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第一巻
しおりを挟むまだ肌寒い日が続く2月4日早朝、一人の赤子が生まれた。
「オギャー、オギャー、オギャー」
足早に一人の女性が奥の間で待つ老夫婦の元にやって来た。「生まれました。元気な女の赤ちゃんです。
母子ともにお元気です」
老夫婦は、満面の笑顔であった。
「よかった、よかった」
「本当に良かった」
老夫婦は、早速、母子の待つ部屋に行った。
「よく頑張った」
「ほんと、よく頑張ったね」
赤子は、元気な声で鳴き続けている。
「オギャー、オギャー、オギャー」
赤子の隣で、良子が生まれたばかりの我が子を見ている。
嬉しそうだ。幸せそうだ。
老夫婦は、隆一とマツである。
「あの子に連絡しなきゃ」
あの子とは、長男の昇だ。
昇は、今、アメリカ ニューヨークにいた。
マツは自分の携帯電話で昇に電話した。
「生まれたよ。とっても元気な赤ちゃん。
お前に目元がそっくりだよ」
「そう。俺に似ているか。良かった。ほんとうに良かった」
「名前を考えなくちゃね。」
「そうだね。母さんにまかせるよ」
「分かったわ。父さんと相談して決めるね」
「いつ、日本に帰ってくるんだよ。」
「今日で視察は終わったので、明日の最終便でかえるよ。明後日の夕方には、家に着くよ」
「分かった、気をつけて帰ってくるんだよ」
「母さん、ありがとう。父さんと良子にもよろしく、伝えててね」
「分かったわ」
二日後、昇は神戸の自宅にいた。
食卓で、家族で食事を談笑しながら美味しそうに食べている。
今日の料理は、とらふぐの刺身、ふぐのてっちり、ふぐの唐揚げ、ふぐのひれ酒だ。
山口県下関からわざわざ取り寄せた天然の高級魚とらふぐだ。一匹、時価30万円。
昇の家庭は普通の家庭ではない。所謂、上流家庭なのだ。
代々、鉄鋼業を営む創業一族だ。
今では、鉄鋼、不動産、サービス、金融まで手をひろげるコングロマリットの巨大企業に成長している。
「母さん、名前、考えてくれた」
「ああ、父さんと一緒に考えたよ。父さん、教えてあげて」
「さちにしたよ。幸せと書いて、『幸』だよ」
「幸」
「五島幸か」
「いい名前だね」
「いい名前だろ」
「本当、これからの我が家に相応しい名前だ」
幸は成長し、地元の幼稚園、小学校、中学校へと進学した。その後、神戸の名門女学院、名門女子大学へと進学。
大学卒業後、京都の調理師学校で学んだ。
国土が東西南北に長く弓なりに広がる日本列島は豊かな森林と川と水、そして列島周囲を囲む海、春夏秋冬、季節の移り変わりを感じる自然豊かな島国だ。季節ごとに多種多様な食材に恵まれ、とくに海の宝庫の魚介類は、新鮮だ。
料理人にとって、この上ない贈り物だ。
幸は、料理人になりもう10年になる。
神戸の名門女学院、名門女子大学を卒業後、京都の調理師学校で学んだ。卒業後、調理師免許を取得した後、京都で老舗の懐石料理店 菊水本店で修行し、数年ぶりに神戸にUターン、神戸三ノ宮で、割烹料理店 幸を開店するのだ。
開店前は開店準備に追われて、実家に帰れなかったが、やっと準備も終わり、幸は実家に帰った。
玄関を入るなり、女中のタマキが玄関で出迎えた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。お待ちしておりました。お父様もお母様もお待ちですよ」
「タマキ ありがとう。いつも世話かけるね」
幸は、タマキに案内されるまま、渡り廊下を歩き、父と母の待つ食卓に行った。
「お父さん、お母さん、ただいま帰りました」
「お帰りなさい。幸」
「お帰り」
「疲れたでしょ。今日はゆっくりしなさいね」
「さあ、席について」
「母さん、ありがとう」
「先ず、乾杯だ」
待機していた女性ソムリエのマキが、
「本日のワインは、イギリス王室御用達のデュボネ ルージュでごさいます」
説明の後、昇、良子、幸のそれぞれのワイングラスに赤ワインを注いだ。
昇の音頭で、乾杯した。
「じゃ、乾杯だ。幸、お帰り。長い間、よく頑張ったね。幸の前途を祝し乾杯!」
「乾杯」
「乾杯」
3人は、赤ワインを飲み始めた。
しばらくして、ウエイトレス達が厨房から料理を運んで来た。
今日の料理は
①神戸牛 ヒレステーキ
②子羊のロースト
③かぶとレタスのコールスロー
④りんごとセロリのマカロニサラダ
⑤タコマリネのピンチョス
⑥ロールキャベツホワイトソース煮
⑦トマトとほうれん草のオムレツ
⑧コーン入りオムライス
⑨トマトスープ
以上の九品である。
3人は食卓テーブルに置かれた料理を食べ始めた。
「美味しいわ。やっぱり神戸牛ね。いつも美味しいわ。この柔らかさ、この独特な味。舌触り。美味しい」
「これ、美味しいね。このタコ料理、なんていうんだい」
「いやね、あなた、タコマリネのピンチョスよ」
「そうか、タコマリネのピンチョスか」
「今度は、覚えて下さいよ」
「分かったよ」
3人は笑った。
なんと幸せな家庭なのだろう。
幸は自分の生い立ちを考えていた。
いつも幸せであるから、余計に考えるのだ。
生きる喜び、生きる希望、生きる目的を幸せだからこそ、考えるのだ。
その基本は、大自然を感じることだ。
大自然は生きている。
太宇宙は、規則正しくまた、くるいなく動いている。止まっているものはない。
生きているのだ。
例えば、太陽について、考えてみよう。
太陽の光と熱は地球に昼という時間とエネルギーを与えてくれる。太陽は海や陸をあたため、地球に生きるすべての生きものにとって、あらゆる地球上の命をはぐくむためになくてはならない大切な存在なのだ。
幸は、女子大学生の時、全国で上映された映画「天地創造」の監督 蔵屋五郎八の舞台挨拶を幸は思い出していた。
その舞台挨拶の内容は以下の通りであった。
「弥勒の世の幕開けを幾人の人々が実感できるのであろうか?私はこのことをあえて懸念している。その理由は天地創造された神の実在を理解できる人しか、実感できないから。何故なら、未だに無神論者がいるということです。目に見えるもの、科学で証明出来るものしか信じない人には、おそらく分からないでしょう。
『大宇宙 宇宙は神さま 神さまは宇宙』
これはある宗教家の言葉です。
私はこれこそが神の実在を証明する証だと思います。
神が創造された大宇宙をじっくりと観察することにより、神の実在とご神徳を悟ることができます。
大自然は、無言の教科書です。人間的知恵で書かれた書物よりも、大自然、天地万物を心ひそめて観察することによって、神の霊・力・体を深く感じ、悟ることができるのです。
神の黙示は、大自然のいたるところに満ち満ちています。
神は、霊・力・体の三大要素をもって万有一切を創造されました。
したがって、宇宙にあるものはすべて、霊・力・体の三大要素よりほかにはありません。
ここで、神の霊・力・体について考えてみたいと思います。
例えば、肉眼で見える星の数は7,500余。
天体望遠鏡を用いると、300億以上になるといわれます。天の川は無数の星の集まりで、その端から端までの距離は30万光年あります。
光の速さは、1秒間に地球を7回り半します。
1光年とは、光の速さで1年かかって到達する距離ですから、30万光年という距離は驚異的です。
私たちの住む地球は、太陽系宇宙の小さな一惑星にすぎません。
太陽系宇宙といっても、銀河系宇宙のほんの一部分です。その周りには数限りない宇宙が広がり、最も近い星雲でも70万光年あると言われています。神が創造された宇宙は無限に広がり、はかり知れません。
地球は、海があり陸があり、山があり川があって、81億1900万人の人類をはじめ、さまざまな動植物が太陽の光と土、水など大地の恵みによって生きています。
生を受けた生物は、寿命を終えると一様にその亡きがらは大地に帰り、次の生命を養う栄養となります。
土の中にも数十億の微生物がおり、顕微鏡でしか見られない微生物、体内の細菌等にもはっきりとした組織があり、はたらきを持っています。
極小のものとしては原子の世界があり、整然とした秩序、法則をもっています。
これらは一例ですが、極大の世界から極微の世界までを創造し、秩序・法則をもって生かしはぐくんでいる無限絶対、無始無終のご存在が神なのです。
少し宗教的な表現になりますが、
「万有の運化の毫差なきを視て真神の力を思考すべし」
天地間のものの中で、静止しているものはありません。大は天体から、小は原子まで、すべてが活動し、運化しています。
そして、その動き方、うつり方にはそれぞれ一定の法則があり、軌道があります。
このことが、宇宙間に大小さまざまな周期律をつくっています。
太陽系では太陽を中心に九つの惑星がそれぞれの軌道で回っています。
地球が太陽の回りを1周する時間を1年、地球自体が1回転する時間を1日とし、それによって、1年の中に春夏秋冬が、1日の中に朝昼夜が巡ってきます。
そして、悠久の太古から永遠の未来へと、一分の狂いもなく動き続けています。
すべてのものは物理的に運化しているだけでなく、質的にもうつり変わっています。
たとえば大地に落ちた樫の実が芽を出したと考えてください。次第に幹ができ、枝が伸び、葉を付けます。やがて大きな木になり、花を咲かせ、実を結びます。そしてその実が落ち発芽して、新たな生命が誕生します。これが、樫の木の質的なうつり変わりであり、軌道です。
生物は独自の軌道を持ち、その軌道に従って生まれ、育ち、成熟し、生み、老い、死ぬという運化を繰り返し、この順序に狂いはありません。また、動物は空気中の酸素を吸い、二酸化炭素をはきます。植物は二酸化炭素を吸って酸素をはき出します。このように、それぞれの運化の中で双方が立ち栄えていっています。
生物だけではありません。大地の上の水は、絶えず水蒸気となって空にのぼり、やがて雲となり、雨や雪となって大地に還ります。
このように極大から極微まで、すべてがそれぞれ運化を続け、大調和のうちに、天地の生成発展に参画しています。そこには、神の絶大な力と、その力から分け与えられたそれぞれの分力がはたらいているのです。
つまり、活物の心性を覚悟して真神の霊魂というものを理解してほしいのです。
活物の心のはたらきの中で、最も基本的で共通していることは、生命を大切にする思い、生きようとする意欲です。この生存本能によって、すべての活物は呼吸し、光、熱を求め、食物その他生きるために必要な諸条件を求めています。生命を犯すものから逃れようとし、避けられない困難には打ち勝って、生き延びようとします。このような心性、本能を活物に与えたのは神であり、それによって活物は生き、栄えているのです。
いま一つ、活物すべてに基本的に共通しているのは、生殖本能です。
それは、自己の子孫をつくり、自己の遺伝子を永遠に広げようとする営みです。
それに関連していろいろな性情が現れ、異性に対する慕情が生まれ、やがて親子の深いきずなができてきます。
例えば動物でも、親子の強い情愛があります。私たちの身近にいる雀を例に取ってみてください。雀のカップルができたら一生懸命に巣作りに励み、卵を産んだら親鳥はほとんど巣から離れることなく卵を温めます。雛がかえると親鳥自身はほとんど食べずに、エサを雛に運びます。外敵が来ると、身をもって雛を守り、大きい外敵にも立ち向かいます。
だれに教えられなくても、雛に対する愛情、育てる知恵、勇猛心、親和の情などの心のはたらきが備わっているのです。これは、動物に限らず植物にも言えることです。
広大無辺な宇宙に対し個々の活物は、比較にもならないほど小さな存在です。しかし、生きようとする力強い本能があり、親子の間にみられるような美しい愛を持っています。
この本能は、神から分け与えられた尊い心性なのです。
神は大宇宙の真理を黙って示されているのです。これを黙示といいます。
幸は、この舞台挨拶を聞いてから、人生に対する考え方が変わった。幸は、何不自由ない恵まれた生活環境にあり、健康な恵まれた身体を持つ。物質的にも恵まれ、精神的にも恵まれている。そこには、大宇宙の存在がある。
これからは、大宇宙(神)と共に生きていこうと決意したのてあった。
さて、幸は開店準備期間中、管轄の職業安定所に求人票を出していた。求人人数は、14名。
求職者が採用に至るまでの手順であるが、
まず、①求職者は管轄の職業安定所に行く。
②求職者は、企業の求人票を見て、希望の仕事があれば、担当者と面談。
先方の企業と面接日を決める。担当者が直接電話して決める場合と求職者が電話して決める場合がある。
日時が決まれば、求職者は先方の面接を受ける。
採用が決まれば、職安に結果を連絡する。
ざっとこんな感じ。
幸は、履歴書の内容を確認し、14名全員と面接した。結果、求人人数 14名を全員確保することができた。
職種ごとの採用は次の通りであった。
板長 1名. |次板(つぎいた》3名、椀方2名、煮方2名、洗い場2名、揚げ場2名、ホール2名。
幸の店は、精進料理、懐石料理、会席料理などの高級な和食を提供する『割烹』である。
板長、次板は経験者であったが、他の職種の者は、飲食業は未経験者であった。
そのため、幸が作成したマニュアルに基づき、幸自身が教育を行った。
開店まで、2週間しかないが、何とか間に合わせることができると思った。
板長、次板については、幸が考える和食のコンセプトについて教育し、幸の考えた精進料理、懐石料理、会席料理のお品書きについて、説明した。
幸の考えるお米をはじめとする食材、調味料、調理器具、食器類の調達、市場から仕入れる鮮魚、肉類、野菜、果物などについて、詳細に会議し打ち合わせた。
幸の割烹料理店は、JR三ノ宮駅から徒歩10分、北野町の一角にある。
店は数寄屋造りで、竹や杉皮、土壁など自然素材を取り入れ、それぞれの素材感を活かした和風建築である。もともと数寄とは、和歌や茶道、生け花などの風流を好むという意味がある。店の周囲は緑豊かな広い庭園で、四季折々の草木や花などを観て、風流を楽しむことができる。この店は、もともと幸の父親の五島昇が所有する物件で、五島グループ傘下企業の西日本製鉄株式会社の宴会や接待用に建築されたものだ。数年前、父親の昇が幸がら料理人になりたいと聞いたとき、昇ひとつ返事で了承した。
可愛い幸のために、今ある店を改築し、内装もすべてリニューアルしたのだ。
幸に日本一の料理人になって欲しい、という願いがあった。実は昇は、幼少期、昇の父から「何事もやるからには、トップになれ!」と言われて育ったのだ。昇は、幸にも「トップになれ!」と言い続けて育てた。
幸は昇の期待に応えるように小学校、中学校、高等学校、大学と“トップ“であった。そして京都の調理師学校でも“トップ“であった。
しかし、料理人の世界は修行の場だ。封建的な親方と弟子のような厳しい世界だ。しかも幸は、女性だ。おそらく、調理師学校在学中は、昇にも言えない男女差別にあったことだろう。また、異性というだけで、いつもやらしい目つきで、見られたことだろう。しかし、幸は最後まで頑張って、見事に調理師免許を取得し、しかも調理師学校を“トップ“で卒業したのだ。
小雪の舞う師走の頃、幸は神戸六麓荘にある実家に向かって歩いていた。
するとひとりの男性に声をかけられた。
「すいません。道に迷って。この住所に行きたいのですが」
男性は、紙に書いたメモを差し出した。
「あら、この住所、私の自宅のお隣ですよ。
メモ用紙には、池田隼人と記載されていた。
「どういうご関係なのですか?」
「親戚の者です。」
「まあ、ご親戚の方なのですか?池田様とは、私たち家族は家族ぐるみのお付き合いなんですよ。
自己紹介がおくれました。私、五島幸と申します。」
「私、こういう者です。」
その男性は、背広の胸ボケットから名刺入れを取り出し、さらに名刺入れから名刺を1枚取り出して、幸に手渡した。名刺には、『富士輸送機株式会社人事部課長 内山光一』と印字されていた。幸は名刺を受け取った。
幸は、ハンドバックから自分の名刺入れを取り出し、光一に幸の名刺を手渡した。
『割烹料理店 幸 総料理長 五島 幸』
光一は、名刺を受け取って、名刺入れの中に大事そうに入れた。
「五島幸さん。よい名前ですね」よろしく、お願いします。良かったら後で私の家に来ませんか?家族をご紹介しますわ」
「え、いいんですか?初対面ですよ」
「もちろん。池田様とは家族ぐるみのお付き合いですから」
「じゃあ、後でお邪魔します。ありがとうございます」
光一は、池田家の呼び鈴を押し、家の門扉を開けて中に入って行った。
幸も自宅のインターフォンを押し、中に入って行った。
これが幸と光一の初めての出会いなのだ。この出会いをきっかけに幸と光一は、交際するようになるのだ。幸は一歩一歩、着実に幸せの階段を昇っていくことになるのだ。あー、幸はなんて幸せな女性なのだろう。幸が、幸せになっていくには、それ相応の理由がある。それは幸の日常にある。幸は常日頃から善一筋、感謝一筋の人生を送っている。
光一は幸の自宅のインターフォンを押した。
「五島です」
「内山です」
「お待ちしてました。どうぞ、お入り下さい。」
光一は、門扉を開けて、中に入った。玄関までの距離がかなりある。夜間でよく見えないが、庭も広そうだ。
光一は、玄関のドアを開け、中に入った。
玄関先で、幸が出迎えた。
「いらっしゃい。お待ちしてました。さあ、上がって」
「お邪魔します」
光一は、玄関先でリーガル製の皮靴を脱いだ。
幸が用意していたスリッパに履き替え上がった。幸は光一と一緒に廊下を歩いた。両親の待つ応接室に案内した。
“コン、コン、コン“
「どうぞ」
良子の声だ。
「母さん。入るね」
「失礼いたします。内山光一と申します」
「さあ、座って」
「ありがとうございます」
「今夜は道に迷っていましたところ、お嬢様に親切に教えていただきまして、ありがとうございました。また、お嬢様のお言葉に甘えまして、ご訪問いたしました。よろしくお願い致します」
光一の丁寧な挨拶だった。
「内山様は、お隣りの池田様とご親戚だとか。
どんな関係なの」
「私の母の叔父です。私の祖父の兄に当たる方です。」
「そうなの。血は濃いですね。立派な血脈ですね。」
「え、立派だなんて。お恥ずかしい限りです。」
「内山さんは、ご両親はご健在なの?」
「私は母子家庭なんです。」
「そうなの。お母様、大変だったでしょうね。」
「ええ、母には苦労かけました。」
「他にご家族は?」
「祖父と母、私の4人家族です。」
「そうなの。お仕事は、とんなお仕事なの?」
「富士輸送機株式会社の本社人事部に在籍してます。」
「人事のお仕事、大変なんでしょ」
「え、まあ。大変と言われると大変ですね。
ルーチンの仕事は、毎日の勤怠管理、毎月の給与計算。退職者の退職金計算、人事異動発令、人事通達、福利厚生、就業規則他各種諸規定の改廃、安全衛生、労働組合の団体交渉事務局、株主総会事務局、OB会事務局、毎年4月、10月の人事考課、新卒採用面積、大学院、大学。専門学校、高専への求人活動などです。」
「大変な、お仕事ね。ご一緒に夕食食べませんか?」
「そうしなさいよ。私が調理しますから」
「はい。分かりました。」
幸は、調理場に行き、調理をはじめた。
今日は日本食だ。
幸は光一に美味しい料理を食べて欲しいと思うのであった。今日の夕食は、お刺身、鮎の塩焼き、毛蟹、野菜サラダなどが食卓に置かれた。
女中のタマキは、瓶ビールを冷蔵庫から取り出して、食卓のテーブルの上に置いた。
夕食の準備をし、銘々の器や皿に出来た料理を盛りつけた。今日のメイン料理は、天ぷら盛りあわせである。
幸は手際よく、残りの料理をつくり食卓にお馴染み、ブリの照り焼きが並べられた。
12月18日にグランドオープンすることが決まった。
開店を控え、幸を始め、スタッフ一同、開店準備で忙しそうだ。幸の店はもともと割烹料理店であった。立地条件もよく、しかも神戸三ノ宮駅に近い。神戸市民の人気度も高く、しかも2週間前の地元紙に父親の昇と幸で、インタビューに答え、2人の写真と一緒に、2人のインタビュー記事が掲載されたのだ。新聞社は五島グループの広告収入が会社売上高の8割を占めていた。
そのため、新聞社は幸親子の記事を新聞の一面に特集として掲載したのだ。
2025年12月18日午後6時.オープン
割烹料理店 幸
総料理長 五島 幸 さん
京都の老舗 割烹料理店で板前の修行し、
神戸にUターン。
オープニング前に総料理長の五島幸さんとお父様の五島昇さんに今の気持ちをお聞きしました。
『地元の方々に本格的な日本料理を味わって欲しいから。また、お客様の美味しいという笑顔を見たいから』
『私が料理の世界に入ったきっかけは、子供の頃、初めて手作りハンバーグをお母さんに食べてもらったとき、『笑顔て美味しいわ。幸』と褒められたから。以来、料理って、人を笑顔にすることができるんだ。それなら料理をつくることが出来る料理人になろうと思いました。』
インタビューで終始、笑顔で答えてくれた幸さんでした。
西日本製鉄株式会社
代表取締役 社長 五島 昇
『娘から出店の相談があった時、私は三ノ宮にしなさいと助言しました。
神戸にはよく知られている三ノ宮だけでなく、一ノ宮から八ノ宮までがあります。明治以降、三ノ宮が発展した背景には、外国人居留地の存在と鉄道の発達がありました。
地名の由来となっている三ノ宮には「三宮神社」があります。三の宮の発展は、さきほど申し上げました外国人居留地が存在したことです。
もう一つは、関西で、初の鉄道の敷設と三ノ宮駅の開業でした。そして、戦後はセンター街が登場しました。この過去の歴史によって神戸三ノ宮は、発展しました。
しかし、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が1995年(平成7年)1月17日 5時46分に発生し、三ノ宮駅周辺は一部破壊されました。尊い人命も失われました。しかし、神戸市民の皆さんの頑張りのおかげで、見事に立ち直り今の三ノ宮になりました。私が娘の幸に助言し、この三ノ宮の地に割烹料理店 幸をオープンさせたのも、
神戸市民の皆さまに食によって食べる喜びを知って頂きたいからです。どうか、割烹料理店 幸のオープンを祝ってやって下さい。
幸と一緒に皆さまも幸せになって下さい。』
オープニング前、幸はやっと出来上がった
お品書きに目を通し、内容を確認していた。
店内のお品書き
本場 下関産とらふぐ(時価)
1.とらふぐ料理フルコース(約5~6人前)と(2~3人前)
2.とらふぐの刺身(てっさ)
3.とらふぐの鍋(ふぐ鍋)
4.ふぐ雑炊
5.ヒレ酒
6.つきだし
①ふぐの骨せんべい
②ふぐの骨なしフライ
お刺身
1.本まぐろ(時価)
赤身、中トロ、大トロ
2.本まぐろ以外の刺身(時価)
鰤、ヒラメ、ヒラマサ、真鯛、オコゼ
イカ、タコ
3.一品料理(時価)
渡り蟹、毛蟹、ずわいがに、セイコ蟹
伊勢海老、車海老、雲丹、いくら
4,煮物、揚げ物などは、テーブル席備つけのメニューをご覧下さい。
5.お飲み物
アルコール類をはじめ、ウーロン茶などの
お飲み物は、テーブル席備つけのメニューを
ご覧下さい。
6.ご飯などその他の食べ物については、
テーブル席備つけのメニューをご覧下さい。
以上
割烹料理店 店主
上記のお品書きは、年末年始を迎え、法人つまり会社関係者の忘年会、新年会の宴会用のメニューだ。
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