某国の皇子、冒険者となる

くー

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第9章 嵐の前に

5. 相談

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「兄上、お忙しいところ申し訳ないのですが、少し相談に乗ってもらえないでしょうか?」
「もちろんだ!おまえの悩みを解消する手助けと比べたら、国政など取るに足らない些末事だ!」

些末事……
ラウルスがこの場にいたら、静かに怒りのオーラを放つんだろうなあ……なるべく手短に済まさないと。

「立ち話もなんだし、私の部屋で話そう」
「え…でも……」
「時間のことなど気にするな。朝から仕事漬けだったんだ。少しくらい休憩をとっても許されるはずだ」



皇帝のために造られた贅を尽くした部屋――

……すこし緊張してしまうな……

一流のお茶と茶菓子でもてなされ、兄上は執事に退室を促した。部屋から人の気配がなくなったので、俺は話を切り出した。

「魔法の修行を積んだというわけではないのに、何故だか以前よりも魔法の威力が増しているようなのです」
「ふむ……」
「気のせいでしょうか……」
「……いや。気のせいではない」
「と言うと?」

兄上は一拍置いて、こう続けた。

「おまえから私の魔力を感じる……おそらく、おまえの魂を今のからだに戻したときだ。その際に私の魔力がおまえのに入り込んでしまったのだろう」
「そんなことが……」
「もちろん、意図したわけではない。あの魔法を使うのは初めてで、その上相当複雑な詠唱を唱えねばならなかった。……いや、言い訳はいかんな。すまない、ノア……私の落ち度だ。何か体調に変化などは出てはいないか?」
「いえ……からだはなんともありません。むしろ、いつもより調子がいいくらいです」
「……うーむ。やはりおまえは、特異な性質を持っているようだな」
「え?」
「おまえは……いや……なんでもない」

兄上が言い淀むなんて、珍しい。

「何か気づいたことがあれば、なんでもおっしゃってください」
「……そうだ。おまえに渡すものがあったのだ」

そう言って兄上は席を立ち、隣室へと姿を消してしまった。

はぐらかされた……?
一体なんだったんだろうか……



隣室から戻った兄上が手に携えていたのは、古めかしい箱だった。
「開けてごらん」

「これは……」
箱の中に入っていたのは杖だった。

「我が家が所有する杖の中で最も強力な杖だ。以前に渡したものよりはわずかに劣るだろうが、この杖も申し分ない力を秘めている。今後はこの杖を使うように」
「受け取れません。以前いただいたとても貴重な杖を俺は……」
サナトリオルムに騙し取られてしまった。
帝国の国宝であるほど貴重な杖を、まんまと俺は……

「是が非でも受け取ってもらうぞ。この杖はおまえの命を守るために必要なものだ」

兄上から渡された杖には、美しく煌く赤い魔石が埋められている。初めて手にしたと言うのに、驚くほど手に馴染んだ。それを伝えると、兄上は嬉しそうに頷いた。

「我が家に代々伝わる杖だ。私の弟であるおまえに合わぬわけはない」

「兄上……ありがとうございます」

この杖に相応しい魔術師となれるよう、日々精進しなければ……



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