不器用な恋

蔵屋

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第一巻

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 師走に入り、世間は何かと忙しい。ここ立石物産に勤める史花も毎日の伝票処理に追われていた。営業事務を担当しているため、営業部員の出張旅費精算や交通費、接待費等の処理に追われる。師走は就業日数が通常の月に比べて少ない。そのため、伝票の締切日も通常の月より、早い。
「皆さん、今月の伝票締日は10日です。早めに私まで提出して下さい。よろしくお願いします。」
「はーい。」
島津新が返事をした。
「皆さん、井上さんまで伝票を提出するように。」
課長の山本信也が史花をフォローした。
営業部員達は朝の朝礼が終わるとそれぞれの営業活動に出掛けた。立花物産は食品専門の商社である。海外とも取引があり、語学力が必要である。史花は英語検定1級を高校の時、合格していた。史花は海外取引の社内文書も担当していた。最近はインターネットのメールでやり取りをしている。しかし、ハッカーなどにより、不正メールもあるので、正式な受注と発注については、FAXである。
昼のチャイムが鳴った。
史花は、近所の大衆食堂に行った。いつも利用している。何故ならメニューの品数が多いからだ。
「いらっしゃい。何にしましょうか?」
「鯖定食をお願いします。」
「はい。しばらくお待ち下さい。」
女将はお茶を湯呑みに入れ、史花のテーブルの上に置いた。
「ありがとうございます。」
史花は素直で、思いやりがあり、奥床しさがあった。
 ここの食堂の鯖定食は絶品である。鯖の旬と言われる美味しい時期は10~12月だ。
この時期の鯖は、身がしっかり詰まった輝く黄金の魚体である。見た目も味もまさに一級品である。神奈川で漁獲される松輪鯖は、全国的に有名である。

 (一本釣りされた鯖を氷で〆て鮮度を保つ)




恵まれた海の環境とそこで漁獲される鯖を巧みな漁師の手によって作られる最高級の鯖の味覚である。昔から鯖の好漁場として知られる松輪周辺の海。沿岸部である東京湾口で漁が始まるのは5月ごろから。夏に向けてだんだん湾奥へ移動していく鯖の群れを追い、晩秋には千葉の袖ヶ浦沖にまで漁に出るのだ。波が穏やかでエサが豊富という恵まれた環境で育つ東京湾の真鯖。秋には皮が脂で黄色に輝き、「黄金鯖」と呼ばれている。
 一本釣りされ、人の手に触れることなく出荷直前まで生かされている松輪鯖。鮮度が保たれているため、生食でもおいしく食べることが出来る。しっかり肉付いた魚体には脂がたっぷりのっている。特に秋のものは格別で、築地市場でも高い評価を得ているのだ。
 魚へんに青と書く鯖は、その字の通り青魚の代表格である。人間の体に必要とされる良質なアミノ酸、血栓を予防するEPAや脳の働きを活性化させるDHA、さらに骨や歯を丈夫にするカルシウム、また美容や健康に欠かせないビタミン類も豊富に含んでいる。
 松輪さばは、神奈川名産100選に選定され、地域団体商標登録がされているのだ。
この松輪鯖は漁師たちのプロの技で守っている。漁獲時と変わらない鮮度を保っているのだ。
 松輪鯖は三浦半島南端にある剣崎灯台の袂に位置する、松輪地区で水揚げされる。主流は一本釣りによる漁獲である。沿岸域に来遊する真鯖を、一流の漁師たちが一本ずつ丁寧に釣り上げるのだ。真鯖は手掴みすると黒く変色してしまうため、漁師達のプロの技で指一本触れずに針を外し、魚倉へ移す。魚倉はバネ仕掛けになっていて、鯖の重みで蓋が開き、入ると自然に閉まる。松輪鯖は、漁師たちの巧みな技と工夫によって、最高の鮮度のまま松輪鯖が出荷されている。
史花はその真鯖を食べているのだ。史花が美味しそうに食べいる鯖定食は鯖の塩焼きと鯖の刺身がセットになっている。あとは、小鉢2品、豚汁、漬物、ご飯である。

 (真鯖のお刺身)



 その価格は驚くなかれ1000円である。
史花はすべてを食べ終えた。
史花はレジで会計を済ませて、大衆食堂を後にした。
























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