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7,空虚
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久しぶりの2人きりの部屋。
ノアは窓を綺麗に磨いていた。
「ノア……辞めたかったの?」
「何がですか?」
突然切り出した話にすっとぼけるように。
ノアは手を止めた。
「護衛の仕事に決まってるでしょう」
「……辞めたくなんてありませんよ。ただ、お嬢様の為なんです」
「どうして?どうして……!」
「きっと、私でも守れないことが増えます。もしも守れなかったら、そう思うと怖いんです」
伏せていた目をあげ、直視したノアの顔は、少しばかり歪んでいた。
「それだけ?」
「……それだけですよ」
再び雑巾を持ち直して拭き始めたノアの背中を見つめ続ける。
今日が一緒に過ごせる最後なのに。
もう2度と会えないかもしれないのに。
いつもと変わらぬ風景は、いつまでも続いていくように感じられる。
何か言ってくれても、良いじゃない。
心の中で、黒い気持ちが渦を巻く。
もやもやして、霧がかった心が晴れることはなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れ様。今日まで1年と3ヶ月?4ヶ月かしら?ありがとう。ほら、イヴからも。ずっとお世話になったじゃない」
「今までありがとう」
「それだけ?」
「……えぇ」
「どうか、お身体にお気を付けて。今まで雇ってもらって、ありがとうございました」
深々お辞儀をすると共に、重厚な扉が開かれた。
ノアが扉を通り抜けてもう一礼すると、閉まり始める。
待って、行かないで。
その一言が言えたら、どんなに良かっただろう。
だが言えるわけもなく、夜闇に吸い込まれていく姿。
最後まで見送ることもできず、私はその場で立ち尽くすことしかできなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日から、まるで私の世界から彩りが全て消え去ったようだった。
ご飯も味気ないし、散策など楽しくもない。
ベンも強いのではあろうが、品の欠片もないからか、こちらが過剰に気を遣う。
笑い方も大口を開けて笑うし、歩き方も擬音をつけるならば、どすどすと言った風だ。
言葉遣いもよろしいとは言えないし、私の部屋を漁ることもしばしばだ。
掃除のやり方が分からないのはまだしも、適当に済ますのだけはやめて欲しい。
いつもメイドが疲れ気味に私の部屋に来ては掃除を行い、ベンはそれを見守っているだけだ。
「ねぇ、貴方は護衛だけとして雇われたわけではないのよ。少しは執事らしくしてくれないかしら」
執事の概念を知らないのか、そう言っても何も変わらない。
お母様とお父様は丁度昨日から旅行だ。
旅行とは名ばかりで、実際はお偉い様方に挨拶をして回っているのだろう、次帰ってくるのは来月以降らしい。
それまでは少なくとも、ベンで我慢しなければならない。
___________のだが。
苦痛で堪らなく、ベンとは外を歩きたくないし、密室で2人っきりも嫌なので、手当たり次第に仕事を与え続け、無くなれば勉強と偽って部屋から追い出していた。
「お嬢様。今日の予定は特にありませんが、散策はどうでしょうか!」
それしか取り柄が無いのだろうが、無駄にチャンスを掴み取ろうとする姿、あからさまに偉い人に媚びへつらう姿を見て吐き気がした。
ハウスメイドには自分が偉いと言わんばかりの態度で命令し、レディーズメイドやヘッドハウスメイドには優しく接する。
「行かないわ。それは良いから、今日はヘッドハウスメイドの手伝いをしてきて」
「……了解致しました」
ヘッドハウスメイドとは、簡単に言うとメイド長のようなもので、それだけ長く勤めていると言うことで位は上だ。
だが、私が最近気に掛けているのはフローラというメイドだ。
アルレアのこともあってか、まだ勤めて間もない若いメイドが気になってしまう。
フローラは清楚な雰囲気があるが、実はおっちょこちょいでやらかしも多い。
私の部屋の掃除にも度々来るが、毎度何かを落とすので見ていて危なっかしい。
「お嬢様。お部屋のお掃除に参りました。失礼致します……」
噂をすれば何とやら、くまが酷いフローラが入ってきた。
「おはよう、フローラ。疲れているんじゃない?くまが酷いわ」
「すみません……眠れていなくて」
「まぁ。どうして?」
「私は人一倍ミスをしやすいので、それをカバーするために1人で出来ることを夜にやっているんです」
でも大丈夫です、と言わんばかりにフローラは掃除道具を持ち直す。
「今日は私のお相手をしてくれない?掃除は他の人にお願いしましょう」
「ですが、他の方に迷惑を掛けるには……」
フローラに牽制される前に、廊下にいたメイドに声をかけた。
「私の部屋の掃除もお願いできるかしら?フローラには別のお仕事をお願いしたいの」
「了解致しました。少々お待ちください」
「ほら、もう大丈夫。そうね、今日はいい天気だからお庭でランチでもしましょう!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キッチンのコックさんに、今日は外でランチをしたいとお願いすると、すぐにサンドイッチをこしらえてくれた。
「ここが良いと思わない?」
庭にはいくつかパラソルと机が並ぶ場所があり、今日は庭の中程まで歩いてきていた。
「ベン様は……?」
「良いわよ。敷地内に侵入するなんて無いと思うわ」
景観は良い。
私はランチボックスからサンドイッチと紅茶のセットを取り出した。
フローラは先刻から気まずそうで、ランチボックスも持つと言ったのに私が押しきった。
「さぁ、座ってフローラ」
私がまるで執事のように椅子を引くと、フローラはおずおずといった様子で座った。
「すみません、お気を遣わせてしまったみたいで。これから頑張りますので________!」
「頑張るのは良いことよ。でも、何事にも限度があって、頑張りすぎるのはあまり良くないわ」
ティーカップに紅茶を注ぎ、フローラの前に置いた。
「フローラ、貴女はあまりハウスメイドに向いてないと思うの」
「そうですよね……私は元々、お世話される方だったんです。お父様の事業が失敗して働かざるを得なくなってしまって。でも雇ってくれるのはここしかなくて……」
「そうだったのね」
道理で言葉遣いは綺麗で丁寧だったし、上品さが漂っていたのだろう。
ずず、と一口啜ったあと、サンドイッチを持った。
「年齢は?」
「19です」
「3つしか変わらないのね」
随分大人っぽく見えたけれど、私より3つしか歳が変わらないことに驚きを感じつつも、相談できそうだなとほくそ笑む。
「ねぇフローラ。歳が近い者として答えてほしいのだけれど、私はあと2年で婚約者を見つけなければならないの。でも、正直どうすればいいのか分からないわ。恋とか……そういうの、よく分からないの」
「お嬢様は、一緒に居て幸せとか、ずっとこの人と居たいとか、離れたくないとか、他の人に取られたくないとか思ったりしたこと、ありますか?」
そこでふと思い出したのは、アドルフ王子だった。
彼と一緒にいたときは、特に何も感じることはなかった。
これは政略結婚なようなものだと思っていたから。
むしろ離れたいと、願ってしまったくらいだ。
「思い当たる人がいるなら、お嬢様はその方が好きなんですよ。好きには様々な形があります。落ち着く人、ドキドキする人……」
「どうしてフローラはそんなに詳しいの?」
「私は元から色恋沙汰が好きなんです」
打って変わったような生き生きとした顔に安心し、サンドイッチを頬張る。
「例えその恋が他の誰に反対されようとも、それはお嬢様の意思です。お嬢様の人生が素敵なものになることを願っています」
暖かい木漏れ日を浴びながらそう言ったフローラは、とても輝いて見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私にとって大切な人は、誰だろうか。
思い当たる節が全く無いわけではないのだが、思い返しても無意味なのだ。
____________ノアのことは。
勝手に私が考えているだけで、きっとノアは今頃違う仕事でもしているのだろう。
そう思うと、何故か胸がきゅっと締め付けられたかのような気持ちに襲われた。
歳の差も6つあれば、立場の問題もある。
元護衛と……なんて、一般市民と関係を持つより大変だろうし、何よりアーヴェン家の面汚しと言われかねないし、お母様とお父様にも迷惑を掛けてしまう。
私が我慢すれば良いのだ。
お母様を、お父様を喜ばせるために。
知らぬ間に思い浮かんだ顔を必死で振り払い、記憶の中から消そうとした。
「イヴ様!」
私が何か言うより早く、扉が開け放たれた。
分かってはいたが、とげんなりする。
「ハウスメイドとどこへ行っていたのですか!言ってもらわないと困ります!」
「何もなかったんだから別に良いじゃない。敷地内ぐらい好きに歩かせて」
「どうしてそう_______」
言いたいことは分からないでもない。
だからそうね、言う言葉は、分かっている。
「ノアならこれぐらい許してくれるわ!」
言うはずだった、ごめんなさいという言葉とは裏腹に、口から出てきたのは憎悪の塊のような言葉だった。
「……そうですか」
ベンの顔が微かに歪み、無言のまま出ていった。
まずかった、流石に言うべきことではなかった。
比べるつもりなど微塵も無かったのに、口を衝いてしまった。
よろけながら立ち上がり、白い椅子に腰掛けた。
筆記帳と、ペンを取り出す。
真っ新な筆記帳に、自分の想いを綴る。
ノアに伝えたいこと、ベンに言ってやりたいこと、今自分がどうしたいか。
自分が思うより、考えていたことはあったみたいで、気付けば何枚ものページが文字で埋め尽くされていた。
言いたいことは山程あるが、居場所が分からない限り話すことはできない。
諦めるべきなのだ。
いつかこうして書いていれば、忘れられる時がくるはずだから_________。
ノアは窓を綺麗に磨いていた。
「ノア……辞めたかったの?」
「何がですか?」
突然切り出した話にすっとぼけるように。
ノアは手を止めた。
「護衛の仕事に決まってるでしょう」
「……辞めたくなんてありませんよ。ただ、お嬢様の為なんです」
「どうして?どうして……!」
「きっと、私でも守れないことが増えます。もしも守れなかったら、そう思うと怖いんです」
伏せていた目をあげ、直視したノアの顔は、少しばかり歪んでいた。
「それだけ?」
「……それだけですよ」
再び雑巾を持ち直して拭き始めたノアの背中を見つめ続ける。
今日が一緒に過ごせる最後なのに。
もう2度と会えないかもしれないのに。
いつもと変わらぬ風景は、いつまでも続いていくように感じられる。
何か言ってくれても、良いじゃない。
心の中で、黒い気持ちが渦を巻く。
もやもやして、霧がかった心が晴れることはなかった。
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「お疲れ様。今日まで1年と3ヶ月?4ヶ月かしら?ありがとう。ほら、イヴからも。ずっとお世話になったじゃない」
「今までありがとう」
「それだけ?」
「……えぇ」
「どうか、お身体にお気を付けて。今まで雇ってもらって、ありがとうございました」
深々お辞儀をすると共に、重厚な扉が開かれた。
ノアが扉を通り抜けてもう一礼すると、閉まり始める。
待って、行かないで。
その一言が言えたら、どんなに良かっただろう。
だが言えるわけもなく、夜闇に吸い込まれていく姿。
最後まで見送ることもできず、私はその場で立ち尽くすことしかできなかった。
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次の日から、まるで私の世界から彩りが全て消え去ったようだった。
ご飯も味気ないし、散策など楽しくもない。
ベンも強いのではあろうが、品の欠片もないからか、こちらが過剰に気を遣う。
笑い方も大口を開けて笑うし、歩き方も擬音をつけるならば、どすどすと言った風だ。
言葉遣いもよろしいとは言えないし、私の部屋を漁ることもしばしばだ。
掃除のやり方が分からないのはまだしも、適当に済ますのだけはやめて欲しい。
いつもメイドが疲れ気味に私の部屋に来ては掃除を行い、ベンはそれを見守っているだけだ。
「ねぇ、貴方は護衛だけとして雇われたわけではないのよ。少しは執事らしくしてくれないかしら」
執事の概念を知らないのか、そう言っても何も変わらない。
お母様とお父様は丁度昨日から旅行だ。
旅行とは名ばかりで、実際はお偉い様方に挨拶をして回っているのだろう、次帰ってくるのは来月以降らしい。
それまでは少なくとも、ベンで我慢しなければならない。
___________のだが。
苦痛で堪らなく、ベンとは外を歩きたくないし、密室で2人っきりも嫌なので、手当たり次第に仕事を与え続け、無くなれば勉強と偽って部屋から追い出していた。
「お嬢様。今日の予定は特にありませんが、散策はどうでしょうか!」
それしか取り柄が無いのだろうが、無駄にチャンスを掴み取ろうとする姿、あからさまに偉い人に媚びへつらう姿を見て吐き気がした。
ハウスメイドには自分が偉いと言わんばかりの態度で命令し、レディーズメイドやヘッドハウスメイドには優しく接する。
「行かないわ。それは良いから、今日はヘッドハウスメイドの手伝いをしてきて」
「……了解致しました」
ヘッドハウスメイドとは、簡単に言うとメイド長のようなもので、それだけ長く勤めていると言うことで位は上だ。
だが、私が最近気に掛けているのはフローラというメイドだ。
アルレアのこともあってか、まだ勤めて間もない若いメイドが気になってしまう。
フローラは清楚な雰囲気があるが、実はおっちょこちょいでやらかしも多い。
私の部屋の掃除にも度々来るが、毎度何かを落とすので見ていて危なっかしい。
「お嬢様。お部屋のお掃除に参りました。失礼致します……」
噂をすれば何とやら、くまが酷いフローラが入ってきた。
「おはよう、フローラ。疲れているんじゃない?くまが酷いわ」
「すみません……眠れていなくて」
「まぁ。どうして?」
「私は人一倍ミスをしやすいので、それをカバーするために1人で出来ることを夜にやっているんです」
でも大丈夫です、と言わんばかりにフローラは掃除道具を持ち直す。
「今日は私のお相手をしてくれない?掃除は他の人にお願いしましょう」
「ですが、他の方に迷惑を掛けるには……」
フローラに牽制される前に、廊下にいたメイドに声をかけた。
「私の部屋の掃除もお願いできるかしら?フローラには別のお仕事をお願いしたいの」
「了解致しました。少々お待ちください」
「ほら、もう大丈夫。そうね、今日はいい天気だからお庭でランチでもしましょう!」
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キッチンのコックさんに、今日は外でランチをしたいとお願いすると、すぐにサンドイッチをこしらえてくれた。
「ここが良いと思わない?」
庭にはいくつかパラソルと机が並ぶ場所があり、今日は庭の中程まで歩いてきていた。
「ベン様は……?」
「良いわよ。敷地内に侵入するなんて無いと思うわ」
景観は良い。
私はランチボックスからサンドイッチと紅茶のセットを取り出した。
フローラは先刻から気まずそうで、ランチボックスも持つと言ったのに私が押しきった。
「さぁ、座ってフローラ」
私がまるで執事のように椅子を引くと、フローラはおずおずといった様子で座った。
「すみません、お気を遣わせてしまったみたいで。これから頑張りますので________!」
「頑張るのは良いことよ。でも、何事にも限度があって、頑張りすぎるのはあまり良くないわ」
ティーカップに紅茶を注ぎ、フローラの前に置いた。
「フローラ、貴女はあまりハウスメイドに向いてないと思うの」
「そうですよね……私は元々、お世話される方だったんです。お父様の事業が失敗して働かざるを得なくなってしまって。でも雇ってくれるのはここしかなくて……」
「そうだったのね」
道理で言葉遣いは綺麗で丁寧だったし、上品さが漂っていたのだろう。
ずず、と一口啜ったあと、サンドイッチを持った。
「年齢は?」
「19です」
「3つしか変わらないのね」
随分大人っぽく見えたけれど、私より3つしか歳が変わらないことに驚きを感じつつも、相談できそうだなとほくそ笑む。
「ねぇフローラ。歳が近い者として答えてほしいのだけれど、私はあと2年で婚約者を見つけなければならないの。でも、正直どうすればいいのか分からないわ。恋とか……そういうの、よく分からないの」
「お嬢様は、一緒に居て幸せとか、ずっとこの人と居たいとか、離れたくないとか、他の人に取られたくないとか思ったりしたこと、ありますか?」
そこでふと思い出したのは、アドルフ王子だった。
彼と一緒にいたときは、特に何も感じることはなかった。
これは政略結婚なようなものだと思っていたから。
むしろ離れたいと、願ってしまったくらいだ。
「思い当たる人がいるなら、お嬢様はその方が好きなんですよ。好きには様々な形があります。落ち着く人、ドキドキする人……」
「どうしてフローラはそんなに詳しいの?」
「私は元から色恋沙汰が好きなんです」
打って変わったような生き生きとした顔に安心し、サンドイッチを頬張る。
「例えその恋が他の誰に反対されようとも、それはお嬢様の意思です。お嬢様の人生が素敵なものになることを願っています」
暖かい木漏れ日を浴びながらそう言ったフローラは、とても輝いて見えた。
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私にとって大切な人は、誰だろうか。
思い当たる節が全く無いわけではないのだが、思い返しても無意味なのだ。
____________ノアのことは。
勝手に私が考えているだけで、きっとノアは今頃違う仕事でもしているのだろう。
そう思うと、何故か胸がきゅっと締め付けられたかのような気持ちに襲われた。
歳の差も6つあれば、立場の問題もある。
元護衛と……なんて、一般市民と関係を持つより大変だろうし、何よりアーヴェン家の面汚しと言われかねないし、お母様とお父様にも迷惑を掛けてしまう。
私が我慢すれば良いのだ。
お母様を、お父様を喜ばせるために。
知らぬ間に思い浮かんだ顔を必死で振り払い、記憶の中から消そうとした。
「イヴ様!」
私が何か言うより早く、扉が開け放たれた。
分かってはいたが、とげんなりする。
「ハウスメイドとどこへ行っていたのですか!言ってもらわないと困ります!」
「何もなかったんだから別に良いじゃない。敷地内ぐらい好きに歩かせて」
「どうしてそう_______」
言いたいことは分からないでもない。
だからそうね、言う言葉は、分かっている。
「ノアならこれぐらい許してくれるわ!」
言うはずだった、ごめんなさいという言葉とは裏腹に、口から出てきたのは憎悪の塊のような言葉だった。
「……そうですか」
ベンの顔が微かに歪み、無言のまま出ていった。
まずかった、流石に言うべきことではなかった。
比べるつもりなど微塵も無かったのに、口を衝いてしまった。
よろけながら立ち上がり、白い椅子に腰掛けた。
筆記帳と、ペンを取り出す。
真っ新な筆記帳に、自分の想いを綴る。
ノアに伝えたいこと、ベンに言ってやりたいこと、今自分がどうしたいか。
自分が思うより、考えていたことはあったみたいで、気付けば何枚ものページが文字で埋め尽くされていた。
言いたいことは山程あるが、居場所が分からない限り話すことはできない。
諦めるべきなのだ。
いつかこうして書いていれば、忘れられる時がくるはずだから_________。
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