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第9章 嵐の前に
4. 魔力
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ニケ……大丈夫かな……
昨日、トゥールカから帰って城へと帰ってきて以来、ニケは客室で休んでいる。
『僕は大丈夫。だから、少し一人にしておいてほしい』
そう言われてしまったが、無理にでもそばにいたほうがよかったのかな……
ニケを除いた俺たちは、城の訓練場にいた。朝の清々しい空気が心地よい。
訓練場には人型の的がいくつか設置されている。この的には特殊な魔法がかけられていて、耐久性に優れていた。
実戦を想定して技を繰り出し、連撃中に生じる継ぎ目や隙の確認をする。そうして少しずつ、戦闘時の動きをより洗練させていくのだ。
みんな……がんばってるな。
ウィル、エトワール、ジンの三人は、それぞれの得物を手に的へ次々と攻撃を繰り出している。
俺もがんばらないと……!
杖に魔力を込め、呪文を唱える。
「ファイアボール!」
ゴオオォォ!!
火球が当たった的が勢いよく燃え上がった。
あれ?なんだろう――すごく調子がいい。
前回魔法を使ったのは、テンプロの塔でキマイラと戦った時以来だ。
それからは修行をどころか魔法を使いさえしていないし、杖も魔族の里で購入した同じものを使っているのに……
その後も様々な魔法の訓練を続けた。
明らかに魔法の威力が向上している。それに、以前ならば連続して魔法を使えば疲労を感じてしまうのだが、今は疲れているどころか、からだ中に魔力が漲っている。
不可思議な変化に考えを巡らせていると、にわかに訓練場がざわつき出した。
騒ぎの中心はやはり……
「ノア!」
「兄上!」
「こうして顔を合わせるのは二日ぶりだな。元気にしていたか?」
兄上は城に帰還してからというのも、ゆっくりと食事を取る時間さえなく、仕事漬けの日々を送っていると聞いている。
大丈夫だろうか……
「はい!体調は万全です。兄上の調子はいかがでしょうか?」
「くだらん仕事が山積みでうんざりしていたのだが……」
兄上は手袋を外し、俺の頬を両手で包み込むようにそっと触れてきた。
やっぱり、兄弟なんだな――鏡に映ったように同じ色の青い瞳が、やさしくこちらを覗き込んでいる。
「こうしてノアの顔を見たら疲れなど、どこかへ飛んでいってしまったぞ!」
「ふふっ、俺も兄上の元気そうな顔が見れて、嬉しいです」
「そうか……!ノアも私と同じなのだな!」
「はい!」
「……ゴホン。兄弟仲睦まじくは大変結構なのですが、陛下はそろそろ執務にお戻りいただきたく……」
「ラウルス!……すまなかった」
「わかっていただけまして、何よりです」
「おまえは私を弟のように想ってくれているのだったな……それなのに、私とノアがふたりだけで親睦を深めているのを見るのは辛かっただろう……気づいてやれずにすまなかった」
「いえ……その……」
「どうした?」
「……私は先に執務室に戻っておりますので、陛下もなるべく早くお戻りになってください」
「ラウルス?……私は何か、おかしなことを言ってしまったのだろうか?」
こころなしかしょんぼりと肩を落とす兄上……
「そんなことはないですよ、兄上。ラウルスは照れ屋さんなのですよ」
「……!そうか。気を悪くしたわけでないのならよいのだ」
兄上に笑顔がもどった。よかった……
昨日、トゥールカから帰って城へと帰ってきて以来、ニケは客室で休んでいる。
『僕は大丈夫。だから、少し一人にしておいてほしい』
そう言われてしまったが、無理にでもそばにいたほうがよかったのかな……
ニケを除いた俺たちは、城の訓練場にいた。朝の清々しい空気が心地よい。
訓練場には人型の的がいくつか設置されている。この的には特殊な魔法がかけられていて、耐久性に優れていた。
実戦を想定して技を繰り出し、連撃中に生じる継ぎ目や隙の確認をする。そうして少しずつ、戦闘時の動きをより洗練させていくのだ。
みんな……がんばってるな。
ウィル、エトワール、ジンの三人は、それぞれの得物を手に的へ次々と攻撃を繰り出している。
俺もがんばらないと……!
杖に魔力を込め、呪文を唱える。
「ファイアボール!」
ゴオオォォ!!
火球が当たった的が勢いよく燃え上がった。
あれ?なんだろう――すごく調子がいい。
前回魔法を使ったのは、テンプロの塔でキマイラと戦った時以来だ。
それからは修行をどころか魔法を使いさえしていないし、杖も魔族の里で購入した同じものを使っているのに……
その後も様々な魔法の訓練を続けた。
明らかに魔法の威力が向上している。それに、以前ならば連続して魔法を使えば疲労を感じてしまうのだが、今は疲れているどころか、からだ中に魔力が漲っている。
不可思議な変化に考えを巡らせていると、にわかに訓練場がざわつき出した。
騒ぎの中心はやはり……
「ノア!」
「兄上!」
「こうして顔を合わせるのは二日ぶりだな。元気にしていたか?」
兄上は城に帰還してからというのも、ゆっくりと食事を取る時間さえなく、仕事漬けの日々を送っていると聞いている。
大丈夫だろうか……
「はい!体調は万全です。兄上の調子はいかがでしょうか?」
「くだらん仕事が山積みでうんざりしていたのだが……」
兄上は手袋を外し、俺の頬を両手で包み込むようにそっと触れてきた。
やっぱり、兄弟なんだな――鏡に映ったように同じ色の青い瞳が、やさしくこちらを覗き込んでいる。
「こうしてノアの顔を見たら疲れなど、どこかへ飛んでいってしまったぞ!」
「ふふっ、俺も兄上の元気そうな顔が見れて、嬉しいです」
「そうか……!ノアも私と同じなのだな!」
「はい!」
「……ゴホン。兄弟仲睦まじくは大変結構なのですが、陛下はそろそろ執務にお戻りいただきたく……」
「ラウルス!……すまなかった」
「わかっていただけまして、何よりです」
「おまえは私を弟のように想ってくれているのだったな……それなのに、私とノアがふたりだけで親睦を深めているのを見るのは辛かっただろう……気づいてやれずにすまなかった」
「いえ……その……」
「どうした?」
「……私は先に執務室に戻っておりますので、陛下もなるべく早くお戻りになってください」
「ラウルス?……私は何か、おかしなことを言ってしまったのだろうか?」
こころなしかしょんぼりと肩を落とす兄上……
「そんなことはないですよ、兄上。ラウルスは照れ屋さんなのですよ」
「……!そうか。気を悪くしたわけでないのならよいのだ」
兄上に笑顔がもどった。よかった……
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