんだけど、そこと争いごとがあったみたい。それからは、里に住みたければひっそりとつつましく暮らすことが掟になった。人間の血は貴重なんだけど、この三人は里の警備を担当してるから特別なんだろうね」
「部外者に治癒師を襲われてはならんからな」
三人の魔族はずっと後をついて来ていた。
「信用されていませんね……」
「ここってジンの故郷なのにね……」
「うぅ…」
「魔族にとっても二百年は長いんだろうな」
「もうすぐ着くよ。あの家だ」
通路を抜けて十分ほど歩いた小高い丘に、治癒師の家はあった。
石造りの家は三階建てで、庭には畑があり、野菜が実っていた。
コンコンコン――
ジンがドアを叩き、しばらくすると返事があった。
「はい。どちらさまでしょうか――」
「あー…ジンだけど……ミーカ?」
「……ジン?」
ガチャリ――
扉から現れたのは、眼鏡をかけた神経質そうな男性だった。
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