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第7章 命の代償
15. キマイラ
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そのモンスターは、里の伝承にあったのと同じ異形の姿をしていた。
人の背丈の倍以上の体高がある巨大な獅子の体から、鳥の翼が生えている。背から出ていている瘤のような膨らみ――目を凝らして見てみると、それは山羊の頭だった。獅子の尾は蛇の頭になっており、鎌首をもたげこちらを威嚇している。
山羊の嘶きが聞こえたかと思うと、辺りに濃い魔法の気配が漂い始めた。
「もう始まってる!」
ニケがすぐに呪文の詠唱を開始した。
電撃の雨が降り注ぐ。
俺は魔力の気配でどこに雷撃が落ちるかある程度わかるけど、他のみんなは!?
ウィルは盾を頭上に翳し、雷撃を跳ね返していた。
「ノア!うしろ!!」
振り返ると、獅子の鋭い牙を持つ腕が振り上げられ、振り下ろさんとしているところだった。
――間に合うか!?
魔法障壁を発動させようと杖に魔力を込めたが――
この杖じゃ、だめだ……
せめて致命傷を避けるために腕を前に出し、衝撃に備える。
予期していた前方からの衝撃ではなく、側面からの衝撃とともに、ふっ――とからだが浮いた。
「大丈夫!?ノア!」
「ジン……!」
ジンに抱きかかえられ、宙に浮いていた。間一髪でジンに助けてもらったのだ。
「ありがと!助かった!」
「ケガがなくてよかった……っ!あそこに降りよう」
それからもモンスターの猛攻は続いた。
獅子は口から炎の息を吐き、蛇は毒の霧を吐く。山羊は雷撃魔法に加えて、回復魔法まで使っている。
蛇の毒はニケの回復魔法で解毒され、なんとか持ちこたえてはいるが限界が見え始めている。長びくほどこちらが不利になることは明白だった。
「このままじゃきりがない。一気に畳み掛けるぞ!」
「了解!」
エトワールの放った矢が山羊の目に命中し、魔物は痛みに悲鳴を上げた。
その隙を見逃さず、俺とジンはほぼ同時に攻撃魔法を放った。
「アイシクルファング!」
「エアリアルブレイド!」
氷の牙はキマイラの吐く炎の息と拮抗している。押し負けないよう、俺はさらに魔力を込めた。
ジンの放った風の刃が、蛇の尾を切断するのと、ウィルが跳躍し山羊の頭を切り落とすのはほぼ同時だった。
「あと少しだ!」
物理攻撃職の三人が、力を振り絞ってモンスターに攻撃を浴びせかける。
――だが、獅子の皮膚は厚く、思ったように攻撃が入らない。生半可な攻撃は獅子の翼によって防がれてしまっていた。
まずい……
氷魔法が、キマイラの炎の息に徐々に押されている。
あ、熱い――
「ホーリーヴェール!」
「ニケ!」
「防御は僕に任せて!ノアは攻撃を!」
「わかった!」
どの魔法がいちばん効果的なんだろう……
「ノア!電撃魔法を!モンスターの動きを一瞬でいい!止めてくれ」
ウィル……そうかっ!
俺はすぐに詠唱を始めた。
キマイラはニケの魔法にはブレス攻撃は敵わないと悟ると、息を吐くのを止め、ニケを獰猛な牙で噛み殺そうと構えた。
ニケ……っ!
「させるかっ!」
ニケを助けたのは、ジンだった。
「っ……!」
ニケを腕に抱えたまま、地面を転がる。モンスターの攻撃が少しかすってしまったのかもしれない。
「こっちです!」
エトワールの矢は、獅子の目を射抜くよう正確に放たれたが、モンスターは紙一重で躱した。
「素早いですね……」
今、モンスターの近くに仲間はいない。
――ここだ!
人の背丈の倍以上の体高がある巨大な獅子の体から、鳥の翼が生えている。背から出ていている瘤のような膨らみ――目を凝らして見てみると、それは山羊の頭だった。獅子の尾は蛇の頭になっており、鎌首をもたげこちらを威嚇している。
山羊の嘶きが聞こえたかと思うと、辺りに濃い魔法の気配が漂い始めた。
「もう始まってる!」
ニケがすぐに呪文の詠唱を開始した。
電撃の雨が降り注ぐ。
俺は魔力の気配でどこに雷撃が落ちるかある程度わかるけど、他のみんなは!?
ウィルは盾を頭上に翳し、雷撃を跳ね返していた。
「ノア!うしろ!!」
振り返ると、獅子の鋭い牙を持つ腕が振り上げられ、振り下ろさんとしているところだった。
――間に合うか!?
魔法障壁を発動させようと杖に魔力を込めたが――
この杖じゃ、だめだ……
せめて致命傷を避けるために腕を前に出し、衝撃に備える。
予期していた前方からの衝撃ではなく、側面からの衝撃とともに、ふっ――とからだが浮いた。
「大丈夫!?ノア!」
「ジン……!」
ジンに抱きかかえられ、宙に浮いていた。間一髪でジンに助けてもらったのだ。
「ありがと!助かった!」
「ケガがなくてよかった……っ!あそこに降りよう」
それからもモンスターの猛攻は続いた。
獅子は口から炎の息を吐き、蛇は毒の霧を吐く。山羊は雷撃魔法に加えて、回復魔法まで使っている。
蛇の毒はニケの回復魔法で解毒され、なんとか持ちこたえてはいるが限界が見え始めている。長びくほどこちらが不利になることは明白だった。
「このままじゃきりがない。一気に畳み掛けるぞ!」
「了解!」
エトワールの放った矢が山羊の目に命中し、魔物は痛みに悲鳴を上げた。
その隙を見逃さず、俺とジンはほぼ同時に攻撃魔法を放った。
「アイシクルファング!」
「エアリアルブレイド!」
氷の牙はキマイラの吐く炎の息と拮抗している。押し負けないよう、俺はさらに魔力を込めた。
ジンの放った風の刃が、蛇の尾を切断するのと、ウィルが跳躍し山羊の頭を切り落とすのはほぼ同時だった。
「あと少しだ!」
物理攻撃職の三人が、力を振り絞ってモンスターに攻撃を浴びせかける。
――だが、獅子の皮膚は厚く、思ったように攻撃が入らない。生半可な攻撃は獅子の翼によって防がれてしまっていた。
まずい……
氷魔法が、キマイラの炎の息に徐々に押されている。
あ、熱い――
「ホーリーヴェール!」
「ニケ!」
「防御は僕に任せて!ノアは攻撃を!」
「わかった!」
どの魔法がいちばん効果的なんだろう……
「ノア!電撃魔法を!モンスターの動きを一瞬でいい!止めてくれ」
ウィル……そうかっ!
俺はすぐに詠唱を始めた。
キマイラはニケの魔法にはブレス攻撃は敵わないと悟ると、息を吐くのを止め、ニケを獰猛な牙で噛み殺そうと構えた。
ニケ……っ!
「させるかっ!」
ニケを助けたのは、ジンだった。
「っ……!」
ニケを腕に抱えたまま、地面を転がる。モンスターの攻撃が少しかすってしまったのかもしれない。
「こっちです!」
エトワールの矢は、獅子の目を射抜くよう正確に放たれたが、モンスターは紙一重で躱した。
「素早いですね……」
今、モンスターの近くに仲間はいない。
――ここだ!
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