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第七巻
しおりを挟むまだ、肌寒い日が続く、2月4日.早朝、一人の赤子が生まれた。
「オギャー、オギャー、オギャー」
足早に一人の女性が奥の間で待つ老夫婦の元にやって来た。「生まれました。元気な女の赤ちゃんです。
母子ともにお元気です」
老夫婦は、満面の笑顔であった。
「よかった、よかった」
「本当に良かった」
老夫婦は、早速、母子の待つ部屋に行った。
「よく頑張った」
「ほんと、よく頑張ったね」
赤子は、元気な声で鳴き続けている。
「オギャー、オギャー、オギャー」
赤子の隣で、母親が生まれたばかりの我が子を見ている。
嬉しそうだ。幸せそうだ。
老夫婦は、隆一とマツである。
「あの子に連絡しなきゃ」
あの子とは、長男の昇だ。
昇は、アメリカ ニューヨークにいた。
マツは、国際電話で昇に電話した。
「生まれたよ。とっても元気な赤ちゃん。
お前に目元がそっくりだよ」
「そう。俺に似ているか。良かった。ほんとうに良かった」
「名前を考えなくちゃね。」
「そうだね。母さんにまかせるよ」
「分かったわ。父さんと相談して決めるね」
「いつ、日本に帰ってくるんだよ。」
「今日で視察は終わったので、明日の最終便でかえるよ。明後日の夕方には、家に着くよ」
「分かった、気をつけて帰ってくるんだよ」
「母さん、ありがとう。父さんと良子にもよろしく、伝えててね」
「分かったわ」
二日後、昇は神戸の自宅にいた。
食卓で、家族で食事を談笑しながら美味しそうに食べている。
今日の料理は、とらふぐの刺身、ふぐのてっちり、ふぐの唐揚げ、ふぐのひれ酒だ。
山口県下関からわざわざ取り寄せた天然の高級魚とらふぐだ。一匹、時価30万円。
昇の家庭は普通の家庭ではない。いわゆる上流家庭なのだ。
代々、鉄鋼業を営む創業一族だ。
今では、鉄鋼、不動産、サービス、金融まで手をひろげるコングロマリット、いわゆる巨大企業だ。
「母さん、名前、考えてくれた」
「ああ、父さんと一緒に考えたよ。父さん、教えてあげて」
「うめにしたよ。梅と書いて、『梅子』だよ」
「梅(うめ)』
「五島梅子」
「いい名前だね」
「いい名前だろ」
「本当、これからの我が家に相応しい名前だ」
梅ちゃんは成長し、地元の幼稚園、小学校、中学校へと進んだ。その後、神戸の名門女学院、名門女子大学へ進学。
卒業後、京都の調理師学校で学んだ。
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