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第1章

コソコソ

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「ねぇ、あれがツイッターでまわってきた…」
「じ、実物の方がすごっ!」
「本当に王子だわ…」


何やら、コソコソと聞こえてくる。

「翔?なんか、異常に人がいるような気がするけど?こんなもんなの?」
 
僕より、背が高い翔は、僕が顔を少し見上げる形になる。


一瞬。翔の顔がしかめられた気がした。少ししか見えないため、定かではない。


だが、フッとこちらに向けた顔は、ニヤニヤした顔だった。
「俺的には、王子よかお姫様の方が気になるぜぃ!!」

僕は、諭すように微笑む。
「はいはい。静かにしよっか??」


そして、人が流れていく先に進もうと視線を前へ向けた。


____その時。丁度、人の群れが割れた一瞬だった。



僕は、王子様を見つけた。




誰に言われなくても、噂のことを知らなくても、ぱっと頭の中で、王子様と変換されるような容貌だった。

それほどまでに、噂通りの王子様ぴったりの顔が、こちらを見ていた。


…ような気がした。


「結人?先行くぞー?」

人の波に捕らわれ、遅れていた僕を気遣うように声をかけられた。翔は、王子に微塵みじんの興味も無いらしく、ズンズン進んでいく。

僕も、特に気にすることなく校舎の方へ向かっていった。



____翔には言わなかったが、



僕は、王子の面影をどこかで見たことがある。



記憶が欠落しているかのように、思い出すことができない。

昔のことなんて、良い記憶が無ければ、さほど覚えていないものだ。

それに、次の瞬間には王子のことなど、忘れていた。
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