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2,散策
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今日は月に1度の散策の日。
散策、と言っても、庭や森を見て回るだけ。
私有地の庭や森は安全で、許可された人以外は入れなくなっている。
庭や森を合わせると、私有地は合計で2万坪にもなる。
その為、散策と大袈裟に言っても、オーバーすぎる訳でもない。
午後になってしばらくすると、身だしなみを整え、なるべく動きやすい服に着替えると、自分の部屋に戻った。
「行けますか?」
「行けるわ」
私は本来であれば婚約者を見つけなければならなかった。
まだ16だからと言っている場合ではない、アーヴェン家のしきたりの1つには、18までに婚約をしなければならない、という、謎のしきたりがあるためだ。
だが、そう簡単に婚約者が決まることなどあるはずがない。
特に私は。
その理由は、自分が婚約をしたがらない為だった。
1度は隣国の皇子と婚約届けを出す、手前くらいまではいったことがある。
その婚約届けを破棄したのは私だ。
やはり結婚は出来ないと捨て置いた。
彼は大きい口を更に大きく広げて驚いていたことをよく覚えている。
「今日は暖かいですね。やはりお散歩日和です。日傘、さしますか?」
日傘を手に取り、首を少しだけ傾けた。
「ささなくていいわ」
「それでは、森に入りましょうか」
庭を横切り、森に踏み入る。
森は木が生い茂っていて、小さな川が流れていたり、池があったりする。
綺麗な川を覗き込み、ノアは笑みを浮かべた。
「やはり綺麗ですねぇ」
魚が跳びはね、水が飛び散る。
「すいません、濡れましたか?」
無邪気な表情は崩されていない。
「……濡れてないわよ」
「良かったです」
そしてそのまま、歩き出す。
鳥の囀りに耳を傾け、ノアは言う。
「美しい声ですね」
「ねぇ?」
「はい、どうしましたか?」
「辞めたいなら、辞めても良いのよ」
「いきなりどうしたんです?」
いきなりだった。
自分でも分からなかったが、とめどめも無く溢れる想いを口にしてしまう。
先程からノアを見ていると、本当に普通の好青年にしか見えなかったのである。
「貴方はまだ若い。それなのに縛られていると思うの。私なんかとずっと一緒なんて尚更ね」
この自由な鳥を見ていると、胸が締め付けられるような気持ちになる。
ノアも、このようになりたいのではないかと。
「いいえ。全然そんなことありませんし、お嬢様だから続けられるんです」
1年も続いたことだけでも不思議なのに。
「でも……」
「私は幸せですよ」
ノアが顔だけ振り向かせて言う。
「え……」
顔が赤くなり、火照っていくのが分かる。
あまりにも自分の質問に恥ずかしさを覚えてしまい、顔を直視できなくなってしまった。
「そう。それなら良いわよ」
私もノアで良かった_______そう言いたかったけれど、言えなかった。
自分の本心を言えないのは私の悪い癖だ。
「イヴ様、見てください、ほら、あれ」
「な、何……?」
「雛鳥ですね。巣があるみたいです」
木の上にできた巣に何匹かの雛鳥がいる。
「凄いわ……あっ」
木の枝に足が引っ掛かるのが分かった。
上を見上げていたため、体勢を立て直すことができない。
斜めに倒れていく感覚が肌で感じる。
「イヴ様……っと、危なかったですね」
地面に当たることは無かった。
ノアが支えてくれているのだろう。
恐る恐る目を開ける。
いつもと少しだけ違う顔つきに胸が高鳴った気がした。
「お怪我はありませんか?どこか痛むところは……」
「大丈夫よ……ありがとう、ノア」
優しく抱き起こしてもらう。
流石の反射神経の良さに圧倒されながらも体勢を戻す。
「今、ノアって呼びましたよね?」
「え……?」
「ノアって呼んでくれましたね!」
子供のように言いながら目を細め、いつもながらの声に戻る。
そして「行きましょう」とでも言いたげな瞳と、艶やかな手を差し出される。
「今日は何だか落ち着かないようですね、ここら辺で今日は帰りましょうか」
ええ、そうね……そう頷こうとしたとき。
がたがたがたっ。
散策、と言っても、庭や森を見て回るだけ。
私有地の庭や森は安全で、許可された人以外は入れなくなっている。
庭や森を合わせると、私有地は合計で2万坪にもなる。
その為、散策と大袈裟に言っても、オーバーすぎる訳でもない。
午後になってしばらくすると、身だしなみを整え、なるべく動きやすい服に着替えると、自分の部屋に戻った。
「行けますか?」
「行けるわ」
私は本来であれば婚約者を見つけなければならなかった。
まだ16だからと言っている場合ではない、アーヴェン家のしきたりの1つには、18までに婚約をしなければならない、という、謎のしきたりがあるためだ。
だが、そう簡単に婚約者が決まることなどあるはずがない。
特に私は。
その理由は、自分が婚約をしたがらない為だった。
1度は隣国の皇子と婚約届けを出す、手前くらいまではいったことがある。
その婚約届けを破棄したのは私だ。
やはり結婚は出来ないと捨て置いた。
彼は大きい口を更に大きく広げて驚いていたことをよく覚えている。
「今日は暖かいですね。やはりお散歩日和です。日傘、さしますか?」
日傘を手に取り、首を少しだけ傾けた。
「ささなくていいわ」
「それでは、森に入りましょうか」
庭を横切り、森に踏み入る。
森は木が生い茂っていて、小さな川が流れていたり、池があったりする。
綺麗な川を覗き込み、ノアは笑みを浮かべた。
「やはり綺麗ですねぇ」
魚が跳びはね、水が飛び散る。
「すいません、濡れましたか?」
無邪気な表情は崩されていない。
「……濡れてないわよ」
「良かったです」
そしてそのまま、歩き出す。
鳥の囀りに耳を傾け、ノアは言う。
「美しい声ですね」
「ねぇ?」
「はい、どうしましたか?」
「辞めたいなら、辞めても良いのよ」
「いきなりどうしたんです?」
いきなりだった。
自分でも分からなかったが、とめどめも無く溢れる想いを口にしてしまう。
先程からノアを見ていると、本当に普通の好青年にしか見えなかったのである。
「貴方はまだ若い。それなのに縛られていると思うの。私なんかとずっと一緒なんて尚更ね」
この自由な鳥を見ていると、胸が締め付けられるような気持ちになる。
ノアも、このようになりたいのではないかと。
「いいえ。全然そんなことありませんし、お嬢様だから続けられるんです」
1年も続いたことだけでも不思議なのに。
「でも……」
「私は幸せですよ」
ノアが顔だけ振り向かせて言う。
「え……」
顔が赤くなり、火照っていくのが分かる。
あまりにも自分の質問に恥ずかしさを覚えてしまい、顔を直視できなくなってしまった。
「そう。それなら良いわよ」
私もノアで良かった_______そう言いたかったけれど、言えなかった。
自分の本心を言えないのは私の悪い癖だ。
「イヴ様、見てください、ほら、あれ」
「な、何……?」
「雛鳥ですね。巣があるみたいです」
木の上にできた巣に何匹かの雛鳥がいる。
「凄いわ……あっ」
木の枝に足が引っ掛かるのが分かった。
上を見上げていたため、体勢を立て直すことができない。
斜めに倒れていく感覚が肌で感じる。
「イヴ様……っと、危なかったですね」
地面に当たることは無かった。
ノアが支えてくれているのだろう。
恐る恐る目を開ける。
いつもと少しだけ違う顔つきに胸が高鳴った気がした。
「お怪我はありませんか?どこか痛むところは……」
「大丈夫よ……ありがとう、ノア」
優しく抱き起こしてもらう。
流石の反射神経の良さに圧倒されながらも体勢を戻す。
「今、ノアって呼びましたよね?」
「え……?」
「ノアって呼んでくれましたね!」
子供のように言いながら目を細め、いつもながらの声に戻る。
そして「行きましょう」とでも言いたげな瞳と、艶やかな手を差し出される。
「今日は何だか落ち着かないようですね、ここら辺で今日は帰りましょうか」
ええ、そうね……そう頷こうとしたとき。
がたがたがたっ。
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