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第十五巻
しおりを挟む梅ちゃんは妥協のないだしと新鮮な魚が際立つ、気鋭の割烹料理に拘る。
鉄さんが食べ進むうちにだしの美味しさをじんわり感じられる煮物椀や、神戸中央卸売市場のマルヤタで仕入れた魚に包丁の入れ方やあしらいで趣向を凝らしたお造り。素材に妥協せず古くからある仕事を当たり前にとりいれたい、これが梅ちゃんの拘りだ。梅ちゃんは京都で修行した成果を自分の店で 発揮し日夜腕を振るっている。食感と旨みを引き出し、目でも初春を味わい楽しめる鯛と唐墨と花わさびのお造り、また、低温で柔らかく火入れした蛤と蓮根饅頭の煮物椀。梅ちゃんならではの、割烹料理。真心込めた品々だ。
鉄さん、完ちゃん、拓ちゃん達は美味しそうに食べている。
「梅ちゃん、美味しいね。堪らないよ。この鯛。何処の鯛なんだい。」
「完ちゃん、瀬戸内海だよ。」
「あ、そうか。鯛と言えば瀬戸内海だよな。」
「当たり前よ。あたり前田のクラッカーよ。」
「もう、そのギャグ、流行ってないし。」
「え、そうなのかい。あたり前田のクラッカー!」
「もう流行ってないのかい。」
「当たり前だよ。完ちゃん。」
「もうてなもんや三度笠してないし。」
「そうななかい。寂しいね。」
「梅ちゃんはあたり前田のクラッカー、知らないのかい?」
「完ちゃん、ごめんなさい。私、知らないのよ。」
「そうなんだ。寂しいね。どうりで歳をとる訳だよな。」
「完ちゃん、時代は変わるんだよ。そうなげくなよ。なぁ。」
鉄さんが完ちゃんに言った。
梅ちゃんが天ぷらを調理している。斬新なたねと揚げ方が光る。
梅ちゃんは個性溢れる天ぷらの道を極めている。甘鯛の鱗のみ高温で松笠揚げにした。仕込みで1時間揚げ甘みを引き出すじゃがいも、太刀魚、ふきのとう。
梅ちゃんの割烹料理への拘りが料理の至るところに見られる。
鉄さんも完ちゃんも拓ちゃんもそんな梅ちゃんの熱心さに関心し、また、梅ちゃんの素敵な笑顔に心が癒されるのであった。
抑々割烹とは、食材を割く(包丁で切る)、烹(火を使って調理する)という日本料理の調理法である。
割烹料理店では、料理人が客の目の前で調理し、出来たての高級和食を一品ずつ提供するスタイルが特徴です。
正に割烹武田がそのスタイルだ。
先程申し上げたように割烹は、調理の基本動作である割くと烹るに由来する。
割くは包丁で食材を切ること。
烹は火を使って煮炊きする調理法全般のこと。
この言葉は、江戸時代から調理方法を意味する言葉として使われ、明治時代には現在の割烹料理店の形式が確立したのだ。
割烹料理店の特徴は、客席から調理場が見えるカウンター席が主流である。
梅ちゃんのように料理人が目の前で調理する様子を見ることが出来る。
鉄さんも完ちゃんも拓ちゃんも梅ちゃんの調理を見ながら出来たての料理を味わいながら食べる。正に食い道楽の極みである。
梅ちゃんの調理する包丁の音や香りを楽しみながら食事が出来るのだ。
決められた定型の献立に縛られず、お客様の好みに合わせて料理が提供される柔軟性がある。梅ちゃんの拘りがここにもある。
割烹はカウンター席やテーブル席で、料理人が目の前で調理した料理を気軽に楽しむことが出来るが料亭は個室で料理を提供し、仲居が接客を担当する。芸妓を呼ぶ場合もある。
ということは割烹料理店の方が、料亭に比べてややカジュアルなイメージがあるといえる。これは梅ちゃんスタイルでもある。
梅ちゃんが割烹武田で提供するメニューをご紹介しよう。
(梅ちゃんメニュー)
○お通し
○茶碗蒸し
○刺身
○焼物
○煮物
○揚物
○飯物
○デザート
(梅ちゃんから一言)
割烹料理店では、食事のマナーも大切です。
箸は水平に持って上下に割る。
『迷い箸』や『刺し箸』は避ける。
箸先から3cm以上を汚さないようにす
る。
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