140 / 142
最終章 死と光
5. 輪舞の列に我を取り巻け
しおりを挟む
目を灼くような強い光を防ぐため、腕を顔の前に翳し目蓋をきつく瞑った。
あまりに強く眩い光は、サナトリオルム自身から発せられている。魔法の使える仲間たちは咄嗟に魔法障壁を展開して未知の脅威に備えた。厄介な攻撃魔法であれば、命に関わる……
「皆、無事か!?サナトリウムは――どうなっている!?」
皆、強い光に目が眩んでしまい、状況を把握できないでいた。
「サナトリウムから強い光が発せられる前、奴の身体は我々の総攻撃によって崩れ落ちる寸前でした」
「ああ、私にもそう見えていたが……待て、あれは何だ!?」
兄上が指差した場所には魔石が青く光る杖と、小さな塊が地面に影を作っていた。
「グラヴィス!不用意に近づいては……もう少しすれば目も慣れて……」
ラウルスの制止を聞かず、兄上は謎の物体に向かって歩み寄って行った。
「おお……これは――!」
兄上は、地面からそれを拾い上げた。
――いや、抱き上げた。
それは、赤ん坊だった。
ふぎゃあ、ふぎゃあ――
兄上の腕の中で、赤子は泣き出した。
「よしよし、元気がいいな」
「兄…上……?」
「グラヴィス……あなたは……」
「ノア、ラウルス……!この子をよく見てくれ!ほら!」
兄上は手に持っている赤子を俺たちに見せた。
「これはルクスだ!ラウルス、おまえならわかるだろう?」
ラウルスは赤子に目をやり、そしてまた兄上に視線を戻した。
「グラヴィス……正気ですか?」
「この瞳の青い色、私やノアとそっくりだ!髪も……ふふっ……まだわかりにくいが赤毛だぞ。そして何よりもこの子はルクスの赤ん坊の頃にそっくり……いや、そのものではないか」
ラウルスは首を横に振った。
「たしかに……その赤子はルクスにあまりにも似ています。サナトリオルムが消えた場所に入れ替わりのようにその子は現れた。これが何を示しているか、理解できないあなたではないでしょう」
「……それがどうしたというのだ」
「グラヴィス……」
「私はこの子を育てるぞ」
「何を莫迦なことを……!」
「この子にルクスの魂を感じる。それだけで私には十分だ」
議論は終わり、兄上は宝物のように腕の中の赤子を抱き、サナトリオルムの居城を後にしたのだった。
こうして悪霊は打ち果たされ、厄災は訪れることなく、世界に平和がもたらされた。
報せは世界中にもたらされ、人々は祝い、歌い、喜び合った。
そして、世界の名前はサナトスからルクスに変わることになった。サナトスは古代の言葉で『死』を意味し、ルクスは『光』を意味する。
死の蔓延る世界は光満ちる世界へと、生まれ変わりを遂げたのだった。
あまりに強く眩い光は、サナトリオルム自身から発せられている。魔法の使える仲間たちは咄嗟に魔法障壁を展開して未知の脅威に備えた。厄介な攻撃魔法であれば、命に関わる……
「皆、無事か!?サナトリウムは――どうなっている!?」
皆、強い光に目が眩んでしまい、状況を把握できないでいた。
「サナトリウムから強い光が発せられる前、奴の身体は我々の総攻撃によって崩れ落ちる寸前でした」
「ああ、私にもそう見えていたが……待て、あれは何だ!?」
兄上が指差した場所には魔石が青く光る杖と、小さな塊が地面に影を作っていた。
「グラヴィス!不用意に近づいては……もう少しすれば目も慣れて……」
ラウルスの制止を聞かず、兄上は謎の物体に向かって歩み寄って行った。
「おお……これは――!」
兄上は、地面からそれを拾い上げた。
――いや、抱き上げた。
それは、赤ん坊だった。
ふぎゃあ、ふぎゃあ――
兄上の腕の中で、赤子は泣き出した。
「よしよし、元気がいいな」
「兄…上……?」
「グラヴィス……あなたは……」
「ノア、ラウルス……!この子をよく見てくれ!ほら!」
兄上は手に持っている赤子を俺たちに見せた。
「これはルクスだ!ラウルス、おまえならわかるだろう?」
ラウルスは赤子に目をやり、そしてまた兄上に視線を戻した。
「グラヴィス……正気ですか?」
「この瞳の青い色、私やノアとそっくりだ!髪も……ふふっ……まだわかりにくいが赤毛だぞ。そして何よりもこの子はルクスの赤ん坊の頃にそっくり……いや、そのものではないか」
ラウルスは首を横に振った。
「たしかに……その赤子はルクスにあまりにも似ています。サナトリオルムが消えた場所に入れ替わりのようにその子は現れた。これが何を示しているか、理解できないあなたではないでしょう」
「……それがどうしたというのだ」
「グラヴィス……」
「私はこの子を育てるぞ」
「何を莫迦なことを……!」
「この子にルクスの魂を感じる。それだけで私には十分だ」
議論は終わり、兄上は宝物のように腕の中の赤子を抱き、サナトリオルムの居城を後にしたのだった。
こうして悪霊は打ち果たされ、厄災は訪れることなく、世界に平和がもたらされた。
報せは世界中にもたらされ、人々は祝い、歌い、喜び合った。
そして、世界の名前はサナトスからルクスに変わることになった。サナトスは古代の言葉で『死』を意味し、ルクスは『光』を意味する。
死の蔓延る世界は光満ちる世界へと、生まれ変わりを遂げたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる